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無人コンビニ2.0の日本における展望

 中国で起きていた無人コンビニへの投資ブームは3年間にわたって、2019年の夏に幕が閉じられた。たくさんの無人コンビニが閉店し、一部が有人コンビニに変り、残っている店舗もまだ苦戦している。
 消費者の観点から考えると、セルフ決済が特徴となっている無人コンビニ1.0の失敗は偶然ではなかったと思う。通常のコンビニと比べる場合、商品コードのスキャンは消費者自身で行う必要があるので、決済スピードが早くなかった。そして、ネットワークとシステムの問題で、消費者が店内に閉じ込められたこともしばしば発生していた。商品価格は通常のコンビニより5%安く設定されていたが、長期的にスーパーよりも安い価格の実現という目標は達成できなかった。商品の種類も非常に限定されていて、日系コンビニのようにお弁当からおでんとソフトクリームまで豊富なラインナップで商品を提供できなかった。結果、総合的に悪い消費者体験が無人コンビニ1.0の閉店を加速させた。
 幸いなこと、コロナが追い風に無人コンビニ2.0に挑んでいるスタートアップはまた現れている。特徴としては、画像分析の技術に長けていることと、小売業界に特化した研究・開発を行いながら、Amazon Goと同じような購入フローの実現を目指している。無人コンビニ1.0で見えてきた消費者の課題が解決されたら、将来は日本でも広がって定着する可能性が高いと、私はそう考えている。
 まずは、購入体験を改善するために、消費者がそのまま店舗から出れるよう、決済手続きをなくさないといけない。ただし、ソリューションとして今まで期待されてきたRFIDはまだ二つの課題が残っている。一つ目は、1枚10円の高いコストはコンビニにとって負担が難しい。二つ目は、商品にRFIDを貼るのも店舗側の手間がかかるし、決済する前に意図的に剥がされるリスクもある。この二つの課題が解決される前に、画像解析技術の精度が先に進化し、普及するだろう。その場合、店舗側で必要となる設備はカメラとそれに連動するドアだけなので、コストが非常に低いと思う。このようなトレンドはIoT業界全体に影響すると考えている。
 次に、商品の魅力を増やすために、商品価格を既存コンビニより安く、スーパーと同等レベルに設定しないといけない。新鮮で賞味期限の短い商品とイートインを提供すると、管理コストも増えるので、イートインなしで賞味期限の長い商品を中心に低価格で提供できたら、既存コンビニ、スーパー、ミニスーパーと差別化できると思う。また、店外に「ピザ セルフ」のような食品自販機を設置すれば、顧客の来店とドリンク販売の増加に繋がるかもしれない。
 最後、「免許を持たない家族」や「クルマ離れ世代の若者」など、買い物難民と言われている顧客をターゲットにすべきだと考えている。衰退している商店街と郊外の住宅地などに低い家賃コストで店舗を展開できたら、潜在的な需要を掘り起こしながら、商品を低価格で提供することも可能になる。ただし、高齢者への浸透は時間かかるだろう。長期的なビジネスポジショニングは、既存コンビニとオーケーストアのような低価格スーパーの間に位置すると考えている。
 以上、日本における無人コンビニの近未来像についての妄想だった。そういえば、JR東系列の「タッチトゥゴー」の開発した無人コンビニは既に今年3月「高輪ゲートウェイ駅」に1号店を出店したね。コロナも落ち着いてきたから、そろそろ寄ってみたいなあ。

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