そっと寄り添う

NHKで放送された『ひきこもり先生』を見た。

元々は敬愛する音楽家haruka nakamura氏が曲を担当されるということで、彼の音楽がドラマでどのように流れるのか聴いてみたかった。いくつかのPVを見る限り映像にはとても合う、というのはわかるが、抽象的な映像表現に合わせたものが多かったので、ストーリー性の強い作品の中でどう流れるのかと。

あらすじとしては、11年ひきこもりだった男がひょんなことから中学校の引きこもりクラスの臨時講師となり、自身の体験を重ねたり、一緒に苦しんだりしながら、子供たちと向き合い、子供も自らも必死にもがく。そんな作品だ。

「もがく」の部分に入れる言葉に少し迷ってしまう作品だ。本当ならこの言葉の並びからすると「前を向いていく」みたいな言葉を入れるのがいいんだろう。でもそれを入れるのは躊躇われた。単に前を向くとか、そういう話ではなかった。大人の勝手に振り回され、教育の名の下に画一的なあり方を求められ、それに順応できない子供達が押しつぶされそうになる。そんな姿がたくさん描かれている。

作中でもひきこもり先生が繰り返す「苦しい」、子供達が繰り返す「気持ち悪い」があまりに心に刺さる。描かれる苦しみは子供だけではない。この作品は大人の世界さえも容赦なく抉り出す。そんな大人たちに向けて、最後に奈々の口から放たれる「大人たちも幸せになってよ」の一言はあまりに辛い。子供にこれを言わせてしまう、実際に言っても不思議がないのが今の世の中だ。

もちろん、色々と粗の多い部分もあったように思う。一度メインとして描かれた子たちのその後のバックグラウンドは何事もなかったように整えられてしまっている気がするし、わかりやすい悪としての校長もなんとなくふわっと丸められている。最後のシーンなんかも色々批判があっても不思議はない。でもおそらくこの作品の本質はそこではない。それらも含めての問題提起とも思える。

さてそんな中で流れるharuka nakamura氏の音楽だが、この辛い世界の中で音楽だけはせめて優しくあるようにと、自然と寄り添うように流れていた。ある意味ひきこもり先生の子供たちの向き合い方にも似ていたのかもしれない。苦しい中で毎回最後に祝祭のように歌声が流れ、救われたような気持ちになった。

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