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Lupus. #2

その狼は声を発することができなかった

満月を臨み、時折行う遠吠えも、虚しく夜空を仰ぐに過ぎなかった

白狼の額には琥珀色に輝く彼女のシェルターがあった。

蜜蝋をハニカム状に重ね繋いで造られた小さな要塞は、雨風を凌ぎ恒温を保つ。主要の4部屋と各部屋とへの行き来がしやすいよう、アーチ状にできていて、外部からのあらゆる衝撃から彼女を守った

目が覚めた時には、アピスは狼の上にいた。
何故狼の上にいるのか、シェルターは誰が造ったものなのか

声を出せない狼に問いかけても、答えを聞くことができないのだ

蜂の姫は心の内を赴くままに唄にした
その唄が彼女にとって最初の唄となった

ヒグチヨハクです。小説「planktos」連載中。よろしくおねがいします。