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【龍騎】初見感想——真司くんと蓮を忘れないでね/現パロください(6000字)


※アフェリエイトじゃないよ


2023年に、「仮面ライダー龍騎」全50話を完走した。

視聴済みの作品(アマゾンズ、オーズ、W、電王)は全て一気見だったので、一週間ごとに更新される配信を追うのは初めてだった。「20年前の作品の続きをやきもきしながら待つ」という体験は結構貴重だ。

(途中ぽつぽつと感想も書いた)

最終話まで見た上で、間違いなく「龍騎」は傑作だと確信している。ここから全話を通した感想を書いていこうと思う。




はじめに:龍騎フォロワーの元ネタとして


「特定世代の人間(クリエイター含む)の心に深く刻み込まれた作品」というのが、龍騎の視聴前の印象だ。
「正義の味方である仮面ライダー同士が戦う」というのは非常に斬新な試みだっただろうし、「群像劇のバトルロワイヤル物」として多くのフォロワーを生み出した作品でもあるだろう。私も「龍騎に影響を受けた」と明言された、あるいは明言こそないものの、そういった評価を受けている作品を見てきた。なので、いよいよ大元に触れられるのだという興奮があった。

TV版全話とTVスペシャルを見た今、意外とエグくなかったかも……?と思いがどこかにある。

死亡シーンは最終盤以外泡になって消えるような描き方だし「子供向け作品でこんな展開をするなんて!」という点も、2020年代の今ではもっと過激な描写やエグい話があったりするよな……と感じたりもするのだ(流石に浅倉クラスの悪役ライダーは滅多に見ないけど)。もちろんそういった描写は後続だからこその特徴であり、それを20年も前にやった龍騎の先進性は揺るがない。

しかし、龍騎は決して「当時は凄かったんだね」で終わる作品ではない。群像劇故の同時に複数の物語を並行して進めるワクワク感や、そんな構成でも受け手が混乱せず見られる脚本の巧みさ、何より50話かけて登場人物の人間的な魅力や生き様を描き抜いた点は色褪せない魅力だと思う。


迷った者、願った者

真司がこの物語の主人公でよかった
様々なライダーが登場したが、龍騎という作品のテーマを最も色濃く反映していたのは真司と蓮だろう。蓮は最初から恵理の為に戦い続けていた。物語の中で変わった部分もあったが、最後の最後まで信念を貫いていた。
対して真司は、戦い肯定派に翻意するなど考えが定まらない部分があった。でも、真司が最後まで思考停止したり決めつけたりせず迷い続けてくれたことが嬉しかった。彼のもがきが周囲の人間を変えたことは間違いないし、甘い解釈だとしても、結末は真司が士郎に少しでも影響を与えた結果の世界であってほしいと、私は願っている。(ラストは「優衣の説得でループを諦めた士郎が世界を少し改変して巻き戻した」と捉えた)


たった一度与えられた いのちはチャンスだから

49~50話で描かれたのは、ライダーバトルというオブラートで包まれていない死だった。真司は生々しく血を流し、北岡は病死、浅倉は一般人である警官達に殺される。最終話は淡々と各々の命が尽きるシーンが続き、全員をすっかり好きになっていたので辛いものがあった。特に、ライダーに触れる前から真司が死ぬとは知っていたが、まさかライダーバトルではなくモンスターの一撃で死ぬとは思わず唖然とした。しかし、これは彼らが人間として精一杯生き抜いた終着点だ。だからこれでいいのだろう。



記事のサムネは、商店街で衝動的に買った龍騎のソフビだ。当時のおもちゃの中古品でプレミアがついているわけではない。こうした立体物を買うのは初めてで、正直どうすればいいかわからず、結局テレビの前にとりあえず置いている。コンテンツのグッズを買う経験がほとんど無かった人間が、思い立ってこうして購入するくらいには衝撃を受けた。

この半年間、心も痛めたが、何より夢中になれた作品だった。当時「真司くんと蓮を忘れないでね」というメッセージを含んだCMが流れたらしい。真司と蓮だけでなく、戦いに参加したライダーも、ライダーでない人たちも、「龍騎」という作品の中で命を燃やしたことを私は忘れない。












っっていう、上記の感想は
かなり精神が落ち着いてからまとめました。

最終回直後はとてもこんなこと考えられませんでした。


40話~最終話付近で喚いていた感想といえば

「龍騎の現パロ無いか?😭😭😭😭😭」

「とかく辛い」

「ちいかわにならないと心を守れない」

でした。



「真司がバカだと思う人~」って何!!?

もう結構仲いいじゃん!
殺しあうことないじゃん!!

という思いが「現パロ」という言葉に集約されたんですね~。2002年も現代だろ。(ここでの現パロは「本編の業が無い状態、かつ関係値は本編と同様」くらいの意味です)




登場人物一人ひとりに触れると何文字になるかわからないので辞めますが(触れたい気持ちはある)北岡先生、めちゃくちゃ良かった……。

ゾルダの馬鹿みたいな威力のファイナルベントが好きと言うのもあるのですが、吾郎ちゃんと先生のでっけぇ信頼関係にボコボコにされました。どこかの回で吾郎ちゃんが「先生なら大丈夫ですよ」的なことを当然のように言った時は、誇張じゃなく体温が上がりすぎて暖房止めた。初登場時の印象は「いけすかない奴だな……」だったのに。これに関してはライダーキャラの10割がそう

令子さんを口説いたのは社交辞令(?)かと思いきや、かなり本気だったのも憎めないところですね。MONSTER(浦沢直樹)の「来ない人を待ち続けるシーン」が幼少期から深く心に刺さっているので、最終話のレストランのシーンはうめき声を上げながら見ていました。
一本の白い薔薇の花言葉って「一目惚れ」らしいんですよね……。レストランの方は誰が置いたかわからないけど、そこに秘められた想いを考えるのも、一興かもしれませんね……。

全話通して北岡先生のエピソードが一番私の気を狂わせたのですが、最終話があまりに美しかったのでもう自分がわざわざ語ることないなと思ってしまいました。強えわ、こいつ(公式)強え。



浅倉は、噂以上に凶暴なキャラクターで驚きました。「財布ないわ」って言って強盗とかしてるのかなと思っていたらシンプルな「暴」しか出てこねー! でも、前の感想でも書きましたが弟を呼び出すための話が嘘だったのは手を叩いて喜びました。流石に浅倉が今のようになったのは家庭環境のせいもあるっぽいので、完全に生まれた時から怪物とは言い切れないのでしょうが……。
というか、最終回後の世界でも放火した過去はそのままだったらレクター化は避けられないような気がするけどどうなんだ。

浅倉に関しては、某所で見た素晴らしい考察に納得してしまったので、あまり自分では彼の人格の深掘りは出来てないかなぁというのが正直なところです。ただ好きなキャラなのは間違いなく……


台詞の打率が異常に高い男でしたね……。



浅倉、達磨一家の頭だった!?
・車のボンネットに乗っている
・祭りに興味を示す


余談なのですが「食うか?」と、そろきゃん△で食事を士郎に差し出したシーンは流石に「あれ……虚淵、『やった』か?」と狼狽えました。私はまどマギやFate/zeroを見てから龍騎を見るという逆転状態だったのですが、ところどころで虚淵くん!?と感じるシーンがありましたね。まどマギ最終回の展開も……ちょっと……やってない!? まあ多感な時期に龍騎を見たら🤯🔥🔥🔥🧠🔥🔥🔥←こうなるでしょうが……。



香川教授もいいよね〜〜〜〜。
後半戦に入ってから、第三勢力として一気に3人が投下され「おいおい、今から新キャラ入れてどうすんだよ」と訝しんでいたのですが、杞憂でした。龍騎、たった数話で登場と退場を済ませるライダーもいるのに個々のキャラを立てて感情移入させるのが上手すぎますよ!? 手塚とか、初めは正直そんなにノれてなかったのですが、22話〜23話で完全に落ちてしまいました。

香川教授が家族との食事に東條を呼ぶシーンが好きです。子供が似顔絵を出すところで、教授が一瞬破顔してから行儀のいい微笑に戻るんですよ!!!! 短い時間なんですけど効果は絶大で思わず巻き戻しました(おい……その画面巻き戻せるか?)。
あのシーンは「家族を大切にしている」ことがひしひしと伝わってくるゆえに、後でその家族すら犠牲にする覚悟を見せる場面が効くんですよねぇ……。そこからの真司がマジでかっこいいのもポイントだ!!



だから香川教授が言いたかったことはそういうことなんだぞ東條‼️
共感できる要素はあんまり無かったのですが、彼の動向からは常に目が離せませんでした。ライダーバトル後半戦の面白さの、多くの部分を担った盛り上げ役でした。しっかり数えてませんが、ライダーのキル数も浅倉に次いで多いのではないでしょうか? まあ全員身内なんだが……。
スタイリングか演技のおかげかわからないけど、容貌も素晴らしい。この研究室の床で寝泊まりしてそうな目!
仲村さんや香川教授を殺した時は、ぶっ飛んだ理論だけど、まあこういうやつなんだなで気持ちを宥められたのですが、佐野と仲良くなる→殺したらもっと強くなれるかも……という思考回路は完全に常軌を逸していて背筋が凍りましたね。もしかしたら佐野との交流で変わるのかも、と期待していただけに余計に……。もう仲間を2人も殺した後で後戻りできず、英雄になるという目的に縋るしかなかったのかもしれません。
しかし、最後に彼が子供を庇ったのは香川教授と家族の姿を思い出したからでしょう。悲しい結末になってしまったとはいえ、教授の教えは確かに東條に届いていたのだと思います。



いろいろな意味で最も悲惨な最期を遂げたのは佐野かな……。個人の感想として一言で言うと、彼は空虚な男という印象でした。父親の訃報を聞いた時の態度がそれを表しているでしょう。ただ、父の死が引き起こした環境の変化によって、佐野も変わっていく可能性があったのかもしれません。蓮じゃないけど「生きてさえいれば」どうにでもなるのですから。しかし、彼にはそんな変化すら許されなかった。何が悪かったのかと言えば……契約書をよく読まずに契約したことだったのかな……。まあ、士郎がまともに説明をするかというと微妙ですけど。「ガラスの幸福」の士郎、なんか可愛くないキュウベェみたいだったね。
カスの感想だと、明るく東條や真司を肯定したり褒めたりする様子(演技混じりだとしても)を見て「佐野ってオタクに優しいギャルか……?」と、妄言を吐いていた時期がありました。オタクくんさぁ〜(言ってない)



あと編集長がめちゃくちゃ好きで……………………………………。

はっきりとは言語化できないのですが、俳優さんの演技の感じが好きで、最初からかなり気に入っていたキャラです。序盤は死なないでくれ〜って祈っていました。というかコメディリリーフでいざという時は主人公のメンターっていう役回りのキャラが嫌いなやついる!?
あ〜、OREジャーナルで大学生のバイトとしてしばらく働いた後、編集長に告って年齢差を理由に断られてぇ〜。それ以降微妙な空気になって突然バイト辞めたい(は?職場に迷惑をかけるな😡)

最終回での狂言回し抜擢も、ニュースサイトの記者という役割に合っていて好みでした。


本作はライダーに変身する人物以外の描き方が上手くて、おばさん(沙奈子さん)も最終的にああいうキャラクターになるとは思わず驚きました。
当初は「ああクスクシエみたいな感じね」という印象で、ライダーの陣営のひとつを運営する、登場人物の接点を作る舞台装置、または賑やかしとして捉えてしまっていました。実際ライダーの就職先になってた時期あったしな……。
しかし、優衣に事実を隠そうとしたり、心境を吐露するシーンが増えたことで彼女の「人間」としての地が見え、印象は変化していきました。それがピークに達したのが誕生日ケーキのシーンで、薄々優衣が消滅することをわかっていたのだと判明した時は切なくてたまらなくなりました。

最終回後の世界の彼女、本編より元気ないんですよね……優衣たちがいないから……他のキャラは割といいところに収まったのになんか…………!! 毎日紅茶飲みに行くからな……!!



真司と蓮

真司と蓮という——群像劇とはいえダブル主人公と言っても良いであろう——2人の人間については、色々まとまっていない感想はあります。

・.お互いに真司・優衣・蓮がいてよかったね…
・ナイトのデザインがオトコノコ特攻すぎる
・優衣の監禁に対するスタンスの違いが示唆的
・本気で真司と蓮がぶつかるシーンで「ワァ……ァ……😭」になっちゃった

など……。しかし、49話と最終話の火力が凄すぎて、もっと言うと蓮の表情が凄すぎて何も考えられずにいます。

49話では、真司が自分がやりたい願いを見つけた直後に、蓮の前で命を落とします。TVスペシャル版の結末と対照的なシーンなのですが、真司は蓮に俺の代わりに戦いを……とか言わないんだね。「生きろ」なんだね……………………😭😭😭 蓮にも願いがあるからな……。蓮が今までにないくらい感情を露わにしてから、真司が事切れたのを悟った際の茫然とした顔が辛すぎる。


こんなんルーベンスだろ…


さらに、最終話のサムネにもなっているように「ライターバトルで死んだ者が生きている世界」で真司と蓮は顔を合わせるわけです。真司はまあ、不機嫌+訝しげといった空気ですが、蓮の表情には様々な思いがないまぜになっているように見えます。

これは一次情報に当たってないのでインターネット・デマの可能性がありますが…………「蓮は前回の戦いの記憶が残ってると思って演技して」という指導があったらしいじゃないですか。

前の世界で時には本気で戦ったり色々あったりしてさ!! 「お前は生きろ」って言って死んでいった男が目の前にいてさぁ!!


でもそんな前世みたいな話しても仕方ないからどけって言って去るしライダーバトルも無いからもう関わる理由もないんですよ!!!!


でも……一旦顔伏せて去る前にもう1回真司のこと見てさぁ!!!!!!


お前それどんな気持ちで…………


あああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!



RAD WINPS



なんつってる間に5700文字ですよ



ここまで読んでくださってありがとうございます。
しかし、私は配信されたTV本編とTVスペシャル版しか見ていません。TVスペシャル版なんてマジで誰!?みたいな人が出てきたので、彼ら(彼女ら)の詳細を知る為には映画を見る必要があるのですが…………。


劇場版「仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL」は、劇場公開当時TVシリーズが放送中であったにも関わらず、最終章と位置付けられ、先行してエンディングが描かれ話題を呼び起こした作品。結果的にTVシリーズは映画とは異なる結末を辿り、龍騎には複数のラストが存在します。それはまさに、戦いの果てに正しい答えなど存在せずラストは観る者の心にこそ委ねられる、とも言わんばかりです。ファンならずとも見逃せません。

東映公式サイト





………………


ここか、祭りの会場は……




(おわり)





画像:写真素材ぱくたそ
©石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映 ©東映・東映ビデオ・石森プロ ©石森プロ・東映


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