【感想】Hayami Saori STREAMING LIVE"glimmer of hope"

2020年12月27日、早見沙織さんの初のストリーミングライブ『glimmer of hope』が開催され、翌年1月3日までアーカイブ配信が行われています。

アーティスト活動5周年を迎えた今年、冨田ラボさんをはじめ様々なクリエイターとコラボしながら特にジャズ・シティポップ方面で強く注目を集めた早見さん。
5年間の楽曲に加えそれらの新曲が披露される待望のライブであったと同時に、コロナ禍で一層積もった『聴き手に寄り添いたい』という願いが反映されたテーマ性の高い素晴らしいライブでした。

ファンでない人にも自信を持って勧められるライブであり、何回でも観たい、観て欲しい内容であったため、前半にネタバレなしの全体的な感想、後半にネタバレありの曲ごとの感想…という構成で記事を綴ろうと思います。

なんと言っても、「聴き手に寄り添う」ことを大切にした早見沙織さんの音楽を聞いた後は、感じたことを綴りたくなってしまうのです。

ライブの詳細・視聴はこちらから!
https://whv-amusic.com/hayamisaori/news/index02130000.html

●感想 配信ならではの演出が「自分らしさ」をより輝かせる。

今回のライブはとにかく『ストリーミングならでは』の表現が多彩に盛り込まれたライブでした。
カメラワークを前提としたステージ構成や、加工が加わって配信される映像…といった無観客の配信でしか出来ない演出の施された、新しいライブ表現の形を楽しむことが出来ます。
そして何より、こういった演出がこのライブで描かれるテーマを助長し、視聴者がそれぞれの場所で観るからこそよりテーマに共感出来る内容になっていました。

テーマに関して、ライブ前のインタビューで下記のように語られていました。

本当に今みんなに変化が訪れているかもしれなくて、いろいろなことを乗り越えながら歩んでいくと思うんですけど、そういうなかでのまさに「glimmer of hope」ですよね。ちょっとでも自分が発信させてもらう音楽に触れてもらうことで、明日を生きる糧になったら。
(株式会社イープラス スパイスより引用)

聴き手に寄り添える音楽でありたいという願いはデビュー当時から何度も語られていましたが、今回特に変化の中で進もうとすることに寄り添う音楽ということが強調されているように感じます。
ライブの構成がそれを体現しており、序盤は「閉塞感」の強い楽曲が並び、人間の内面を見つめ直すように様々な感情が描かれます。後半、ステージの変化と共にそれが一気に外に解放されるような瞬間があり、それはまるで目に映る全てが希望に見えるほどの心地良さを感じることが出来ました。

見つめ直した自分の内側、見つける自分らしさ、それを外に広げて歩んだ時(例えその一歩が前進じゃなかったとしても)感じることが出来る希望…それがこのライブの根底にあるように感じます。

普段は一体感、様々な人が集まることにフィーチャーしたライブをされることが多い早見さんですが、今回は『自分自身』をとても尊重していて、ストリーミングという観賞方法に非常にマッチしています。

ライブタイトル「glimmer of hope」には日本語訳のかすかな希望の光という意味の他に、
最新曲「glimmer」とデビュー曲「やさしい希望」 を表し、アーティスト活動5周年を総括したライブ…という意味も込められていました。

5年間の様々な楽曲が偏りなく演奏される中で、必ずしもシングル楽曲祭になるわけでなく、テーマにふさわしい楽曲たちが披露されるのはとても早見さんらしい素晴らしいライブでした。

●セットリスト

-OPENING-
1. yoso
2.メトロナイト
3.水槽
4.瀬戸際
5.ESCORT
6.mist
7.ザラメ
-MC-
8.ブルーアワーに祈りを
9.祝福
10.やさしい希望(Bossa Nova)
11.Akasaka5
-HAYAMinst.-
12.LET'S TRY AGAIN
13.Jewelry
-MC-
14.garden
15.glimmer

会場:国立代々木競技場 第二体育館 アリーナ

バンドメンバー
ベース・バンマス:黒須克彦
ギター:黒田晃年
ピアノ:角脇真
ドラム:小笠原拓海

●曲ごとのレポート・感想

-OPENING-
表題曲「glimmer」のメロディを使ったSE。
映像は真っ暗の中に輝く光から始まり、やがて視界が開くように美しい日常風景がワイプインし、満ち溢れた光の中でタイトルロゴが出現。

「glimmer」のイメージが視覚化されていると同時に、
まるで内側から外側…という光の広がりを表現しているようで、「JUNCTION」に引き続き、ライブのテーマを象徴する内容だと思いました。

1. yoso
2.メトロナイト


シティポップ調の2曲で始まり。黒ドレスで照明も紫ベースとシックな雰囲気で、そんな中韻を踏む増していくグルーブ感が最高。
まさにこれぞ早見沙織、と言いたくなるスタート。
「メトロナイト」は間奏アレンジVer.

同時に『自由を求めるから書ける自由の曲』である「yoso」も、サディスティックな雰囲気のある「メトロナイト」もどこか閉塞感のある楽曲となります。

3.水槽

前2曲で撒いた閉塞感の種が芽を出すのがこの曲。
360度幕に囲まれた円形のステージに水の映像が映し出され、まるで水槽の中で演奏をしているかのように。
円周に沿ってドリーするカメラワークがそれを誇張し、水槽の外を求める楽曲の内容にシンクロして閉塞感を強く感じさせます。

披露がとても久しぶりでイントロから湧きあがりました(笑)
アレンジはとにかく黒田さんのギターがカッコ良かったです。

4.瀬戸際

この曲までが地続きのOP盛り上がり枠。セトリエモすぎるって。。。
言葉尻で音を揺らして「儚さ」を感じさせる歌唱。
自分と向き合うこと、変化を肯定するライブと総評したけど、心が動く瀬戸際って必ずしもポジティブなだけじゃないんですよね。不安とか、様々な感情が一つのテーマにパッケージされるのは早見さんの凄く好きなところです。

激しい感情を激しい映像で表現するのではなく、オレンジ調の照明(の前曲との落差)に委ねるシンプルさもとても良い。

5.ESCORT

聴く度新曲になるESCORT。
綺麗なファルセットと、少し吐き捨てるように歌うときの差がエモエモで、ずっと心を惹かれ続ける。この曲はいつまでもいつまでも聴き続けていたいです。

6.mist

演出が濃くなると予想していたけれど、背面にリリックビデオ風の映像が描写されるのは、そうきたか〜〜〜〜〜という感じ。
「自由」とは何か、という革新的な気付きが描かれた楽曲で、ここまでシンプルな白と黒で楽曲の雰囲気を表現できるなんて、映像クリエイターに敬意を払いたいです。

浮遊感の強い楽曲ですが、ラスサビだけ原曲とは大きなアレンジが施され、ギターを中心にバンドサウンドが強めになります。
これにより、歌詞のメッセージ性(捉え方次第だという気付き)がかなり強めに表現され、
これまで閉塞感を抱いていた内面の感情に、大きな変化が起きたことを感じさせます。

7.ザラメ

ささやく歌い方。がとても良い・・・・!!!
イヤホンで聴くことでよりその良さがわかるので、ストリーミング映えは抜群!!
淡々と進む旅の楽曲。セピア色の映像加工で曲の雰囲気が表現され、
曲の途中、早見さんが歩き出すと、さっきまであった前面の幕がなくなり花道が伸びており、
そこを一歩ずつ進む後ろ姿が映し出されるという演出に。
そう、ここで内面の世界から外の世界に広がっていくんですね。(いや演出うますぎかよ・・・・)

-MC-

前曲で花道の先に進み、センターステージの上のピアノに座りMC。
今回はMCが短めで、曲数を多く濃密にしたいんだな…としみじみと思いました。感謝。。
挨拶と生配信ライブのお話で、
それぞれの場所で、音だけじゃなくて映像も楽しんでほしい。
久しぶりのライブでリハーサルでバンドと音を合わせたら気持ちが高揚した。

といったお話や、一人でMCをしていると孤独感を感じるけれど、多くの人とつながっていることが嬉しい、というお話をされました。
この内容が次の曲の歌詞に繋がります。

8.ブルーアワーに祈りを(弾き語り)

尊すぎる・・・。。。。。。
リスアニライブ!上海以来の1年ぶりの披露で、国内だと2年半ぶりの歌唱でした。
弾き語りは早見さんのライブの定番ですが、元々弾き語り前提で描かれていない楽曲をがっつりやるのは初めて。歌声に合わせてコード進行を奏でるBPMが揺れ、原曲の持つ空の包み込むようなエネルギーではなく、人間一人の孤独感にフォーカスされるようでした。

前述のMCの通り、ストリーミングという配信形態と、『孤独を肯定し仲間がいることを歌う』内容のリンクが完璧でした。

9.祝福(弾き語り)

楽器のイメージがかなり強いこの曲を弾き語りでやるとは・・・・。
この曲もブルーアワーに続いて「祈り」の曲ですが、曲中に仕込まれた『主よ、人の望みの喜びよ』や『アヴェ・マリア』の意味を考えると、
願いの祈りではなく、今日も祈ることが出来て幸せですという祝福の祈りなんだと思います。
だから【明日がくれば】と当たり前の日々の営みを尊く歌っていて、
この内容がブルーアワーとめちゃくちゃリンクしているんですよね。

自分の内面と向き合い、閉塞感が自由に変化し、旅の先で日々の尊さに触れる・・・ここまでセットリストの物語が繋がっているのがすごいです。

照明は弾き語り2曲とも暗いオレンジ。

10.やさしい希望(Bossa Nova)

照明が明るくなり、ここから希望が満ち溢れるようなパフォーマンス。
いつもよりしっとり目に歌い、少しずつ希望が湧き上がるような演奏。

デビューシングルで『はじまり』を歌った楽曲ですが、【この場所にいることが確かなはじまりを示してる】という歌詞は、ライブで演奏される度『進んできた道は間違いじゃない』と背中を押してくれるようで、同時に毎回進化する早見さんの可能性をその都度感じさせます。

今日という日は残りの人生のはじまりの1日!

11.Akasaka5

早見さんが立ち上がり、開放感が一気にぶわーーーっと湧き上がる。イントロから泣きそうになりました。
赤坂5丁目の風景を歌った楽曲で、完全に内から外へ音楽が広がる瞬間。
外の風景の描写がこんなにも心地よいなんて・・・・。
風を切って歩く肌の感覚や匂いまで伝わってきそうで、多幸感に満ちた瞬間でした。これ、ここまでの積み重ねがあってこれなんですよ、なんでもない風景を愛おしく想像させるセトリ演出、凄すぎる・・・・・!!!!!

歌い方も、早見さんはいつも音価たっぷり言葉尻まで丁寧に歌うのに、可愛らしい女の子って感じで良い意味で少し雑に歌っているのが本当に良い表現でした。

-HAYAMinst.-

盛り上がりを継続してアップテンポなインスト。
であり、これは、早見沙織5周年Ver!!ピアノが「夢の果てまで」のメロディを弾き、ギターが「Blue Noir」のメロディを弾き、エモエモな隠し要素満載!

12.LET'S TRY AGAIN


白いドレスに衣装チェンジし、再びメインステージで歌唱。
なんとセンターステージで歌っていた間にメインステージの形が変形しており、
メンバー5人が一人ずつステージに乗っているような、開放感強めのステージになりました。

この曲は、、、泣きました。イントロから!!!

早見さんの楽曲で一番好きな曲は?と聞かれたら、
日常に寄り添ってくれるからその日によって感じ方変わるし、一つに決められないなぁ〜〜と思いつつこの曲がいつも脳裏に浮かぶ、人生の大切な時期に何度も何度も何度も救ってくれた楽曲です。
そして思った、やっぱりこの曲が一番好きだ〜〜〜〜〜。。。。

100%じゃなかったかも知れない
でもそのときやれる精一杯
盾にしながら
やってきたこと知っているから

進もうとした結果それが理想通り出来なくても、その頑張りを肯定してくれる。今回のライブにぴったりな楽曲ですよね。

陰でこぼした涙がいつか
小さい小さい花をつける
そう信じられたら
いまより ちょっと笑えるはず

何度も何度も何度も救われていながら今日初めて気づいたんですけど、
これってまだ信じられていないけど、信じられることを信じているんですよね。
のちに演奏される『glimmer』の歌詞とすごく似てて、希望に手を伸ばすことを肯定しているし、今後ろをむいてしまっているかもしれないけど、希望を感じているからその反対も感じるし、希望を信じないと希望を感じないよっていう、
誰にでもある希望を歌っていると思うんですよね。

この曲は早見さん詞曲でこそないものの、アーティスト早見沙織の描く幸福論にすごくぴったりあった楽曲だなぁと感じます。

13.Jewelry

応援楽曲2連続、幸せすぎて死んだ。。。。。。
照明はカラフルで、カメラの前に宝石をぶら下げてキラキラな映像にするなど、とにかく幸せな映像になっていました。

この曲はライブではアンニュイな歌い方をされることが多いですが、原曲に近い元気な感じで、『応援』感がより強いパフォーマンスでした。

唱えて いつも 負けないきみに また会えるよね

また会えるいつかが本当に楽しみでなりません。
すごく細かいけど、今回のアレンジ、また会えるよねのあとの、ラララ〜ラ〜ラ♪って感じの鉄琴の音がとても良いので聞いてみてください。

-MC-

バンドメンバー紹介と関係者、ファンへの感謝を告げる早見さん。
演出性の高いステージでも毎回この時間を入れる早見さんの人柄の良さがとても好きです。
そして、今年を振り返るお話。とても大切そうに、拾い上げるのではなく、ずっと伝えたかった・・・というように、やさしい言葉を届けてくれる様子が印象的でした。

これを見てくださっている方の中にも、新しい道に向かって歩き出した人とか、反対にちょっと歩くのを一旦お休みした人とか、みんながみんなそれぞれの道へ向かっていってるんじゃないかなと思います。
そんなみなさんの日々の中で、早見沙織の音楽が、ちょっとでも、みんなの明日の力になれば、ほんとにちょっとでも、みなさんの元を照らす細やかなやさしい光になれば、ちょっとでも救いになれば、そんな歌を私はこれからも歌っていきたいと、改めて2020年に私は思いました。
そんな思いを込めて「glimmer of hope」というタイトルをつけました。
明日も、これから先も、これを見てくださっているあなたが、笑ったり、泣いたりしながらなによりあなたらしく生きていけますように。


14.garden


まぁ〜〜〜〜〜泣くでしょ・・・・・。。。。

ステージ場が庭になるような演出。元々gardenというタイトルは、JUNCTIONツアーの時に庭の演出を使おうと思ったことから生まれたそうですが、それが今回初めて実現し、こんなにも美しい緑の中、木漏れ日や花が輝くさまだったんだなと感動しました。
この曲も原曲はアンニュイな歌い方寄りですが、力強い歌い方が心の底から幸せがみなぎって溢れていくようでした。
2番の「そうでしょ」とかすごくエモい。

実際2020年はコロナ禍で仕事も大変で、自分も様々な変化が迫られました。その中でこれからどんな自分を選択していくのか、見つめ直す中で支えになってくれた、今もなっているのがこの曲です。
本当にありがとうございます。

15.glimmer

楽曲にも引用されている「温かな許し」のMCから最後の曲へ。
背面が美しい星空になり、幻想的なステージで手を伸ばし歌唱。
暗い空の中、かすかな光に手を伸ばす…という楽曲ですが、暗いイメージを作るのではなく、希望を信じているから手を伸ばす…ように、希望に満ち溢れた演出になっているのが良かったです。

ラスサビはアカペラで囁くように歌い、その息遣いに心を大きく揺さぶられました。
張り上げるよりよっぽど難しい表現なのにここまでエモーショナルに歌い上げる早見さんの歌唱力には毎回度肝を抜かれます。

色々感じたことを綴りたくなるけれど、この曲が描く『希望』がライブ全体をとおし


最後に

いつも早見さんのライブに行くといろんな感情が湧き上がって、人生観に大きな影響を与えられるくらい色々なことを考えて、自分自身が大きくアップデートされています。
本格的な単独ライブは久しぶりで、コロナ禍で待ちに待った今日だったため、いつも以上に今日という日をどんな自分で迎えたいんだろう?その先どうなっていうんだろう?なんてことを事前に考えて過ごしていました。

ライブが終わって今すごく思うことは、より良い自分です!なんて格好つけられないくらい上手くいかないこともたくさんあって、だけどそういう部分を全部受け入れて、また"これから"頑張っていきたいなぁという気持ちです。

今回のライブをきっかけに楽曲の魅力にさらにたくさん気付くことが出来たので、それを日々の生活に持ち寄ってまた自分らしく戦い続けたいです。

これからも人生のサウンドトラックに早見沙織の音楽があることが楽しみだし、
そんな魅力的な音楽の感動をたくさんのファンが持ち寄って、またこうしてライブを楽しみたいです。
最高のライブをありがとうございました。

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