見出し画像

ラッパ

鳴り響くラッパの音が絶望的な朝を迎えたことを告げた。軽快なメロディとは裏腹にその音が意味するところは、重く苦しい。今日もいつもと変わらない朝を迎え、1日を何とかやり過ごし、生き延びて、夜深くにようやく布団に潜り込み、泥のように眠る。そしてまた再び明日の朝には同じラッパの音で目を覚ますこととなる。このような生活がいつまで続くというのか。心が安まらない。寝ている間もどこかでラッパの音がしている。夢の中で何周か同じルーティーンを繰り返している気さえする。だが、夢ではない朝のラッパの音には過敏に反応する。いったい何が違うというのか。もしかしたら私が気づいているつもりのラッパの音も、まだ夢の中なのではないのだろうか。
しかし、再びラッパの音が鳴る。少し怒気を孕んだその音色に絶望が深まる。余計な逡巡をする合間に時は流れ、何なら少し意識が飛んでいたようだ。これはまずい。いつもと違う流れに入ってしまった。しかも最悪な方の。私は寝床の中で骸と化したも同然だった。ならいっそこのままこの温もりに包まれて最後を迎えようか。いや、まだ一縷の望みをかけて今すぐ飛び起きてみようか。もうだめだ。何もわからない。
そして、3度目のラッパの音が耳元でつんざくように鳴り響き、私は意識を失った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?