Math Campが辛かった話

渡米して約1ヶ月が経ちました。何をしていたかというと、数学をしていました。想像以上に辛かったので、思い出としてまとめようと思います。

はじめに

この夏からカリフォルニア大学バークレー校(以下、バークレー)の経済学PhDコースに入学したものです。行動経済学や応用ミクロ経済学に関心があります。
特に有用なことを語るわけではないので、愚痴だと思ってご覧いただけますと幸いです。
入学までに関する記事は、経済セミナー様に掲載させていただいた、社会人の米国経済学Ph.D.受験記〜出願準備編〜がありますので、そちらをご覧ください。
なお、あくまで個人の意見であり、所属機関等の代表的意見ではないことにご留意ください。

筆者について

前提として、自分は数学が苦手です。試験などでは、かろうじて良い成績を取れていましたが、いつも周りに助けられていました。
進学前に、実解析と線形代数の授業は受講しており、出国直前に測度論の授業を聴講していましたが、数学の授業はその程度しか取っていません。

Math Campとは

Math Campに馴染みがない方もいると思うので、Math Campについて軽く説明します。名前の通り数学をするのですが、なぜこんなものがあるのかというと、経済学では、学部レベルと大学院レベルで用いる数学にかなりの差があり、また、個人間でも数学の知識にはかなりばらつきがあるので、そのギャップを埋めるために、授業が始まる前にみんなで数学をやろうという話です。大学にもよりますが、基本的には、経済学で用いる数学(実解析、集合位相論、線形代数など)を短期間でカバーしていくという形です。

バークレーでのMath Camp

バークレーのMath Campは、3週間授業を受け、4週目に試験という形でした。月曜から金曜まで毎日9-12時で授業、13-15時でTAセッションで、TAセッションでは、授業の内容をおさらいしつつ、演習などをすることが多かったです。カバー範囲は、ざっくり言うと、実解析、集合位相論、線形代数、微積分、不動点定理、微分方程式でした。興味がある方は、Chris Shannon教授のHPに全ての講義資料があるので、ご参照ください。
以下で詳しく触れますが、同期の話を聞いている感じだと、バークレーのMath Campは周りの大学と比べてもかなりきついようです。内容に関しては分かりませんが、宿題の量、試験の有無から見て、あながち間違いではないのかなと個人的にも思っています。
評価方式としては、宿題が10%、Final examが90%でした。

辛かったこと

授業時間が長い

まず、朝9時から3時間も数学したくないですね。バークレーは朝が結構寒いので、起きるのが辛かったです。また、物価が高くてキャンパス内でご飯を買えたものじゃないので(ブリトーみたいなのを1つ頼むだけで1500円くらいします)、早起きして朝ごはんと昼ごはんを作るのも面倒でした。毎日トーストを焼いて食べていましたが、そのせいで口内がただれ続けてました。

授業がしんどい

辛かったです。全く聞いたことないというトピックはそこまで多くなかったですが、講義のスピードと内容が今まで受けてきた授業と比べ物にならないレベルでした。特にキツかったのは、自分が今まで受講してきた数学の授業は、全てユークリッド空間上でのお話でしたが、バークレーの授業は全て一般化された距離空間でのお話だったので、勉強にはなりましたが、難しかったです。すぐ一般化するのは嫌いです。

Waiveしたのに、、、

バークレーでは、授業の開始前に事前調査があり、Math Campと同等の授業を過去受講していれば、試験や宿題は免除で、聴講での参加が許されていました。私も試しに過去の授業を伝えたら、無事免除 (Waive) できたのですが、Visaの関係で、入国するには授業を取る必要があったので、結局宿題も試験も出す羽目になりました。悲しい。

宿題がさらにしんどい

本当に辛かったです。授業だけならいいものの、宿題を3日に1回提出しなければならず、さらに小問を入れると毎回10-20問近くあるので地獄でした。
毎年一部似たような内容で、公式に一部解答もアップロードされているため、参考にすることができるのですが、2020, 2021年はコロナ禍でオンライン開催だったこともあり、直近2年分だけ解答がなく、ほぼ全て自力で解くしかなかったのも辛かった原因です。

試験はしなくていいでしょ

15日間で宿題を計6回提出しなくちゃいけないのに、試験もあるって鬼畜すぎませんか?最後の宿題の提出期限が月曜の23:59なのに、次の日の朝9時から試験で泣きました。私の場合は、合格するかどうかだけだったので、比較的気は楽でしたが、それでも試験のプレッシャーはいつの日も苦しいです。

英語もしんどい

悲しい事実ですが、私は英語もできません。幸いなことに、教授の英語は聞き取りやすかったのでまだ助かりましたが、生徒から出る質問はほぼ聞き取れませんでした。英語って難しいですね。
また、実解析は英語で授業を受けていましたが、線形代数は日本語でしか授業を受けたことがなかったので、日本語英語間の対応関係を理解するのに苦労しました。同型写像がisomorphismとか知らねえだろ。もっと同型っぽさがある英語にしてほしかった。

入国後の手続きなど、やることが多い

これは反省点ですが、もっと早く入国しておけばよかったです。大学の寮が高い・遠い・汚い・治安が悪いというフルコースだったため、大学の近くに家を借りたのですが、家具なしで、数学をやりながら家具などを注文したり組み立てたりしなければならなかったので、アホでした。
また、銀行口座の開設や、ソーシャルセキュリティナンバーの申請、税関連など、入国後の諸手続きが大量にあったので、数学の時間が十分に取れず、結果、睡眠時間が削られるという最悪のループに陥っていました。中盤に一度、辛すぎて、数式を見ると手が震えて視界が歪むという初めての経験をしたので、かなりギリギリの状況だったんだと思います。睡眠を十分に取ったら回復したので、やはり睡眠は大事ですね。

おわりに 

ここまで愚痴を言い続けてきましたが、実際かなり勉強になりました。生活自体も楽しく過ごしています。
ただ、当分は数式を見たくないですね。
先輩たちの意見によると、Math Campが一番辛いらしいので、ここから1年間のコアコースはもう少し優しいことに期待します。

ここから5, 6年PhD生活を送るので、気が向いたタイミングで、記念としてまた何かまとめられたら良いなと思っています。

拙い長文にお付き合いいただきありがとうございました。
今後も温かい目で見守っていただけると嬉しいです。

では。

試験結果 (2022/08/23追記)

試験結果が返ってきました。
165点満点で、分布は以下の通りでした。
退学まではいってないですが、70点未満の2人に関しては、コアコースは来年取れと言われていますね。恐ろしすぎます。
先輩方から、1, 2問目は簡単で、それさえ取れれば問題なく合格できると聞いていましたが、1, 2問目を完答しても45点なので、全然問題ありでしたね。。。

気になる(誰も気にしていない)私の点数ですが、以下の通りなんとか合格することができました!
周りの友人からここでコケてこそのお前だろ、と言われていましたが、実際めちゃくちゃ勉強しました。
とはいえ、予想よりはるかに高い点だったので驚きました。分からない部分もてきとうに書いたらかなり部分点が入ったので、やはり日本人は試験慣れしてるんだなと。
とはいえ、生き残れて安心です。精神は削り取られましたが、、、

Chris Shannon教授には許可を得たので、今年のFinal examも貼っておきます。もし興味があれば、トライしてみてください。
再掲ですが、過去のmath campについては、Chris Shannon教授のHPをご参照ください。

それでは!

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