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2020年5月の記事一覧
思い出〜第1章 記憶〜
「今日も一日終わっちゃうね」
マグカップにデザインされたお気に入りのキャラクターに向かって語りかけるように彼女は呟く。寝付きの悪い彼女はお風呂上がりに蜂蜜のたっぷり入ったホットミルクを飲むのが習慣だ。お気に入りのマグで飲む甘すぎるホットミルクとともに物思いに耽けるこの時間を彼女はとても大切にしている。
いつものようにホットミルクをすすりながらぼんやりと過ごしていると、マグに添わせた左手が
思い出〜第2章 光凛 vol.1〜
「こんにちは!」
都内某所のオフィスビルの中の大学受験対策を専門とする大手予備校の入口に、そう元気よく挨拶をする一人の少女の姿があった。童顔で少し高く個性的な声を持つとても小柄なこの少女は、高校生かどうかさえ怪しいほどに幼く見える。この光景を見たら誰もが少女のことをこの予備校の生徒だと思うに違いない。しかし、挨拶を終えた少女は小走りするかのような軽快な足取りで、受付裏へと回りスタッフルーム