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冬の北海道で野営した話①

 まぁタイトル通りです。
 
 わざわざ。真冬に。北海道で。野営しながら1周とかいう「…発作的な病気?」とか扱い受けつつなぜかやっちゃった話です。

 昨年からゆるキャン△パワーもあってか、冬でもアウトドアやキャンプと業界的にはなかなかよい雰囲気だったんですが、東北は冬なんてもう全部雪なんでまったりキャンプとか結構な熟練者か装備でないとちょっと…。
 手持ちの装備は決して厳寒期の北海道で十分といわれるレベルでもなく、雪に対するスキルも知識先行で経験が浅く、それでも憧れて冬の北海道に飛び込んだ2018年最初の小話です。長くなるので記事は何分割かしますのであしからず。

 1.冬の北海道にあえて行く
 2.装備と行程
 3.帯広
 3-1.初日、帯広

 3-2.冬だもの
 3-3.ちょっとした出会い
 3-4.朝

1.冬の北海道にあえて行く

 2018年の冬はたまたま仕事の関係で函館にてそれなりの期間を過ごすことがわかっていた。
 函館へ向かう前から、すでに休みをまとめて、厳寒期の北海道を見て回るという計画はぼんやりとだが頭にあった。 そんなわけで荷物には仕事へ向かうにはむしろ邪魔なほど野営道具やら釣具やらが満載されていた。
 
 もともと西日本出身の私は北国で過ごす初めての冬であり、気候から釣れる魚まであまり触れたことが少ない未知に満ちた最高のタイミングだった。
 まぁ釣りに関してはタックルも流用ばかりで根魚意外たいして釣りもままならなかったのだが。

 函館での勤務の傍ら、具体的に北海道を回る手段を検討する。
 当然冬の北海道。チャリンコなんぞ論外である。徒歩で回るほどの超長期な休みもとれないし、公共交通機関を主にした電撃旅になるのは必然だった。 なんせ1週間そこそこで北海道1周して見てやろうとかいうのだから。

 で、なんでわざわざ1年でももっとも寒くて厳しい1月後半から2月にかけての北海道だったのか。
 北海道といえば寒い。北国、雪国である。であるならやはり北海道を1周でみたいなら、冬に回るのが当然ではないだろうか。 自分で書いていていまいちわからん。
 まぁつまるところほとんど勢いだった。

 結局8日間の休みをフル活用して、公共交通機関+徒歩にて、テント担ぎつつあれこれ見ていく突撃旅企画が完成した。

 

2.装備と行程

 冒頭でも書いたが、装備は決して潤沢ではなかった。
 そもそも北国での冬そのものが初体験であるし、これからあれこれ買おうかというレベルですらあった。
 
 特別冬の北国を想定して買ったものと言えば「シュラフ・マット・ウィンターブーツ」くらいである。
 なおマイナスレベルの気温に耐えるシュラフは北海道一周を考える遙か以前、すでに夏の終わりに買っていた。 仕事で函館ということで機会に恵まれたわけだが、結局は何かしら雪中行軍を目論んでいたのであった。
 マットは少々スペックが怪しかったがAmazonで「なんでこんなに割引入ってんの?」といぶかしみつつ、安さに負けて買った。

 マットはやや妥協したが、シュラフもどちらも名のあるメーカー品である。
 寝てる間の無防備な状態で低体温症その他で死亡というのは避けたかったので、ここに関してはそれなりに予算を割いた。

 ウィンターブーツは雪山モデルではないが、そこまで徒歩中心にならないと考えたので保温性とソールで選んだ。
 その他といえば、折り畳める雪用スコップと、靴やら隙間の雪を落とすブラシ(100均の台所用品)くらいで。
 あとは某有名家具量販チェーンで売られていたフリース素材のブランケットが1000円にしては温かく、袋に詰めて空気を抜くとそれなりにコンパクトだったため、シュラフのインナーとして持って行った。

 それ以外はほぼほぼ持っていた装備のありあわせ。
 テントなんぞ、数年前にAmazonで7000円くらいで買ったソロテントである。
 ダブルウォールとはいえインナーはメッシュで当然3シーズン用。
 事前に青森などでテストはしたが、ふきっさらしでは吹っ飛ぶか耐寒性能がほぼないと考えて、野営の設営場所だけは気を使った。

 

 自転車ネットで外付けなんかもして結構な状態だった。
 なおバックパックはメインとサブを前抱きにして、テント設営後やコインロッカー使用時にはすぐ動けるようにしていた。

 さて、行程の方だが、前回書いた「フリーパスのはなし」でも触れているが、7日間連続。特急もなにも北海道全域乗り放題という「北海道フリーパス」を使用。

 函館を出発し、「函館→帯広→釧路→網走→北見→旭川→稚内→札幌→西海岸→大沼→函館」という想定で大まかな日程を割り振った。
 が特急電車の間隔や、細かいところは徒歩で。というスタイルであり、まぁどっか超駆け足になったり、居すぎたりはあるだろうけどだいたい半時計回りで。という行程にした。
 根室方面は特急の場合、釧路から行って、そのまま網走方面にはいけず、また釧路に一度戻る必要がある路線のため、やや急ぎ足の今回は除外した。非常に残念なのでまた行きたい。もちろん冬に。

 そこそこの装備と謎のやる気をバックパックに詰め込み、1週間ちょいの休みと少ない予算と北海道フリーパスを握りしめて、真冬の北海道へ飛び出した。

3.帯広
 3-1.初日、帯広


 早朝の函館駅は思いのほか混んでいた。
 暖房は入れてあるが、広々とした空間でやはり肌寒いロビーの隅っこに腰掛けてコンビニと改札が開くのをまった。

 北海道フリーパスは特急乗り放題だけでなく、6回まで指定席も使用できる。
 初日の移動は始発から5時間。さすがでっかいどうである。 …いややはりでかすぎる。 当初は特急無しの乗り放題きっぷで旅程を考えていたが、丸1週間電車に乗り続けてようやく1周もできなさそうとよくわかった。本当にでかい。

 5時間のうち、函館から帯広までは、
 函館駅→南千歳駅→帯広駅
 となっており、特急2本となる。 函館からは始発のためまぁ自由席でも窓際に陣取れるだろうと高をくくり、実際問題なく座れた。
 南千歳からの特急は函館駅で事前に指定席を押さえて置いた。そんなに乗ってなかったので自由席でもよかったかもしれないが…(貧乏性)

 ほぼほぼ真っ暗だった車窓が徐々に青くなる。
 釣り人の性質上、日の出というのはどの地域でも見慣れていると思ったが、北海道それは今までみたなかでも圧倒的に「青く」感じた。
 まぁ雪まみれでそこかしこから反射するからかもしれないが。

 早朝からなので爆睡かと思っていたが、思いのほか目がさえる。
 広大な地平線とかを想像していたが、結構山間部ですぐ目の前が斜面だったりトンネルだったりで、個人的には少し残念。

 「これから野宿なんてアホなことしながら北海道見ていけるんだなぁ」なんて感慨を抱いてたらあっという間に帯広へ到着。

 釧路へ急ぐ特急を背に、見知らぬ街帯広駅へ降り立った。

 …のだが、まぁ雪雪雪。
 北海道だもんな!

 見て回ると言っても、ガチガチの観光日程をくんでいるわけでもなく、まずはお昼ご飯とテントを設営する予定だった河川敷を目指して歩いた。

 街中のスピーカーからなんかCMが流れている。北海道の違う街でも遭遇するのだが、街中でCMを音声でガンガン流すのは北海道のローカルスタンダードなのだろうか。

 帯広といえば、豚丼。
 住んでいる知人に聞いた有名店が野営地点に近かったので直行。
 うーーーまーーいーーーぞーーー。
 大盛もなんなく完食。

 ちなみに毎食ご当地の幸をがっつんがっつん食べたいが、予算的な都合により、毎日1食はご当地グルメで贅沢をして、あと2食は自炊とした。
 なお間食はほどほどとした。

 だーれもいないかと思ったら、近所の子供たちが遊ぶようなのか少し整地された河川敷。
 一面雪でまず人が向かわない倒木や雪に埋もれた植木が見える隅っこをやや掘ってテント設営。
 まぁわざわざ見つけてもこんなところくるまいと荷物をがっつり置いて市内観光へと向かった。

3-2.冬だもの

 さてさっそく歩き出したわけで。
 お目当てはおびひろ動物園。いや、動物園とか水族館とか好きなもんで。

 市内を袈裟切りにするように、雪道としてはまぁまぁかかるが、まぁ初日だし動物園だし、急いで駆け込むもんでもないかと徒歩にした。
 ちょっと寄り道でお店にはいったりなんだりしつつ、動物園が入っている緑ヶ丘公園へ。
 雪祭りの準備のようで、そこかしこに制作途中の氷像やら雪像が。
 まだまだ完成には遠いようで、今日しか見れない者としては少し残念だったが、そのままふらふらと動物園へ。

 が、しかし。
 動物園は、もう閉まっていた。

 いやちょっと早い。早すぎる。冬季閉鎖かとおもったが、ゲートに貼ってある張り紙には「11時~14時」というお知らせ。
 まぁ…冬だもんね…。すぐ日が落ちちゃうもんね…。
 そんな16時。少し小高いおびひろ動物園の駐車場からみる夕方の帯広市は薄い朱色に染まっていた。

3-3.ちょっとした出会い

 まぁしかたない。
 仕方なく第2目標地点の地元釣具屋さんと温泉へ向かうことに。
 
 また性懲りもなくテクテクぶらぶら歩きつつ、駅の北側にある釣具屋さんへ。

 入った瞬間。あー好きだわここ。
 北海道らしいトラウトに尖った品揃え。
 「うわぁ、懐かしい。この製品新品で置いてるの初めてみたなぁ」なんてとあるメーカーのルアーを手に取っていると、お店のオバチャンが「そのルアーわかるの?」みたいに話しかけていただけまして。

 このお店、そのルアーメーカーの長と親交が深いらしく、オバチャンもご飯とか行ったりもあるんだとか。
 私にとってはテレビや雑誌の向こう側な人なんですけど、いろんなところでいろんな人の繋がりがあるもんだなぁと。

 また来ます。今度は釣りをしに。とFBとか交換しつつお風呂へ。

 そこで連絡が1件。
 帯広在住の人から。 

 今やすっかりポケモンGoパワーで定着した位置情報ゲームですが、その基礎になったゲームを長らくしてまして。その方達からご飯でもどうかとご一報いただきました。

 今回特に言って回るようなもんでもなかろうと、北海道のゲームメンバーの人には特に何も言わず、普段からよく話してる人達との雑談で、「真冬の北海道で野営してきまーす」くらいしか話してなかったのですが、面白がったメンバーが北海道組にシェアしたようでして。

 こういう行く先々での出会いもまた位置情報ゲームでの楽しみでもあったので、ご一緒させていただくことに。

 やっぱりラーメン!から始まり、その後モスバーガーで延々とおしゃべりを。
 わざわざ数時間かけて会いに来てくれた方もいて、なんともありがたいことです。

 こんな時期にわざわざ野宿なんてクレイジーすぎると言うことで、最後はテントまでついてこられて、一緒に笑いつつ記念撮影。
 私もバカだと思います。えぇ。楽しいけど。

 みんなが帰って、そこらへんの流木をミニたき火台で燃やして暖をとりつつ。
 初日からこんな賑やかになるなんて。
 
 ひとりは好きです。
 みんなと居るのは楽しいけど、やっぱり最後はひとりを選ぶのが私です。

 でもみんながいるから、こうやって予想できなかった楽しい1日となりました。
 出会いは、面白い。

 そんな感じでマイナス7度、就寝。 寒いが、真冬の北海道にしては暖かい。初日にして気温に肌が慣れてきた。 静かな河川敷で、思ったよりすっと意識は落ちた。

3-4.朝

 テントは貧弱なものの、それなりに予算をかけたダウンシュラフは朝まで快眠を提供してくれた。
 昨日補充した水のパックが見事に凍り、バーナー用のガス缶が冷えすぎて火が安定しない。
 夜は寝袋に全部つっこもうと反省。

 ようやくお湯を沸かし、ホットグラノーラとか食べつつ、テントからでると、朝日に輝いた美しい雪原が。
 真っ平らな雪ではなく、表面を撫でた複雑な風の影響で海面の波がそのまま凍り付いたかのような複雑な模様。 朝日と雪波の影で綺麗な色彩となっている。

 体が温まると寝床の撤収。 フライシートの結露はすべて凍っていて、ばっさばっさするだけで落ちるので超楽。
 厳寒期の野営で間違いなく楽なのは結露と戦わなくていいところと一つ学ぶ。

 一つ残らずパッキングすると、ぽっかり長方形の明らかにテントかなにか設置しました」痕。 誰もこないだろうけど。

 今日は釧路へ。
 電車の時間までは余裕があるものの、体感的にはあっという間に駅前へ歩きつく。
 特急がくるまで後少し。 日は昇っているけど当然氷点下。
 駅にはキャリーバックだったりスキー担いだり、この気温でもスーツで立っているビジネスマンだったり。 よく見たら私だけバックパックやな…まぁそうかと白い息を見つめつつ独りごちる。

 私の好きな釣具メーカーのCM、その一節が今日も浮かぶ。

 「さぁ今日は、どんな一日になる?」

 次回へ続きます。

ひいらぎ

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