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ユメラニアン

本当に、夢を見るのを忘れられるのなら、人生はどんなに楽だろう。
名のある職業になれなかった学生。
名のある歌手になれなかった事務員。
名のある詩人になれなかった警備員。

夢や償い、希望や後悔。
そのようなものを思い出して数えるのは、実にいじらしい作業だ。
そんな時、私はユメラニアンと化している。
そして、濁ったユメラニアンは、濁った思念を吐き出す。

雑念から解き放たれて、澄んだ夢を見れるのならと、何度願ったことか。
神さまのいたずらか、
私はどうしても澄んだユメラニアンになることはできなかった。
私は、名のある職業になれなかった流れ者。
流れ者にだって、夢や償い、希望や後悔はある。
そしてそれらは流れ者にとってとても貴重がゆえに、
私は濁ったユメラニアンなのかもしれない。

せつなく〇ローワークの仮登録を進める私は、
吐き出された濁った思念をよく噛んで飲み込んで、
自分によく言い聞かせている――いつまでも、流れ者じゃいられない。

名のあるポメラニアンになれなかったポメラニアン。
そのような存在を思い出してふと唱えるのは、実にいじらしい作業だ。
名がなくたって、ポメラニアンがポメラニアンであるように、
我々も時には澄んだ名を忘れて、
濁った霧の中で、たとえばこの宇宙に踊れはしないものだろうか。

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