ヒア・カムズ・ザ・サン

朝が来ました。
虹色の朝です。
また、鈍色の朝です。
私は未だ朝であるとは思っていないのに。
今日一日はこれから始まっていくのでしょうか?
それともこれで終わっていくのでしょうか?
太陽は見えません。
月も見えていません。
空もなく、ただ真白が真上には有ります。
何も無いのが嫌なので、
何も無いのがあまり心許ないので、
私は上に鴉を投射することに決めました。
そして事実そうすると、鴉は雀に、雀は朱鷺に、朱鷺は燕に、燕は鳩に、鳩は鴎に、鴎は孔雀に、孔雀は梟に、梟は白鳥に、白鳥は鸚鵡に、鸚鵡は鶴に、そして鶴は鴉にと、
次々と色を変えてゆきました。
そしてそれは光の粒子です。
直ぐにそれは殖えていきます。
このまま、
空は出来上がるのでしょうか?
熱を帯びた粒は、花火のように鮮やかで、弾けると絵画の煙の様でした。
もしこの眼が捕らえるのが本当に朝であるのなら、
直ぐにその下には草花が生え拡がっていくのでしょう。
そして虫が生え、獣が生え、建物が生え、人間らが生えて、
それらは天に向かい伸びてゆきます。
それから雨が降るのでしょう。
生き物は目を覚まし、或る営みを始めます。
朝が来たというのに、僕の脳裡はまぼろしのまま。
気がつくと僕は分厚い布団に包まっていました。
窓には陽光が射しています。
朝が来たのです。
僕は慄き立ち上がり、窓に向きそのまま、
じっと立ち尽くしたまま、
それでこうして朝の訪れを眺め続けているのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?