ポメテンバー

風を切るように走るポメラニアン。
季節は9月で、天気も気温も申し分ないセプテンバー。
むりやり略してポメテンバー。天高くポメ走る秋だ。

夕暮れの川沿いをポメラニアンと一緒に散歩する私。
夏のなごりにさみしくなる私をさしおいて、彼はポメラニアン専用イヤホンでアース・ウィンド・アンド・ファイアーの「セプテンバー」を聴いている。
こんな暑さが惜しくなる日には、と彼は散歩の前にイヤホンの装着をせがんできたのだった。

桜か何かの落ち葉がかさかさとやわらかい風に揺れ動いている。
彼のサマーカットも見納めか、と思うと、季節が一つずしりと重たくずれ込む音がどこからか聴こえた気がして、私は少し辺りを見回し、ひとりうろたえた。
秋風にまたさみしくなった。

私も「セプテンバー」を聴くことにした。
彼のイヤホンと私のイヤホンが同期し、ふたり同じテンポでいることに気づきはじめた。
秋風はとたんに、つかの間その動きを止めて、夏が私たちの余地や余白を埋めていった。


彼を、死ぬまで愛し続けよう、
なぜかそんな決心をさせる三分半の音楽の間だった。

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