異世界人生劇場について少し語る【ネタバレあり】

好きで追っていた「異世界人生劇場」という漫画があるのですが、46話であまりに驚いたので、その驚きの理由などを語っていきます。

もちろんネタバレありですし、現状単行本2巻以内(1話が短いので)程度の長さですので、まずマンガワンで読んで欲しいです。(1巻は販売中ですが、34話くらいまでしか乗ってません)


なぜか読みやすい漫画

異世界人生劇場、なぜか非常に読みやすかったです。

いくつか理由を考えていたのですが……

  • 絵がシンプルだから読みやすい

  • 話がじっくり進んで行くから読みやすい

  • 心の負担になるような展開が少ないから読みやすい

  • 現実の現象の分解と再構築で、伝わりづらいものも納得しやすい

という要素。あるいはその合せ技で読みやすくなっていたんだな、と。

まぁ上を見てわかるとおり「読みやすい」という言葉にも複数の「よみやすさ」がありまして。

1つ目は見た目的な読みやすさ。(見やすさ)
2つ目は要求される理解量の低さからの読みやすさ。(続きの追いやすさ)
3つ目はショッキングな表現などがない精神負荷が低い読みやすさ。(拒否感のある要素の少なさ)
4つ目は2つ目とも繋がりますがちょっぴり分かりづらくいので例を用います。例えば「ザベス」という首につける装備があります。それは「エリザベスカーラー」をもとに「襟 ザベス」と解釈して、「首につける『ザベス』という装備」という、「エリザベスカーラー」の分解と再構築が行われている……みたいな感じです。
ややこしい言い方をしていますが、言いたいこととしては「そう捉える納得感」が随所にあると言いますか。「いきなり変なアイテムが出てきた」ということがない。世界観に対する現実とのすり合わせコストが低いところからの「よみやすさ」とでもいいますか。

と、いうような「複数の読みやすさ」が原因かと思っていました。
実際それが読みやすさの一因でもあるんですが、もうひとつ、46話で個人的に完全に盲点だった読みやすさのネタばらしがあり、衝撃を受けた、というお話です。

「異世界人生劇場がなぜ読みやすいのか」の回答

前提として僕、人の名前を覚えるのが苦手です。物語における登場人物を含めて。
最近ROPPENという漫画を読んで、3話くらいまで読んだ時に感想?を書いたんですが……

こんな感じの内容なんですが、「人の名前を覚えられず現象しか覚えていない」ということ、多々あるんですよね。
roppenは22話まで読んでるんですが、誰一人名前を覚えていません。

最近超推しの「ヘブンの天秤」という漫画も、主要人物の一人である「ケム」というキャラがいるんですが、これも今漫画を読み直さないと名前が思い出せませんでした。
「〇〇の人」や人の名前というよりすでに概念と化した名詞のように扱える(ヘブンの天秤で言うならケムは忘れるけど「ルシファー」なら覚えられるとか)もの、という認識で居ることが多いです。

ブログとかで漫画について語るときは名前で呼ばないと読んでる方が分かりづらいので漫画を読み直して「このキャラはこういう名前だな」と書いていくわけですが、自分で読んでる限りは「こういう行動をする人」でだいたいなんとかなります。

言い方を変えるなら、漫画内で「そういえば、〇〇(キャラ名)も言ってたな……」みたいな台詞があったとき「誰?」となる。「読みやすくなさ」が発生しがちです。

んで。
ここまで言えば、異世界人生劇場を読んだかたなら分かる通りかとは思いますが……

異世界人生劇場、登場キャラクターに「名前」がなかったんですよ。
漫画内の登場人物は全て「〇〇の人(役割や一般名詞)」と「漫画側」が表現していた。

だから、名前を覚える必要が無く、めちゃくちゃ読みやすかった。
これ伏線は伏線なんですけど、もういっぽ引いた驚きがあったというか。
「異世界人生劇場の読みやすさ、そういうことだったのか!!!!!!」という驚き。

自分の漫画を読むスタイルと、どうしてここまで合致するんだ? と毎話興味深く読んでいたわけでして。一個前の見出しのような内容で推察していたわけですが、「名前が無かった」は本当に盲点でした。

これ、そういう疑問を抱かせないように「この世界観」になってるんだなぁという納得感もありました。

「魔王」は「魔王」で良いじゃないですか。名前は必要ない。
魔王からする敵の名前など知らず「死霊術師」で良くて、同じく名前は必要ない。
そして一般的な異世界モノで「勇者」が多数から「勇者」と呼ばれても問題ないように、死霊術師は「揚蝦師」と呼ばれても問題ない。

これで多数「人間」が出ていたら名前がないことに違和感を感じていたと思います。ただそこも込みで作者さんが仕込んでいたと思われて、出てくるのは役割が名前になりがちなキャラクターばかり。だし、「別組織」同士のやり取りが多いため、必然的に「役割」呼びに違和感がなくなる。
「炎竜」とか、竜からすれば人間は役割であるがゆえに「鍛冶師」呼びに違和感がなかったり。逆に人々からすれば「炎竜は炎竜」なわけで。

言われてみるといぬの名前が「いぬ」なのおかしいよなぁ、という気づきもあります。こういうゆるふわギャグな漫画なので、そういう「ギャグ」かと思っていたら、そこにも理由があった。
そういった作りの漫画だったからこそ、「読みやすさの正体」が「隠れていたことすら気づかなかった」。

……という個人的な疑問の解消に繋がったという、「衝撃の展開」がありました。マジで読んでて「そ……ッ そうきたかァ~~~~ッ」と脳内烈海王が猛烈に納得しました。

と、いうわけで、この衝撃を書き記しておきたかったのと、この衝撃を味わわせてくれた素晴らしい漫画、異世界人生劇場を布教したいという感じです。

いや、そういうの抜きでもほんとに面白いんですよ。
マジで「異世界的」な概念への納得感の埋め込みが半端なく上手い漫画で、この「衝撃展開」が無くとも、めちゃくちゃ推してます。
例えば「バンパイアが鏡に映らない」ってバンパイア創作界隈では割と常識的な設定かと思うですが、それを分解して「つまりこういうことも起こり得るよね?」という視点を持ち「鏡に映らないから自分がめちゃくちゃファンシーな見た目の吸血鬼であることに気づかず、威厳あふれる吸血一族の当主であると振る舞っているキャラクター」と再構築する。
そういう「この概念をこう解釈するかぁ~」という納得感と、興味深さ。
そしてこのヘンテコ世界感で、ただのギャグだけでなく「ちゃんと物語が進んでいる」という実感。

今回の衝撃の件含めて、めちゃくちゃ素晴らしい漫画です。

余談 最近推してる漫画との関連

そう考えてみると、最近推している漫画は、僕の「読みやすさ」が評価に影響していると感じます。
以前書いた日記記事にて、推し漫画をいくつか上げていて、その中から上位の漫画を見てみると……

ヘブンの天秤
異世界人生劇場
煩悩☆西遊記
フランチャイズつくだマジカル
常人仮面
グッドナイトワールドエンド

となってまして、ヘブンの天秤は主人公のメロ以外は「ルシファー」や「ミカエル」など既知の固有名詞として覚えやすい。
異世界人生劇場は上述の通り。
煩悩西遊記は「悟空」「沙悟浄」など、これまた既知のもの。
と、推しトップ3は(たまたまそういう傾向が強いというだけかもしれませんが)まさに上述の「名前を覚える必要が薄い」に当てはまります。

逆に言うなら、それ以下は名前がかなりあやふや。
フランチャイズつくだマジカルは主人公が「ボナンザ」であることだけ。
常人仮面は誰も名前覚えてない。
グッドナイトワールドエンドも誰も覚えていない。
と、推しではあるものの全然名前覚えてないんですよね。

まぁ、言うまでもないですがだからつまらないと言いたいわけではなく、「すんなり読める」ことが推しの大きな出発点になっている、ということ。

今回はたまたま言語化出来た(言語化する機会に恵まれた漫画を読めた)わけですが、結局どんな創作も理屈を捏ね繰り回しても、言語化できない自分との親和性の高さが根っこにあるのかも、というお話でした!(?)。

特にオチなし。
異世界人生劇場はオススメだよ! って感じで終わります。

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