『nell』Joint Beauty

リリースからは随分と遅れて聴いた『Special Days(feat.藤井隆&ピーナッツくん)』は久々に自分の中で大ヒットを飛ばし、ことあるごとにいろんなところで良いぞ良いぞと投げかけて回った。ピーナッツくんから知ることになったわけだが、ピーナッツくんが関わった楽曲の中でも5本指には間違いなく入るくらい好きになった。藤井隆も相変わらずいい塩梅で音楽活動をするよなぁ、いいよなぁと思っていた。
だが、どういうわけか、楽曲を作ったJoint Beautyの他の曲へと興味が行くことがなかなかなかった。変な言い方なのだが、彼の音楽と近しいところがこのコラボだけでも何となく推測が立った。
少し時代が遡るが、00年代後半から10年代前半にかけて出来た一つの潮流がある。ネットレーベルの代名詞的存在Maltine Recordsと、そこからメジャーシーンのど真ん中へと飛び出して行ったtofubeats、ネットレーベル全盛時代にさまざまなレーベルやオタク文化をかき集めながら名を馳せて行った秋葉原MOGRA。これらの要素が生み出したインターネット発の音楽シーンの流れは、まさしく藤井隆(tofubeatsがメジャー1stでコラボ)やピーナッツくん(MOGRAが羽田空港で開催したMusic Unityに出演)などに接続していく。サウンドやコラボ相手からしても、明らかにJoint Beautyはその流れの中にある人だという印象(本当にそうかは分からないが)で、だからこのアルバムの曲名をざっと見た時、その中にtofubeatsの名前があっても全く違和感がなかった。なんなら仮谷せいらの名前まであって良い意味で笑ってしまったくらいだ。
そして、これは本当に勝手な話なのだが、その流れをリアルタイムで見てきたからこそ、流れに乗り切れなかったことに対する負い目というか、なんか俺はその流れにある音楽は聴いちゃいけないみたいなよく分からない感情が引っかかっているのだ。(tofubeatsの楽曲に関しても2018年のメジャー4th『RUN』で初めてちゃんと聴くことが出来た気がしている)当時、その良さが理解できなかった故に乗り切れなかった。だから、いまさら乗るのも何だかなぁみたいな捻くれた感情もある。
だが、まぁ一聴してみてわかる。そんな余計な感情はどうでも良く、このアルバムはとても良いものだ。『センセーション』の小気味良い2ステップはもちろん良いし、それ以外の楽曲は意外とテンポやテンションがローなものが多いのも何とも良い。客演のラッパー、シンガーともコラボセンスがめちゃくちゃに良い。(この辺、同じくピーナッツくん経由で知ったPAS TASTAもそうだったんだけど、最近みんなそんな感じなのか?)
そしてぐるっと立ち戻って『Special Days』の良さを改めて思う。このアルバム全体をギュッと圧縮して、一曲にまとめたような曲だ。だから別にこのアルバムが薄いとかいうつもりはなく、むしろ一つ一つの要素を楽しむにはこのアルバムが最適だ。その良き要素を一曲で楽しめるからスペシャルなのだ。

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