手記20240612

 眠い。とにかく眠いので夜に十分寝ているのにその上さらに数時間の昼寝までしていて、それでも眠い。生活なるものは有限の資源の分配の仕方によってその質を左右されるという側面を持っており、その有限の資源の中でもかなりわかりやすいものとして時間が挙げられると思う。一日の半分以上寝ているわたしは「ある程度自由に使えている」と自身が思うような使い方をできる時間に事欠いている。せめて寝ている間に甘美な夢でも見られればまだよいのかもしれないが、そこはわたしらしいというかきっちりと悪夢を見ている。もうすぐ新しいバイトを始めるのにこんなことで大丈夫なのだろうかと思う。当然大丈夫ではないので心配する余地すら無い。
 資源の分配がうまくいっているという話はあまり聞かない。金銭にしても住居や食料や医薬品にしても、どちらかといえば誰がどれだけを得るかをめぐって対立や分断が発生しているという印象である。現状を適切な分配の結果と見る向きもありそうだが、その見方を支持している人だってもし自分のぶんが増えるとなれば新しい分配のほうをすんなり無根拠に受け入れそうなものである。世界中で分配のために悪い事態が絶え間無く発生しているのならば、貧困と不自由に喘いでばかりいるわたし個人が自分の時間をうまく分配できなくても自然なのかもしれない。
 眠気への対抗策は今のところ無い。何か考えて試したわけでもない。わたしの生活ひいては人生においてわたしに都合の悪い事態が数多く続くのはごく普通の事態で、それを改善しようとかより良い人生を得ようとかの意志を現在のわたしは持っていないし今後も持つことはなさそうに見える。わたしは人間をあまり良い存在と感じていないので、人間として良い状態にあることが仮にできたとしてそれがわたしにとって良い状態と評価できるかどうかははなはだあやしく、むしろそれはまた別の悪い出来事とみなすべきかもしれないからだ。そういうこともあってわたしは眠ければ眠り食べたければ食べるという生活を続けている。自分の意志でそうしているとも言えるし、無能や怠惰の程度が著しいので他の生活を選びたくても選べないとも言える。わたしを知っている人がわたしのことを心配してくれる時もあるものの、その時のわたしはその人の善意を無化しようとするかのようななげやりな態度を取りがちである。低劣な人格はわたしの持ち合わせる欠点の一つである。
 寝てばかりいられるのは安楽であるとも感じるが、一方で悪夢ばかり見て目を覚ました時にはへとへとに疲れていて、用事も片づけられず、私生活の維持もおぼつかないという現状はあまり安楽でないとも感じる。睡眠ひとつ取ってもこの様相なので、わたしが生きる上で何かがうまくゆくことは無い。

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詩題『湖面の月をかき寄せようとする人』

湖に映る月
かき寄せるあなたの鋤
やさしい光と鈍い光
この世のすべてのようであり
わたしはしあわせの涙を流す

月は湖に浮き
あなたは鋤を止めわたしを向き
もうすこし、と声を上げる
ひとはみな時を経る
でもこれほどの時は無い

古い歌
砕かれた記憶をとじこめる蓋
耳と目と心を蝕むそのざわめき
遠ざけるあなたのきらめき
形無い力

終末の時計
知らぬふりの治世
圧殺されるあなた
まばゆいような姿

光放つあなた
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