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1日72ホール担いだ彼らが求めたこと

6月26日。ロンドンに住む友人たちが、朝から晩までゴルフバッグを担ぎ、72ホールを回った。疲れた顔をしているが、みんな爽やかな笑顔だ。

今年に入って、ロンドンオフィスの同僚を亡くした。癌だった。まだ、早すぎた。
年に2、3回しか顔を合わせなかったけれど、大抵いつも酔っ払っていたから、今思えば不健康な生活だったのかも知れない。

僕たちはゴルフ関係の仕事を一緒にしていて、世界中のゴルフ場で思い出を共有した。
スペイン、トルコ、中国。。。
否。記憶を辿ってみれば、ゴルフ場での記憶なんて一つもなかった。全部、お酒の場での話だ。

また、ふらっとビール片手に、喫煙所に現れそうな気さえする。会えなくなって寂しいけれど、彼との思い出は、これからも幾度となく語り、思い出し笑いするようなことばかりだ。

僕たちは、ゴルフの仕事をしていた。彼が居てくれたから、世界のゴルフは、今までより、少しだけ楽しくなった。

Longest Day Golf Challenge

6月26日、彼が亡くなってちょうど3ヶ月後。「Longest Day Golf Challenge run by Macmillan Cancer Support」というチャリティーイベントが英国で開催された。
最も日照時間が長くなるこの季節に毎年行われている、癌に苦しむ人たちのサポート基金を集めるためのチャリティーゴルフイベントだ。

4名1チームを結成し、一緒に1日で4ラウンド72ホールをプレーする、というなかなか無茶なチャレンジである。ちなみに、歩き。しかもキャディーバッグを自分で担いで。

このイベントに、亡くなった同僚を偲び、ロンドンオフィスの若手4名がチームを結成し挑戦した。

日の出の4:45AMにスタートし、見事、ゴールした。
彼ら四人が集めたチャリティー金は、6000GBP(約81万円)にも及んだ。全額、Macmillan Cancer Supportを通じ、癌で苦しむ人たちのサポートに使われることになる。

このチャレンジは、

・チャレンジジャー(挑戦者)
・チャレンジを応援する人(募金者)
・募金を受ける団体(慈善団体)

で構成されている。

チャレンジする人は、その無謀なチャレンジを、SNSなどを通じて友人や知人に知らせ、応援(募金)を募る。
応援する人は、チャレンジャーへの期待や応援、共感を、募金という形でチャレンジャーに託す。
そこで集まった金額が、チャレンジをした人が希望する団体に寄付されるという仕組みだ。

これは、「ピア to ピアファンドレイジング」と呼ばれるもので、目的に共感する人が、自身の名前でさらに募集を行う仕組みだ。

なんで走る?

この方式を行っているのは、何もゴルフだけに限らない。最も一般的なのは、フルマラソンを走るものだろう。例えば、太っちょが「フルマラソンを走ります!」と宣言するようなものだ。
そんな無謀な!と言った声や、チャレンジする勇気、応援する気持ちが価値を生み、自然と募金が集まってくるようになるという構図だ。

チャレンジする人が身近であればあるほど、募金額はチャレンジャーへのモチベーションやプレッシャーにもなる。
実際どのように使われるか、いまいち見えにくいチャリティーに寄付するよりも、「ここまですごいチャレンジをする友人を応援しよう、その人のためになりたい。その人が応援する慈善団体があるなら、応援しよう」という心理が働く。

偽善かどうかは、どうでも良い

僕もこの方式のチャリティーに、年間で3、4回募金している。コメントをつけて募金をし、プレッシャーをかけている。がんばれ!と。
正直、友人への応援という座組みがなければ、募金をしていなかっただろう。このコミュニケーションに価値を感じていると言っても良い。

僕のような募金は、偽善的、間違った動機なのだろうか。

確かに、100%善意で行っていることではないかも知れない。
ただ、自信を持って言えるのは、1日72ホール担いだ同僚たちが求めたことは、爽やかな汗と笑顔と共に、達成されたということだ。

いただいたサポートで更に頑張ります