見出し画像

ふるあめりかに袖はぬらさじ 感想

私的千秋楽を昨日ついに迎えてしまいました。

お仕事も都合もあったので、今回は3回くらいしか入れませんでしたが…
毎公演、物語の世界にどっぷり浸かってしまって、公演後は毎回余韻ひたひたでした😌

瓦版からSNSへ時代は変わったけれど、人々の動きや言動は変わらなくて。噂に更に背ひれ尾ひれがついて、嘘か誠か定かでは無い噂がさらに大きくなっていく。
SNSが普及した現代や今の状況とマッチしていて、色々と考えさせられる舞台でしたね。

物語の大まかな流れは前回のブログに書き残したので、今回はキャラクターや演出などについての感想を書き残しておこうと思います。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

劇場について


・ロビー
「新橋演舞場」には今回初めて入ったのですが、建物内に足を踏み入れただけで独特の雰囲気が味わえる空間でしたね。
それぞれのフロア内には、お弁当やお土産菓子や民芸品などの売店もたくさんありました。公演前にフラフラと見て回っていたのですが、外とは別世界のような雰囲気で見ているだけでも楽しくなってしまいました🤭

記念のお菓子も販売していました



・会場内
これまで入ってきた会場とは違って和な感じがして。扉を潜ったら、別世界に入り込んだような気分になりましたね💭
それから、上の方に行灯がたくさん吊るされているのがとても印象的でした。煌々としすぎず、ぼんやりとした灯りで。これからどんな物語が見られるんだろう!?とワクワクしてしまうような空間でした。

・座席について
「桟敷席」「1等席」「2等席」「3階A・B」という席種でしたね。私は今回は全て1等席で入ってみましたが、1等席と言えども位置が違えば見え方もまた違いました。色々な場所から見ることが出来たので、それぞれ違った気分で観劇することができました👍

①物語り全体の見やすさで言えば、2階席1列目センターブロックが一番かなと感じました。
それぞれの役者さんの動きが全部見えるし、まず1回目はここだな〜!って感じでした。
②中列花道横は役者さんが真隣を通り抜けるので、ドキドキ感がたまりませんね。
立ち止まって演技などはあまりなかったですが、この会場ならではの演出を感じられて面白かったです。
③前列センブロはとにかく役者さんが近くて迫力満点!でもやっぱり近すぎて、私的にはちょっと首がしんどかったです…。
あと、新橋演舞場はあまり段差がないので、背の高い方が前に当たるとマジで全然見所が見えません。迫力と引き換えですね…😭

中列花道横はこんな感じ、通路の端が光ります


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

演出について


・1幕について
舞台が暗転した状態を活用してスタートしたのが個人的には印象的でした。突然物語の世界に迷い込んだかのような演出で、初見時は心の中で1人で大興奮してました😆✨

・2幕について
やや明るくして敢えて舞台を魅せるという、ここの演出がとてもお気に入りでした。まるで、岩亀楼の日常を少し覗いているような気分になりました。
芸者や遊女達がいそいそと御善を準備したり、三味線や踊りの稽古をしていたり。異人に合わせて蝋燭のシャンデリアやイスやテーブルをセットしたりと、とにかく見ていて楽しい演出でしたね。

・4幕について
ここでも2幕頭のように、セットや小道具などの移動を敢えて見せてくれます。客の為にいそいそと準備しているのが伝わる演出です。
3幕で「亀遊」から、勇ましさを意識して「亀勇」となっておりましたが、4幕では更に札が豪華になりました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

お園(大竹しのぶ)


・しのぶさんについて
恥ずかしながら大竹しのぶさんの演技を初めて拝見したのですが、良い意味でとんでもない役者さんでした。
えげつないセリフ量なのに、恐ろしい程にスピーディーなセリフ回し、感情の乗った表情や仕草。お園さんがスタートを切ってからのものの数分で、ふるあめりかの世界観に一気に引き込まれてしまったくらいでした。

・お園について
登場シーンから饒舌。少しカラッとした言動をするとにかくお喋りな人で、更に弁が立つ人物でしたね。ちょっとお節介ではあるけれど、亀遊や藤吉のことを深く気にかけたりと、あたたかい人でもありました。
元からこういった性格なのか、はたまた仕事によって身につけざる負えなかったものなのかは分かりませんが、あの時代の女性ですしね…。色んなものを見聞きして自分を押し曲げながら、流れ流れて岩亀楼にやってきたのかと思うと胸が苦しくなってしまいます…。
恋ができるのも命あってのものだからね!と藤吉に語っていましたが、お園さんは一体どんなものを見て生きてきたのでしょうね…💧

3幕で藤吉を責め立てるシーンは、お園さんの悲痛な想いがこもっていて。セリフも表情も、見聞きしていてとても辛くなってしまいました。
藤吉も仕事だから仕方ない、お園さんは言い過ぎだ!!って気持ちもあるけれど。お園さんにとって亀遊さんは幼い頃から知っている可愛くて仕方ない存在だったんだろうなと思うと、あんな風にもなってしまうのだろうなと。
「悔しいね…」と2人で泣いている姿を見て、またまた胸がキュウ…となってしまって。一緒に泣いてしまいました。

嘘に嘘を重ねて、それがとうとうバレてしまったお園。志士たちが去った後はあまりの恐怖で足腰が立たない中でしたが、志士たちが残していった酒をとにかく飲む。ヘロヘロのぐちゃぐちゃになりながらも、酒を飲む。自分を保つ為に必要だったのでしょうね。瓦版から始まり、お園と主人で作ってきた嘘なのに、最後に全てを背負わされたのはお園だけ。
最後の「みーんな嘘っぱちだよ…」という独白も聞いていて凄く苦しくて。強い女として語ってきた亀勇を、本当は「寂しくて、悲しくて、心細くて、1人で死んでしまったのさ…」と思い返すお園。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

藤吉(薮宏太)


・薮くんについて
私がこれまで見てきた薮くん演じるキャラクターは、みんななんだかんだハッピーエンドを迎える子達でした。だから、今回はどうなるのだろうか?どんな姿を見られるのか??と期待に胸を膨らませて観劇しました。
結果、薮くんの演技力にだいぶ心を揺さぶられました。セリフに想いがこもっていて、凄かったですね。

特に、1幕の最後の亀遊と抱き合うシーン・3幕の亀遊を想ってお園と語らうシーンは凄く心を揺さぶられました。思わず彼らと一緒に涙を流してしまうくらいに、藤吉を感じさせてくれましたね。
それから、イルウスの「差別は許せない!」という件。ここの藤吉の通訳の動きや声量、とても凄くて。勢いもあって、迫力満点でした。

・藤吉について
岩亀楼で通訳を生業にしている青年。登場シーンから、誠実で真面目そうな雰囲気が溢れる人物でしたね。あの時代であれだけ英語を理解して話せるのだから、真面目で勤勉な人物だったのだろうと思います。

そんな藤吉ですが、密かに亀遊の事を想っていて。けれど、あんなにも想っているのに亀遊を身請けする程の金も作れないし、自分には捨てきれない夢もあって。
そんな中で、本当は言いたくなんてないけれど、仕事だからとやむを得ず通訳をしなくてはならなくて。とても苦しそうな表情をしていましたね。イルウスの通訳を終え、「ちくしょう!!」と叫ぶ藤吉。時代ゆえとはわかりつつも、とにかくやるせない…

主人とお園によって嘘で塗り固められていってしまう亀遊の死。けれど、それが逆に藤吉にとっては「肩の荷がおりた気がする」と感じられて。「自分が殺したのも同然だった」という罪悪感から逃れられた気もして。
亀遊が亡くなってから、そんな気持ちをずっと抱えて苦しみながら生きていた藤吉からすれば、確かに瓦版と2人の作り出した「ねじ曲げられた嘘」は救いだったのかもしれませんね。
藤吉はきっともう耐えきれなかったのでしょう。「私が殺したんじゃない!!」とねじ曲げられた嘘を、自分の中に真実に塗り替えて。
藤吉は自分の心を救うためにこうやったけれど。でもね、お園さんは商売なんだよ。アメリカに渡るにせよ、藤吉にはこんな風には思わないでほしかったなと感じてしまいました…

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

亀遊(美村里江)


・美村さんについて
舞台中はとにかく美しくて、品のある女優さんでした。本当に、ゾッとするくらい美しい人だなと感じるくらいに。
けれどカーテンコールで幕が上がれば、大変可愛らしい笑顔で客席へ向かってお手振りをしていて。あまりの可愛らしさにキュンとしてしまいました…!本当に可愛らしい…♡

・亀遊について
自分に光を見せてくれた藤吉へ想いを寄せる亀遊。けれど、自分は借金塗れの花魁で、相手は岩亀楼お抱えの通訳で。自分たちの力ではどうにもならない状況に、お互いに諦める選択の他はなくて。見ていてとても苦しくなる場面が多かったですね。お園さんに教えてもらい、2人で同じ茶碗を使う時に音を鳴らした時の悲痛な表情。胸が締め付けられるような思いでした。
藤吉に想いを寄せながらも、借金塗れで逃げ出すことも出来ず、病が良くなれば花魁としての仕事もこなさなければならない亀遊。どうしようもなく悲しくて。あのシーンはもう、涙がぽたぽた零れてしまいました。

イルウスに見初められたシーンでは、想いを寄せる藤吉に、彼の言葉ではない人の言葉で愛の言葉を伝えられて。一体どんなに悲しくて苦しい気持ちだったのだろうと思うと、胸が痛くなってしまいますね… 藤吉も仕事ですから仕方ないとはいえ、やるせなくて仕方ありませんね…

亀遊はもうどうしようもなくて、絶望して、きっと死を選んでしまったのでしょうね。想いを寄せる藤吉に仕事とは言えあのような事を言われて、更に自分は嫌いな異人に買われようとしていて。もうどうしようもなかったのでしょうね。この時の亀遊の気持ちを思うと、胸が痛くて痛くて…😢

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

イルウス(前川泰之)


・前川さんについて
思った以上に外国人みが強くて、初見時は正直かなりびっくりしました😌💭
イルウスの商売における気さくな人柄を持ちつつも、お金で物事を解決する強引さや勢いも兼ね備えた演技。
登場シーンこそ短いものの、圧倒的な存在感を放つキャラクターでした。私のお気に入りのセリフは、「ワタシ カイマス アナタ ウリマス」です。言ってることはまあまあ最低なのですが、イントネーションが凄くすきで頭にめちゃくちゃ残っちゃうんですよね🤣

・イルウスについて
アメリカからやってきた商人、イルウス。序盤は気さくな感じを出していましたが、亀遊に見惚れてからは特に態度が一変。かなり強引で、自分の思い通りにならない事が気に食わない性格なのが出てしまっていましたね。
そういえば、亀遊が自決したあとに引き合いの間に取り残されていましたが、イルウスには一体どういった説明をしたのでしょうか…。凄く気になる😵‍💫

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

岩亀楼の主人(風間杜夫)


・風間さんについて
風間さんのベテラン演技力にも、ぐっと物語に引き込まれました。特に大竹しのぶさんとのポンポンと繰り返される、息のあった掛け合いも見ていて驚きました。
重たいストーリーの中でも会場で笑いが起こっていたのは、きっとお二人の演技力あってこそなのでしょうね。

・主人について
情の欠片もなく、イルウスに亀遊を売っぱらおうとしていて、とにかく商売最優先な人物でしたね。けれど愛嬌や普段は隠している情もあったりして。完全には憎めない人物でしたね。
「やすいものを高くは売りません!」と言った直後でも、金になると判断すれば大金をふっかけてくるところもなかなかにずる賢い。あんなに異人差別をしてたのに、大金が手に入るとなると態度は一転。流石の商人ですね…😞

そして、亀遊が亡くなってから瓦版が出て、その噂に恐れつつも便乗する主人。お園のことも使い、瓦版の情報に更に嘘を重ねていきます。店を守るため、商いを続けるためとはいえ、ここが全ての始まりでしたね…

けれどこの主人、意外と部下のことを見ているんですよね。ここが自分的には正直びっくりしてしまって。損得勘定に重きを置いて、商売には情を持ち込まないようにしているだけなんだなと感じました。
アメリカに旅立とうとする藤吉に向かって、「気をつけて行ってこい!」と声をかけたりもして。藤吉がアメリカに行きたいのも見通していたのですね。まあでも、この状況ならば早めに通訳は切った方が良いという気持ちもあったのでしょうが…。
あと、唐人口の遊女達に危険が及ぶ事を心配して避難させてやるところとか。攘夷志士達に詰め寄られても逃げることなく、自分が店主だと名乗りを上げたりと。意外ときっちりした人なんですよねぇ…🤔💭

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

その他


・大橋先生の門下生たちについて
亡き大橋先生を偲ぶ為に集まった志士たち。
私が特に注目して見ていたのが、舞台に向かって左側の真ん中に座っていた小山という人物でした。

攘夷女郎の話が出た時から、彼だけ妙に仕草が怪しい。事の顛末を全てを分かっていて、いつこの芸者がボロを出すのかを見て楽しんでいるような感じがしました。お園の話に、時折ニヤついたりもしていたので。
けれどこの方、他の志士と違ってとても落ち着いていてかなり温厚な方でしたね。中にはお園を殺そうとする者もいましたし。パニック状態のお園に、「落ち着いて話をするんだよ」「この女が怯えるじゃないか」と声をかけてやったりと。

結局は話がまとまらなくて、「女子供の話を理で詰めても仕方ない」と止められてしまうのですが…。こういう言葉の端々にも、女性が当時は弱い立場であったことが強く感じられますよね…
あとあの、なんであの偉いおじさんは最後に笑いながら出ていったんですかね。マジで誰か教えてください🥺

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?