最後の3日間

早朝の出発にも関わらず、緑荘の女将さんはお弁当を持たせてくれた。
ありがたく頂き歩き始めた。

気温はかなり低かった。
手袋なしではいられなかった。

一本目の自然の道は、看板が見えるものの、ゲートは閉まり、道は無かった。

やむなく迂回。

この後も、自然の道はあったり荒れていたり、反対向きならきっと分からないような道があった。
とにかく、前に進んだ。

寒さで休憩する気力も起きず、ひたすら歩く。

国土地理院の地図では、GPSが示すルートの登山は表示されていなかった。中津川からのアプローチは、今年記録されていたが、僕が進む反対方向だった。国土地理院の地図にこの道は表示されていた。

なやんだが、国土地理院の地図に載っている登山道から入る事にした。道路をあるきつつ標高が上がっていく。

通行止め

そんな表示があった。
たまたま、集まっていたおじいちゃんとおばあちゃんの集団に聞いてみる。
歩きなら通れるようだった。

登山道みたいだけど、県道だから(笑)

確かにあれた登山道だった。時々こんな道がある。山形にも登山道なのに県道になっている道がある。
きっと何かで変更が漏れたのだろう…

峠まで上がると、九州自然の道の看板が出ていた。峠から先は福岡市になるらしいのだが、こちらは車が通れない幅の舗装路になっていたのだった。

16kmの道のりに9時間も費やす。

翌日は、山岳エリアで縦走するのを覚悟してか、18kmほどの予定を組んでいた。
実際に歩き出すと、崖、鎖、ロープのオンパレードだった。
誰が通るのだろう?と思うほどの崖登り、下りを繰り返す。予定地に着かないのではないか?と思うほどのペースだった。

にわかに、犬ヶ岳で数人のハイカーとすれ違った。山頂でアラレに降られ引き返してきたそうだった。
この日の冷え込みもひどかった。
必死に歩き、なんとか日暮れ前に予定地の野峠についた。そして、登山道の入り口にテントを張ったのだった。

GPSのデータではなく、看板を選んだ。

前日もそうだったが、GPSのデータをたどると道はなく、看板の通りに進むと道は続いていたのだった。
野峠から英彦山方向に歩くと、しばらくして看板が出てきた。
地図には、本線らしき道が別所駐車場を指していて、他にも数多くの支線が書かれていた。
当初から分岐まで歩いて終わりにしようと思っていたので、看板が示す通りに歩く事にした。

僕は、ここで九州自然歩道を終わりにする事にした。

やがて石畳が出てきて、古木が茂る道を進んでいく。令和豪雨の影響で流された場所や、すでに石畳が無くなっている場所もあった。
ぐんぐん進む。やがて青年の家の敷地を超え、集落に入っていった。
記憶の別所駐車を思いだしながら歩くと、ふと見た景色にぶつかった。

僕はここを良く覚えていた。この先でロストし、藪漕ぎでハットを紛失した場所だったからだった。その後、道なき道を進み、参道に続く道に出てなんとか九州自然歩道に出て佐賀県方向に進んだまさにその道だった。ここが大分からの道と繋がっていたとは全く気が付かなかった。

僕にとって、ここで終わるのが自然だと思った。そして、この看板をゴールにした。

そして、僕の九州自然歩道は終った。
別所駐車場へ行き、バス時間を確認した。
そして僕はある場所にむかった。

英彦山の宿坊、松養坊

僕がむかったのは、英彦山の参道にある松養さんのお宅だった。
皿倉山から歩き、分岐点迷い、参道に出た所で声を掛けられ、九州自然歩道初のトレイルマジックに出会ったのだった。
帰りは泊まる約束をしていたのだったが、話していた予定より10日あまりも早い到着だった。電話番号を聞き忘れていたので、終了の報告だけでもと思っていたのだった。

松養さんは、歓迎してくれた。ちょうど先週、僕に声を掛けてくれた妹さんが福岡から英彦山に来ていて、斉藤さんが、来たら鍋がいいかな?などと話していたそうだった。
思えば、ここで松養さんと妹さんとコーヒーを飲みながら時間を過ごした。
この時間が、様々な九州自然歩道の奇跡的な出会いを導いてくれた。
そして今ここで、また歓迎を受けながら九州自然歩道が終わる。
偶然にも、英彦山と同じ3大修験道の1つが山形の羽黒山だったり、松養さんが山が好きだったり、松養さんの知人が山形に住んでいたり、共通点があった。
そして、この日初めてお会いした松養さんの旦那さんから、ご先祖が代々英彦山界隈の神社の宮司をされている家計である事をお聞きした。

僕は、きっと導かれたのかもしれない。

ふとそう思った。

おわり

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