夜明けまで待って
夜明けまで待ってすべり台から滑る 樋口由紀子(『容顔』)
こんなことを君に聞く。
「もし夜明けまで待った後、君は何する?」
夜明けまで待ってAする
というこのAはひとそれぞれの世界や生き方や気合いによって違う。
夜明けまで待ってこれからももう会うこともないだろう君に手紙を書くひともいるだろうし、夜明けまで待って気になっていた前髪を切るひともいるだろう。
樋口さんはそのAをすべり台から滑り落ちることを選択した。
川柳はいつもこのAを聞いてくる。
そして夜明けまで待ってからすべり台を滑ることで普段とは違った呪術めいた瞬間が生まれる。
きみ、魔法持ってるね、いくつか、
と川柳は語りかけてくる。
きみもわかっていたんだろう?
だから、
Aで放ってごらんよ、と。
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