⦅17⦆『2020.08.08』〜午前中のアイス-4〜
前回の続き・・・
8日午前4時半過ぎに、改めて1号線を歩き始めた。
この段階で、まだ全体工程の10分の1くらいしか進んでないです。
この時間帯は歩く上で、とても心地よい気温。
心地よい時間帯は、歩くペースが早くなる。
車の通りも少ない時間帯。
道路も広々と気を遣う事なく、黙々と歩ける。
音楽とか聴きながら、リヤカーの重さにも慣れ、脚も歩き慣れてきたこの時期は心地よい1人の時間になる。
知らない誰かと話すことも目的としていたので、この時間帯の感情はすごく矛盾するのだけれど、それでも話してばかりで、足を止め過ぎては一生ゴールできないし、適度に進む時間帯を作らなければいけない。
そのため、進み具合があまりにもいいから、たまに車に乗ってるんじゃないか?と疑われることもあった。
冗談で言われたことだろうけど、それにしても人が寝ている時間に何かを進めるというのはなんだか気分がいい。
たかが歩くだけなんだけど、だから余計に面白い。
あっという間に午前中は過ぎていく。
途中、心地よい散歩のせいで猛烈な眠気に襲われる。
何度も味わったが、これに関しては耐えるのではなく素直に眠気に従い眠るようにしていた。
時刻表を見てもバスも誰も来ない、バス停の椅子。
住宅街のど真ん中にある公園のベンチ。
川沿いにある休憩用のベンチ。
土手の木陰ができている草むら。
ホワイトボードには『歩き旅〜休憩中〜』と、書き換えて自分の傍に置いた。起こして欲しくないのと、死んでないよっていう意味で。
※一度酔っ払って、そのままリヤカー横で寝てしまい通報されたことがあるが、この旅のもっと先、静岡での出来事だ。
休みながら、信号にも捕まったりするので、GoogleMapで算出される歩きペースは全く当てにならない。
これはなんとか改善できないものか。。。
いちいち彼らは位置情報を掴んで追っかけているのだから、それぞれ個人のデバイスが時速何キロで進んでいるか算出できるはず。
そこから概算で歩くペースを計算すれば、自ずと各デバイスごとの概算が計算できるはずなのに。
そういうアプリもないのかと探したけれどなかった。
よかったら頭の良い人一緒に作りませんか?笑
結局、当てにならない概算の時間を無視して、歩くペースは時速3キロ前後と見立てて、距離から予想時間を計算する。
35キロ前後の道のりは、休憩入れて11時間くらいかな。
というように、多少ざっくりだかが、感覚が麻痺してきたせいか、10時間前後の歩行は日常になってきた。
この日は夜中から歩いていたから休憩を多めに。
午前9時ごろにどうしても抑えられない眠気に襲われ、住宅街のど真ん中にある公園のベンチで仰向けになり1時間のタイマーをかけて眠り込んだ。
そうした生活を続けていると、体は順応するもので、少なくとも僕の場合は順応していたので、1時間のタイマーで起きて、少しだらだら目を擦りながら携帯を触っていると次第に目が覚めて疲れも取れた。
目的地までの道のりを確認し、再びリヤカーに捕まり歩き始めた。
午前10時ごろ。
街もとっくに起きていて、街ゆく車の量も増していた。
大通りから車の流れを避けるように、住宅街の閑静な道を進む。
車の熱気と日陰の箇所が少ないことから、大通りを通るときは覚悟が必要になる。
まだまだこの先が長い今日は、できるだけ体力を温存するため、日陰が多くできるだけ涼しげな道を選択した。
しばらく歩くと、仕事用のワゴン車を整理しているお父さんと出くわす。
すごく興味津々な顔つきで『本当に大阪からきたの???』と。
今日で8日目です!と答えると、8日で大阪からここまで来れるものかと、本当に驚いていた。
答えていて自分でも思ったが、まだ8日か、と・・・
『ちょっと、ここで待ってて!時間あるでしょ??』
と、自宅があるだろう方向へ小走りでかけていく。
すごく愛嬌のあるお父さんで、外仕事で日に焼けた丸い顔に、くるりとした丸い目がとても印象的。
しばらくすると、麦茶とミルクのアイスバーを持って帰ってきた。
『暑いから、よかったら食べて行きなよ!』
と差し出され、喜んで受け取る。
いろいろ質問を受けながら、自分ももっと若ければ色んなことに挑戦したいと思うな。。。としみじみ感想をもらった。
若さとか、環境とか本当に関係あるのだろうか。
この頃から、やりたいことができない条件は一体誰が作っているのか。
そのことについて考えるようになった。
不意に年齢を聞かれた。
『今いくつ?』
僕は学生でも無いので、いつも「良い大人です笑」と答えている笑
この日は、『37歳です!』と答えた。
すると
『実はね、君と同じ歳くらいの娘がいたんだけど、亡くなったんだ。』
と
思いがけないタイミングで重たいボールを受け取った。
びっくりして、何も言葉が出なくてしばらく『!?』って顔でお父さんの方を見つめた。
食べ終わったアイスの棒をお父さんは『捨ててくるから!』って、笑顔で引き取ってくれたので、ありがとうと言って手渡す。
その時、なぜ娘さんがお亡くなりになったのか、いつのことなのか、詳細は聞かなかった。聞くことができなかった。
そしてその後、このお父さんたちはどんな思いで今まで過ごしてきたのか、どれだけ大変な苦労されたのか。
想像もつかない日常を頑張って想像することしかできない。
『人生、山あり谷ありだもんな!歩いてても、辛いでしょう??これだけのもの引っ張ってさぁ!すごいよ!
僕もいろいろあったけどさ、本当にいろいろあったんだけどさ、今生きているってことと今楽しいってことが大事だよな!?』
その言葉の重さに耐えきれず、出会って間もないけど溢れる感情を抑えきれず泣いた。
なんで、そんな優しい言葉かけられるんだ。
自分の子供を亡くしたときの感情って、どうなってるんだ。
想像もつかないし、想像したくない。
生きている中でも最悪なシナリオの一つなんじゃないか。
どれだけ時間が経過しているかわからないけど、少なくともこのお父さんはその事実と向き合い、それでも笑顔でいきていくことを選択して、たまたま2020年8月8日10時過ぎに出くわした、黒く日に焼けた見ず知らずのリヤカーの男に、アイスを差し出し、興味津々に話を聞いてくれた。
そして、寄せ書きも嬉しそうに書き込んでくれた。
別れ際、必ず歩き旅は成功させると誓った。
もちろんそれで全てがOKということではないけれど、僕らはシンプルにこの無謀な挑戦をゴールすることで楽しむと共感しあったのだ。
底抜けな笑顔には、計り知れない人生の山と谷があって、その人の辛さ苦しみなんて到底わかりっこない。
人それぞれ思う感情は違うし、感覚も価値観も違うと改めて認識した。
だからこそ、自分はオープンでいよう。
そう思える出会いだった。
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まだまだ続く8月8日・・・
備忘録も兼ねてるから抜かりなく全部書きたい。。。
長いとか読みづらいとか、、、ご意見はあったら頂きたいのだが、個人的に残すというのが目的でもあるので、ご容赦いただきたい笑
次は、バス釣り中学生と甲子園3回出たんだぞ酔っぱらいおじさん。
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