『re:sort』sora

私の音楽趣味の師匠であり友人からは、本当にいろんな音楽を教えてもらった。その教えてもらった中に含まれているはずだと思うのだが、フランス人アーティストであるジュリアン・ロケのプロジェクトの一つであるDoline Murailleの『Mani』というアルバムがある。ずいぶん昔に教えてもらい取り寄せてまでCDを買ったが、今でも定期的に聴き返す一枚だ。この感じが一般的にどう表現されるのかあんまり分かってないのだが、個人的にしっくり来るのは「コラージュ的」という表現。様々な音や声、曲などを切り刻み、いろんな形で貼り合わせていったような楽曲たち。一聴すれば耳障りなノイズのようにも聴こえかねないが、最初からそういうものだと思って聴いてみるとそれが心地よいものになっていく不思議。あの原体験の一つには、このアルバムがあったように思う。

そして話は飛ぶが、実は先述の友人から随分前におすすめされたのに聴けていなかったアルバムがいくつかある。そのうちの一つがsoraの『re:sort』だ。ここで懺悔します、ほんとごめん。やっと聴きました。
なぜこの『re:sort』の話がメインなのに、いきなり『Mani』の話をしたか。長年『Mani』を聴いてきたがこれに類するような音楽はなかったのに、既に知っているアルバムの中にあったことに驚いたからだ。別にこういったコラージュ的な作品をめちゃくちゃ漁っているわけではないんだけど、やっぱりあんまりこういうものって偶然には出会わない。だが、本当に近くにあったのだ。リリース年も近いし。ていうかほんとごめん。
こういうテンションで書くのも申し訳ないくらい、綺麗で心地の良い、タイトルを裏切らない作品だ。パーティー気分で盛り上がるリゾートではなく、ひとりパラソルの下でぐだっとしながら暑さを感じ、頭がぼんやりとしていくような。またそれでいて、様々な音から涼やかさを感じ、心地よさに包まれるような。孤独に楽しむ理想的なビーチが思い浮かんでくる。そういう意味では、全体の雰囲気としては『Mani』とは全く異なるかもしれない。『Mani』は古い記憶の断片を作ったモノトーンの映画のようだ。だが、手法が本当にとても似通っている。似通った手法で、これほど印象の違うものが作れるのかと感動してしまう。
どちらかというと初めてこういう作品に触れる人には、聴きやすさ的にこちらを薦めたい気がする。日中にリゾートを楽しみ、夜は古い映画をぼんやりと眺め、どっぷりとコラージュの海へ浸かっていく。そんな楽しみ方も良いかもしれない。

ちなみに本当に余談だが、比較的最近出たらしいceroのアルバムジャケットが、これにめちゃくちゃ似ていると一部界隈で話題になってたようだ。確かに薄目で見ると良く似てる。

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