第一印象はミモザ
新しく始めることになったイタリアンレストランのホールのアルバイト。
オープニングだから結構バタバタしていているけど、そんな慌ただしさもにぎやかで個人的には楽しい。みんながあーだこーだいいながらお皿や机の位置を決めたりしている様子に高校の文化祭を思い出す。
これから働くレストランでは、スタッフ全員に”イタリアンネーム”なるものが与えられる。それぞれ自分で決めていいそうで、みんな自分の名前に近いものや響きのいいもの、気に入った意味を持つものを思い思いにつけていた。
私の名前はひかりなので、イタリア語で光を意味するLuciaにした。が、まさかのLucia被りが発覚。命名二日で改名を余儀なくされた。
ということで帰りがけ、店長に雑談混じりに私の名前相談をすることに。
店長は陽気で声がよく通るので、周囲の人は聞き耳を立てなくてもなんとなく話していることがわかる。
店長が、まあ考えとくよ〜と言ったところでキッチンの社員さんがひょこっと顔を出して、
「君はミモザ。パッとみた時にミモザだって思った」
と一言。なんという詩的な。
店長はおお、ミモザね。ミモザといえば、前にこんなようなギャグがあって、、、とミモザトークを展開する。私はそんな店長を前にしながら心の中で反芻する。
ミモザ。ミモザ。ミモザ。
なんだか予想に反してかわいい名前で、くすぐったい。
帰りの電車で、ついつい調べてしまった花言葉。
ミモザの花言葉は、「友情」「優雅」「秘密の愛」「真実の愛」「秘かな愛」「豊かな感受性」「堅実」「エレガンス」「神秘」。
国際女性デーの日に送られたりするお花だということは知っていたけど、いろんな意味を持っているのね、ミモザ。
キッチンの社員さんはたぶんそんな深いこと考えず言ったのだろうけど、こんな素敵な花言葉に似合うような人になりたいと思う。
ただほほえんでるだけ、美しいだけの小さい花じゃなくて、凛として、芯のある小さい花でありたいと思う。
自転車で帰る夜道は暗くて、寒い。いつもは憂鬱だけれど、今日はさわやかに感じられた。