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「山頭火全句集」を一章ずつ⑫13

「山頭火全句集」を一章ずつ読んでいくこの試み。

今回は「大正十一年」と「大正十四年」の章です。

まず「大正十一年」。

この章の最初の句がこちら。

        落葉あつめて墓守の焚く煙ひとすぢ

なんです。

いきなり「草木塔」に出てくる句に近くなった感じがします。

ここから僧侶になるための修行が始まったのかなと思いました。

お気に入りは

    けふもよく働いて人のなつかしさや

です。

noteを始める前に読んだ本なので記事はないのですが、以前読んだ種田山頭火の一生についての本で「山頭火は寺に入ってから別人のようになった。」ということが書いてあったんです。

この句にはそれがよく出ているのかなって思います。

「けふもよく働いて」

この語句に山頭火の謙虚なところが表れていると思います。

前の章までだと風景を詠んでいた句が多かった印象ですが、この句には山頭火の心情が詠まれているんですよね。

山頭火の人間がわかるような、こういう句。いいなぁって思います。

(前までの章に風景を詠んだ句が多かったのは私がそういう句が好きだからかも知れませんが。)

余談ですが「いいなぁ。」ってなる作品っていいですよね。

こう、じーんと体中に感動が染み渡っていって、カラカラがった体が潤っていく感覚。

忙しい社会人の方ほど「いいなぁ。」を大切にした方がいいと思うのですがなかなか難しいようです。


続いて「大正十四年」

この章から「草木塔」にある句が出てきています。

      松はみな枝垂れて南無観世音

       松風に明け暮れの鐘撞いて

   ひさしぶりに掃く垣根の花が咲いている

こちらの三句です。

出家会得して味取観音堂の堂守となった年がこの「大正十四年」だそうです。

「ひさしぶりに掃く」なんかはまさしくそうですよね。

さびしい生活の中で見つけた小さな花。

ほっとするような、さびしさが際立つような、そんな感じがします。

この一年、山頭火はどんな思いで過ごしたんだろう。

山頭火の日記を覗いてみたいと思いました。

と、この三句の感想を書いてきましたが実はこの章。こういうのではなく、もっと色が濃いというか、楽しそうな句も入っています。

猫が出てくる句もあって、この生活にも猫が遊んでいるような楽しさもあったんだな。

そう感じました。




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