好きな漫画通信 #1 「銀河の死なない子供たちへ」

 アニメをあまり見なくなりましたが、漫画を読むペースは落ちていません。比べるもんでもないですが、とにかく私は漫画が好きらしい。あとこれは音楽でも言えることですが、私はより少人数で作られたものに魅力を感じる傾向があります。それは例え見栄えが整っていないとしても、製作者のむき出しの創作に心をつかまれるからだと思います。もちろん一概には言えませんが。

 脱線しちゃった。とにかく漫画が好きなので、これまで読んできた作品をたまに紹介しようという話です。書くネタも思い浮かばなかったですしおすし。

 では今日はこちら

銀河の死なない子供たちへ / 施川ユウキ

 自分のSNSでこれまで何度も名前をあげてきましたが、まだまだ言います。私の大好きな漫画。

 ~あらすじ~
全てが終った星で、凸凹姉弟が、“永遠"を遊ぶ――。
とうに人類が滅亡した星で、
ラップを口ずさむのが大好きな天真爛漫な姉・πと、
いつも読書をしている内向的な弟・マッキは、
永遠の命による終わらない日々を過ごしていた。
そんなある日、愛すべきものの終わりに直面した二人は……。
「手塚治虫文化賞」受賞作家が挑む、
不死の子供たちの果てしない日常と、
途方もない探求の旅――。

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 これは命の漫画です。

 不老不死という視点からこそ見えてくる、「命とはなにか」という疑問や葛藤、そして生き物が必ずいつか死ぬというそのルールが持つ尊さ。不老不死は時にグロテスクに見えるほどに孤独な存在であり、だからこそ「命」の輝きが際立ちます。SF的な設定ではありますが、真正面から「命」に向き合った作品で、こんなに真っすぐ描いた作品はあまりない気がするというくらいです。
 そして命と直結するのが「愛」です。切っても切り離せない関係にあるがゆえに、姉弟たちを動かすのは愛の力。愛をこれまた真っすぐと描いていて、その純粋さ、美しさに私の感情はぼこぼこ。こんなに漫画で泣いたことないぞってくらい泣きました。

 作者の施川ユウキ先生のそのほかの作品、
バーナード嬢曰く。

や、鬱ごはん

なども大好きなただのファンなのですが、施川先生の作品の魅力の1つは「表情での感情表現」にあると思っています。
 先生の絵は、一般的な「上手い」絵ではないとは思いますが、ここでいう「上手い」などという言葉は単なる客観性の話なのでどうでもいいとして、私は先生の絵にこれまでなんども心を震わせるられました。すべての作品に共通して、話の中でキャラクターが「決定的」な表情、何か純な感情が湧き上がった顔をコマに描くシーンが、おそらくある時期から増えてきて、それまで少しギャグ寄りだった作品のキャラたちに、より深い人間性が芽生え、どの作品も一筋縄ではいかない面白い作品になっていったと思います。

 例えばこの鬱野(信じられないような名前だけど、鬱ごはんの主人公の名前)の目。少ない線で描かれていますが、驚くほどキャラの感情が表現されていると私は感じます。
 
 加えて↑のコマを見ても分かるように、施川先生作品のもう1つの魅力はこの豊かな文学表現。ド嬢(バーナード嬢曰く。の略)を読めばわかることですが、どうやらすごい読書家でいらっしゃるので、モノローグや台詞の気の利き方、少し詩的で美しい言葉選びにはいつも唸ってしまします。それがたとえこんな発想だとしても、

「食レポも会食もきっと神の意志に反する」。天才かよ。痛烈すぎる。

 さて「銀河の死なない子共たちへ」を紹介するつもりが、施川先生の布教活動になっていまいましたが、とにかくこの「決定的な表情」と「文学的表現」によって、命を巡るストーリーがより輝いたものになっているわけです。これこそ漫画の良さ、ですよね。
 上下巻で完結ですし、私的「とにかく読んでほしい作品ナンバーワン」なので、気になる方はぜひ手に取ってみてくださいまし。

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