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【英語歌詞考察】#2: What should we eat tonight?

先日書いた星野源「喜劇」の記事に、過去なかったほどたくさんの「スキ」をいただきました。

通知を見ると、マガジンに載ったらしく。
note初心者なので、どうやってマガジンに載るのかとか、誰が選ぶのとか、全然わかってないのだけど、自分の感じたり考えたりしていることを多くの人に読んでいただけるのはありがたいことです。

今日は、その「喜劇」から英語歌詞考察第二弾をしようと思います!

今日の一曲:星野源「喜劇」

星野源の曲の歌詞には基本的にほとんど英語が出てこない(完全英語詞のSame Thingとかは除いて)。
日本語の言葉の選び方にすごくこだわりを感じるし、あえて英語を使わず表現しようとしてるんじゃないかなと思っています。

その代わりと言えるかはわからないけど、確か「うちで踊ろう」くらいから、公式で英語版の歌詞を発表するようになったんだよね。その公式の英語訳が本当に素敵なのです。
星野源の歌詞によくある「言葉にしないのに伝わる/想像させる」部分が、ちょうどいい塩梅で伝わる言葉選びがなされていると感じます。
(誰が翻訳しているのかめっちゃ気になっています… 素晴らしいプロの仕事。)

今日のフレーズは、新曲「喜劇」の公式(だと思う)英語版歌詞より。
YouTubeのMVには、なんと10言語(+日本語&ローマ字)もの公式字幕がつけられています。日本語話者じゃないファンにどうやって届けるかを考えてるんだろうなぁ。

今日のフレーズ:What should we eat tonight?

原曲では、サビの2行目にあたる部分です。

手を繋ぎ帰ろうか
今日は何食べようか

星野源「喜劇」(Official Video) より

英語の字幕は、以下のようになっています。

Shall we hold hands and head home?
What should we eat tonight?

星野源「喜劇」(Official Video) より

この「今日は何食べようか」というフレーズ。
そのまま素直に英語にすると、おそらく「What are we gonna eat today?」とか「What would you like to eat today?」になるんじゃないかと思います。

まず、shouldに込められた意味を考えてみます。
おそらく、一番よく知られているshouldの意味は「〜するべき」ですね。
命令っぽいニュアンスで使われたり、後悔の念を込めて使われたりします。

例文① You should finish your homework before going out.
「出かける前に宿題を終わらせるべきです」
例文② I should have left home earlier.
「もっと早く家を出るべきだった」

それ以外にも、suggest「提案する」recommend「勧める」といった動詞に合わせて「〜した方がいいよ!」という意味だったり、「きっと〜だと思う」という強い推量を表すのにも使われます。

例文③ I recommend that you should see that movie.
「あの映画、見た方がいいよ
例文④ He should be better soon.
「彼はきっとすぐに良くなるよ」

いろんな訳し方がありますが、共通しているのは、そこに話し手の強い思いが込められている、ということ。
その観点で、歌詞をもう一度見てみると…

What should we eat tonight?

星野源「喜劇」(Official Video) より(太字は筆者による)

ただ単に「今日は何を食べますか?」という問いかけではなく、「今日は何を食べるのがいいかなぁ? 昨日は〇〇を食べたからちょっと違うものを食べたいな、最近ちょっと栄養が偏りがちだしヘルシーな食事がいいかな、こないだ話題になったあのレシピも気になるし…」という、何を食べるかを決めるにあたってのさまざまな前提条件が、問いかけをしている相手と共有されていることが感じ取れます。
日本語の「今日何食べようか」に含まれている、昨日も一緒にご飯を食べたんだろうな、というニュアンスが、直訳じゃないのにばっちり表現されているのを感じます。

もうひとつ。
日本語では「今日」となっている部分が英語では「tonight(今夜)」と訳されていることについて。
その前後の歌詞「手を繋ぎ帰ろうか」「こんなことがあったって 君と話したかったんだ」を受けて、あえてtonightにしてるんだと想像します。
手を繋いで家に帰った後で、今日あったことを話しながら食べる食事って、きっと晩御飯だよね。そのあたりの想像を補足してくれる言葉選び。

まとめ

翻訳をすると、どうしても意味がこぼれ落ちてしまう部分が出てしまうのだけれど、翻訳をするからこそ想像がより鮮明になることもあるよなぁと思うし、どんな言葉でどこまでを明示的に表現するのかを考えるのが翻訳の面白さだなぁとも思います。
「喜劇」の英訳には、プロの技だけではなく、星野源の書く詞に対するリスペクトや、詞が描く情景をなるべくそのまま伝わるようにしたいという思いを感じました。
きっと、英語だけでなく、他の言語の字幕もそうやって作られてるんじゃないかなぁ。

星野源のMVの字幕、英語学習者にもおすすめですー!
I strongly recommend that English learners should watch Hoshino Gen's music videos with English subtitles! :)

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