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新生児の5人に1人が「王さま」?

帝王切開とは、妊婦さんの子宮を切開することで、お腹の赤ちゃんを取り出す手術のことです。それならなぜ、「子宮開腹手術」といわずに「帝王切開」という、大げさな医学用語がつけられたのでしょうか。

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 古代中国では王朝のお世継ぎは、誰からも崇められる高潔な人徳を備えていることが求められていました。帝王には神さまと同じ「神格」が要求されたのです。そのために歴代の皇帝は母胎に宿ったときから、占星術で占った出産日が決められていたのです。

当然、経膣分娩(自然分娩)ではなく、母親のお腹を切り拓いて取り上げました。麻酔の技術も未熟な時代ですから、母胎が危険にさらされたのは当然ですが、お世継ぎを生むためには、母親の生命は軽視されていたのです。

厚生労働省の2011年の「医療施設静態調査」によると、同年の1年間の分娩件数は86,695件、そのうちの19、2%が帝王切開です。出生数が減少している中で、帝王切開の割合が増えているのは、女性の社会進出を背景に、初産の高齢化が進み、リスクの高い出産が増えたことが理由だそうです。

いずれにしても、5人に1人は帝王切開で誕生したことになりますが、その子供たちを「皇帝」(帝王)と呼ぶには、時代錯誤の違和感があります。

ドイツ語の誤訳によって生まれた名称

「脱亜入欧」のスローガンを掲げた明治新政府は、欧米先進国の文化・技術にキャッチアップするために、懸命な努力をしましたが、近代医学は主にドイツから学びました。ひと昔前まで、ドクターのカルテはドイツ語で書かれていましたね。

ドイツ語では帝王切開を「Kaiserschnitt」(カイザーシュッニット)といいます。Kaiserは「分離する」「切り分ける」という意味のほかに、「皇帝」の意味があります。日本の病院で帝王切開を、「カイザー」と呼んでいる理由です。

shinittは「切開する」という意味があるため、ドイツ語を和訳するときに、間違ったという説が世に広まっています。

紀元前2,3世紀の古代エジプトにも、帝王切開の記録が残されているようです。「帝王切開」はラテン語では、「sectio caesarea」ですが、Caesareaとは、切り刻むという意味だそうです。ラテン語からドイツ語に訳されるときに、「caesarea」を古代ローマの将軍、「シーザー」と誤訳してしまったというのです。そうだとすれば、ドイツ語の「Kaiserschnitt」そのものが、間違っていることになります。

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紀元前までさかのぼる翻訳ミスで、子どもの「王さま」が、大量生産されていることになります。

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