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小説「planktos」 2021年より執筆開始。 ※場合によって、公開後加筆修正することもあります
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2021年5月の記事一覧

Oenothera. #3

Oenothera. #3

アピスが起きたことを確認した後、狼は夜に咲く花を求めて移動した。
月夜に開く花を求めて。
その香りをたよりに、時には何時間も狼は走った。
今夜は宵待草の咲く草原にたどり着く。

アピスが花の蜜を吸うと一つ、心揺れる景色を見てまた、一節と歌が生まれた。
うたうことで自分が何者であるか、というかけらを反芻できるような気がして、生まれるままに歌にした。

気のせい、かもしれない
歌う度に、あの夢のつづき

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Lupus. #2

Lupus. #2

その狼は声を発することができなかった

満月を臨み、時折行う遠吠えも、虚しく夜空を仰ぐに過ぎなかった

白狼の額には琥珀色に輝く彼女のシェルターがあった。

蜜蝋をハニカム状に重ね繋いで造られた小さな要塞は、雨風を凌ぎ恒温を保つ。主要の4部屋と各部屋とへの行き来がしやすいよう、アーチ状にできていて、外部からのあらゆる衝撃から彼女を守った

目が覚めた時には、アピスは狼の上にいた。
何故狼の上にいる

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