ユートピアと健康ランドについて

ユートピアについてよく考えることがある。
10代のときにトマス・モアのユートピアを読んで以来、ユートピア/ディストピアに関する物語をよく読むようになった
ユートピアというのは政府や上位者の統制によって人民がそのルールに従って生きることにより最大公約数的幸福を得る、という国家なり地域の仕組みのことを言う
似たような言葉で桃源郷とかシャングリラ(理想郷)といった言葉があるがそれは統制や社会の仕組みとは関係なく単に自由に暮らし、悪いこともおきない、いうなれば浄土、天国のような場所のことをいう
ところでユートピアの対義語としてディストピアと言う言葉がある。これはやはり上位者の統制によって、そのルールに従って生きる人民が抑圧された最低の生活を強いられたり、そのルールを破ると殺されるような社会を言う

実はユートピアに関する現代小説というのは基本的にない。ほぼ全部ユートピアを志向したディストピア小説になっている
20世紀はエリートが頭の中でユートピアを思い描き、その結果全てディストピアを現出させてしまった。ソ連、ナチス、毛沢東の中国、金日成の北朝鮮、ポルポトのカンボジア、すべてエリートがこうすればユートピアが現出すると脳内に描き、人民に強烈な統制を加え、ディストピアを作り上げた。
 現実にユートピアに一番近づいたのはシンガポールのような小国のみだろう
モアのユートピアや、カンパネッラの太陽の都、のような統制された社会はディストピアと表裏一体なのだ

そこで健康ランドである。昔ながらの健康ランドは厳然としたルールが存在し、衣服まで統制されている。そして通貨は日本円は通用せず腕につけたバーコードのみとなる。
入館者はルールに従いバーコードをつかえば、サウナ、マッサージ、グルメなど性的な快楽以外の全てを受けることができる。

同じ館内着をきることにより身分等は全く分からなくなり、平等性が保証されるというところが肝で、他の場所ではどんなに素晴らしいテーマパークであろうとそういったことはない。
これこそ史上もっともユートピアに近づいた仕組みではないか?


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