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関節拘縮の中心は関節包の繊維化

リハ塾の松井です!

リハビリの目的の1つに「関節可動域制限を改善する」ことが挙げられます。
その先にADL動作を獲得したい、歩行がスムーズになりたい、痛みを改善したいなどなど、様々なニーズがあると思います。

ですが、何となく関節可動域運動をしていても改善しない症例も少なくないですよね。

その場合、何が関節可動域を制限しているのかが曖昧なことが考えられます。

制限の原因が曖昧では可動域制限が改善しないのも当たり前で、改善したいならその原因をまずは把握するべきです。

今日は臨床でも難渋しやすい関節拘縮における関節可動域制限の原因から可動域を改善するための考え方を解説します。


まず、関節拘縮とは関節可動域の減少、または受動的関節運動に対する抵抗の増加を指します。

原因は神経性、非神経性に分かれ、関節包や筋肉、腱など様々な構成組織が原因となり得ますが、ラットを用いた介入研究では関節不動2週間以降の拘縮は関節包が中心となって起こるとされています(参考文献①)。

これにはコラーゲン繊維の増殖が関与していると考えられています。

通常、関節包はコラーゲン繊維が密で、その繊維は関節包の長軸に沿って並行に配列しているため、伸張性には非常に乏しいとされます。
一方、関節包の内膜にあたる部分は滑膜と呼ばれる部分ですが、ここは脂肪細胞が存在しており、コラーゲン繊維はわずかなため、関節包の中では伸張性に富んでいる部分です。

ですが、関節不動期間が延びるにつれて、脂肪細胞の萎縮と消失が認められ、コラーゲン繊維が増殖、より密になっていくとされています(参考文献①)。

つまり、比較的伸張性に富んでいる脂肪がコラーゲン繊維に置き換わっていくことで、関節拘縮が進行していくと考えられます。

関節拘縮へのアプローチを考えた時、ストレッチが1つの選択肢として挙げられますが、2017年の関節拘縮とストレッチの効果を調べたシステマティックレビューでは、7か月未満の期間ではストレッチが関節可動性において重要な影響を及ぼさなかったという高いエビデンスが報告されています(参考文献②)。

ただ、予防的な介入としてのストレッチは有効性は報告されてはいます(参考文献③)。

関節拘縮に対する有効性が示された介入方法は確立されていないのが現状です。

個人的な考えとしては、ストレッチをしても関節包に伸張が加わる前に筋・腱に伸張が加わり、それらに短縮が認められる場合は関節包に十分な伸張が加わらないので効果も上手く出ないのではと思います。

なので、関節拘縮に対する治療としては、まず表層の皮膚、脂肪、筋肉、腱から介入し、最後に関節包という流れを意識することが重要です。

関節包の繊維化が拘縮の中心だとしても、いきなりそこへ介入するのは物理的に無理なので、それを踏まえた介入を考えていくべきでしょう。

そのためにも、解剖学、運動学的な知識に精通しておくことが非常に重要になってくるのだと感じます。


参考文献

1.Ryo Sasabe et al : Effects of joint immobilization on changes in myofibroblasts and collagen in the rat knee contracture model. J Orthop Res. 2017;35(9):1998-2006.

2.Lisa A Harvey et al : Stretch for the treatment and prevention of contractures. Cochrane Database Syst Rev. 2017;(1)

3.M Usuba et al : Experimental joint contracture correction with low torque--long duration repeated stretching. Clin Orthop Relat Res. 2007;456:70-8.


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