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叱らニアン

骨の髄まで叱られそうになった時にだけ、それなりの仲裁役を引き受けてくれる。しかし一応れっきとしたポメラニアンだ。だからどこまで日本語を理解しているのか、実は定かでない。その点がコ〇ペンちゃんとは異なっているのかもしれない。

私だって、本当は褒めラ〇アンで書きたかったんだ。しかし著作権に骨の髄まで叱られそうなので、言い訳はここまでにしておく。私は彼らの激怒に怯えている。

仲裁の効果を信じすぎてはいけない。ポメラニアン誰にだってミスはあるものだ。この間私がお世話になった、新人𠮟らニアンくんもそうだった。

彼に災難が降りかかったのは、私がとある駅で歩きスマホの女性とぶつかってしまい、彼女のスマホ画面がバッキバキに割れたからだった。
なぜか彼女は私に向かって激怒しかかった。しかしその瞬間、どこからともなく新人𠮟らニアンくんが現れたのだった。

どうして新人って分かったかって?首輪に初心者マーク(♂)がついていたから。そのマークを見て私は救いとともに絶望も感じた。彼も私もたぶんタダじゃすまない。

だって彼は怯えていたから。

彼女は𠮟らニアンなど見向きもせず、彼女なりの言い分をまくし立てるばかりだった。

「ねえ、当然弁償してくれるんでしょう?」

「しかし…𠮟らニアンも来たことですし、いったんここは彼に任せてみては?」
私は彼に目を向ける。𠮟らニアンはぶるぶる震えている。

「こんな奴どうでも良いじゃない。こいつが代わりに何をしてくれるっていうの?ただ変なタイミングで現れて、馬鹿に場を和ませようとするだけじゃないの。獣はタダの獣よ。」

あろうことか彼女は𠮟らニアンの身体を足で小突こうとした。私が慌ててそれを止めると、彼女はバランスをくずして転んでしまった。

最悪の事態かもしれない。私がとっさに心配したのは、彼女よりも彼のほうだった。
彼はもっとぶるぶる震えていた。駅の騒めきに、なにか四肢の震えはもう耐えられないようだった。

私は彼のうるんだ眼を見ながら、
「𠮟らニアンくん。突然すぎて身もフタもないけどさ、私はね、どんな君でも良い。どんな君でも良いからね、すべての君を愛してる。もう心配ないよ。」
私は彼を抱いた。鼓動が思いのほか強かった。日本語が通じたのかは分からない。

私は然るべきスマホの修理費を彼女の言い値で支払った。
𠮟らニアンは、骨の髄まで叱られそうになった時にだけ、それなりの仲裁役を引き受けてくれる。

立派なポメラニアンだ。

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