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あしもとからはじめよう。

逗子の地縁コミュニティー 「そっか」

かつて、地域の自然と人の暮らしの交わる場所に、子どもの遊び場がありました。自然と暮らしが切り離されたことで子どもの居場所がなくなったのなら、逆に、子どもと本気で遊ぶことで、自然と暮らしをもつなぎ直すことができるかもしれない。そしてそれは、誰でも、どこでも、始められるはず。ー そんな気づきをきっかけにはじまったのが、一般社団法人『そっか』。

そっかは、逗子の自然を舞台に子どもも大人も皆で一緒に、遊びと暮らしを作る地縁コミュニティーとして、
・認可外保育施設 「うみのこ」
・小学生放課後の自然学校 「とびうおクラブ」
・中高生の自然学校 「アンカーズクラブ」
・あったらいいなをみんなでつくる実験場 「うみのじどうかん」
・捨てられるはずだった有機野菜をレスキュー!「もったいない野菜基金」(*スローフード三浦半島と協力)
などの活動をしています。

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そして、そんな「そっか」の共同代表を務めるのが、永井巧さん。通称、たくちゃん。

永井巧(TAKUMI NAGAI):
1971年東京生まれ。幼少期はブラジルで過ごす。大学時代に始めたライフセービングクラブを皮切りに、カヌークラブ、アウトドアスポーツクラブなど、海やアウトドアスポーツを軸とした地域コミュニティづくりに携わる。二児の父。

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先日、私がパーソナリティを務める ZUSHI RECORDS(ズシレコ) に出演してもらい、たっぷりとそっかの活動や想い、これからの暮らしと豊かさについて、お話をお伺いしました。

ぜひたくさんの人に届いてほしいなあと思い、収録の一部をテキストに起こし、今回このnoteで公開します。

自分のままで、チャレンジできる

ー わたしが「そっか」を知った時にまず面白いなあと思ったのが、コミュニティーの広がり方でした。もともとは小学生向けの逗子の海や山で遊ぶ「とびうおクラブ」から始まったのが、そこに子どもを通わせている親御さんが、妹とか弟にも自然のなかで遊んでほしいと「共同保育(現:うみのこ)」を始めて、とびうおの子どもたちが中学生になっても関わりたいと「アンカーズクラブ」という、自分たちの場をつくっていく。そしたら大人たちも、自分たちも遊びたいって「大人の海の学校」が始まって…。 小学生の子どもたちだけがこの街で遊んだり、この街を知っていくという場だったのが、みんなが主役というか、自分はこうしたいという思いから、この場に関わるコミュニティーになってるんだなあって。

そうだね。まず僕らは、子どもたちに対してもそうだけど、誰もが自分のままでチャレンジできることを大事にしています。もちろんその中で、うまくいくこともあれば失敗することもあるんだけど、でも失敗したことも、その人にとっての経験になるわけだし、それは絶対的な失敗じゃなくて、まだその過程かもしれなくてさ。

それって子どもだけじゃなくて、大人になってもそうだと思うから、日々の遊びでもそうだけど、仕事であっても、誰かとやるプロジェクトであっても、基本的には根っこで大事にしていることは変わらないかな。

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「周りでこういう動きがあるなら、私もこんなことやると面白いかも」、「自分もこういうことやりたい。一人だとなかなかできないけど、仲間と一緒だったらできそう」って、そういう風にそれぞれが自分らしくやりたいことが実現できたり、チャレンジできたりする生態系というのかな、そういう連鎖がうまれていくといいなって思ってます。

ー たしかに、そっかの人たちを見ていると、一人ではやりたいなという思いだけで終わっていたものが、ここにいると誰かのやりたいと繋がって実現できたりとか、ちょっと違うカタチでもまずはやってみちゃおうよって、一歩目が歩みやすいんだなあって感じます。

時間・空間・仲間があれば、退屈しない

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ー  コロナの影響で、とびうおクラブやアンカーズクラブも、リアルで集まることを自粛していたと思うの。改めて、子どもたちが“豊かな子ども時代”を過ごすためには何が必要なのか考えさせられる機会にもなったなと思うんだけど、たくちゃん自身は何か感じることありましたか?

僕自身はこのコロナのことで、考えが大きく変わったことはなかったんだけど、改めて大事にしたいことを再認識したところが強いかな。

子どもたちに関しては、学校行けなくて、でも自由に動けなくてという状況の中でも「時間」がある、電車とかに乗れなかったり施設が開いていなくても、自分で遊べる「空間」があったと思う。それは家の周りだったり、ちょっと走ったらいける海岸や通り抜けるトレイルだったりするかもしれないけど、それもひとつの自分の空間と言えると思う。そして、そこにランニングでもいいし、散歩でもいいし、虫探しでも、野いちごを採りにいくでもいいんだけど、そういう時にそこに行くと「仲間」と出会える。

ある程度、時間、空間、仲間があると子どもたちは本当に退屈しないというか、自分でやりたいことを見つけていけるなっていうのは、今回すごい感じたかな。

ー そうだよね。こっち(大人)がなんでもかんでも提供するのではなくて、時間と空間と仲間、その3つがあれば、子どもたちは自分たちで好きなようにやっていくということを、この状況だからこそ、改めて再認識できたというのはあるかもしれないですね。

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逗子だからね、割とそういうことがしやすかったのもあるかもしれない。都心部になるとそういう環境は難しいということもあるかもしれない。だけど、そういう環境を今は自分で選べるようになってきていると思うし、これからきっと、世の中の流れも変わっていくんじゃないかなって、ある意味期待しているところもある。

人と人との繋がりのなかで生態系がうまれていくということや、時間的なものと、空間的なスペース、それがすべてセットになっていかないと、面白い社会や未来は描けないと思うんだよね。

足下に目を向ける

ー 逗子っていう土地は、すごくそれがしやすい土地だと思うんだけど、都心部だとなかなか難しかったりするよね。子どもたちも、忙しく日々生活している子が増えていて、余白みたいなものだったり、新たに考えたり、感じたりする時間がなかったりするなあと思うんだけど、そういうことをそれぞれの人が今いる場所で大事にするためのヒントみたいなものってあるかな?

そうだなあ、それは多分「人間だけの尺度でいかない」ことかな。自然って自分の思い通りにいかなくて、コントロールできないことだらけだけど、でもその中でうまく折り合いをつけたり、できるだけハッピーになるようなものを自分で生み出しながらやっていくことが大事だと思う。

たとえば、僕ら海でワカメの養殖をしているけど、初年度がビギナーズラックで一番収穫できて、二年目はほんと散々で、三年目は少しよくなったという感じだった。そういう経験のなかで、海の状況って毎年毎年悪くなっていたりとか、取れる貝、見られる海藻の種類が少なくなっているということに気づいていくんだよね。

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ここで生きているのって人間だけじゃない。だから、人間だけで回すお金だけに目を向けるんじゃなくて、一次産業に目を向けたり、海のことや山のことと繋がることをしていきたいなあと思うかな。

ー 本当、“そっか”なんだね。足下に目を向ける。

そう、足下に目を向けるって根元的なものだったと思うから、これって逗子だけのことじゃなくて、どこにいっても大事にできる価値観になるんじゃないかな。

もちろんそれは逗子が基準ということじゃなくて、その土地土地のことを知ることだったり、その土地の人、周りにある自然も含めていい生態系になっていくということが、やっぱり大事かなと思います。

photo by : YO


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