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たったひとりを選ぶ

たったひとりを選ぶ 運動場は雨  倉本朝世(『硝子を運ぶ』)

この句がすごく好きなのは、自分がもしかしたらたったひとりを選ぶことができないかもしれない不安から来ているのかもしれない。
それは触れられない強い光のようなものだ。
でも、その光がたえずそばになければいけないと思うような光だ。
強く、触れられず、でもそこにあってほしいと願う光。

その光の中で、無数の過去の中で、誰かがいつもたったひとりを選んできた。
もしかしたら歴史ってそういうことだったのかもしれない。
このとき・このひとは・このひとを選びました。

運動場が雨なのは、なぜだろう。
でも、選ぶことは正義がすごく強そうなので、運動場は雨で、誰も走れないくらいの方がいいと思う。
傘を持った人がもう一人の傘を持った人に近づいてゆく。
彼は彼女に話しかける。

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