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音楽制作業 OFFICE HIGUCHI 10周年までの道のり#6 〜バカソウル(後編) ブラッシュアップという宿命〜

お世話になっております。代表の樋口太陽です。

前編のエピソードにより、バカソウルという番組の音楽制作に全力を注げる状況ができました。その中で、様々な芸人さんとご一緒させていただきました。

全員を網羅しているわけではありませんが・・・手元にデータが残っている限り、挙げさせて頂きます。(順不同)

ノンスタイル井上さん・COWCOWさん・チョコレートプラネットさん・2700さん・野性爆弾川島さん・渡辺直美さん・ダイノジさん・こりゃめでてーな大江さん・デッカチャンさん・AMEMIYAさん・オリエンタルラジオさん・佐久間一行さん・プー&ムーさん・バッドボーイズ佐田さん・ムーディ勝山さん・ジョイマン高木さん・レイザーラモンRGさん・アップダウン阿部さん・2丁拳銃さん・カラテカ入江さん・ジャングルポケットさん・プラスマイナス岩橋さん・チーモンチョーチュウさん・ハブさん・エハラマサヒロさん・とろサーモン久保田さん・インポッシブルさん・西村ヒロチョさん・ジューシーズさん・トレンディエンジェル斎藤さん・森三中大島さん・田畑藤本さん・カナリアさん・どぶろっくさん・レギュラーさん・ワッキーさん・椿鬼奴さん・イシバシハザマさん・シマッシュレコードさん・LLRさん・マテンロウアントニーさん・デニス植野さん

そうそうたる方々です。しかも、その大半の歌録音は、我が家で行なっておりました。安普請の中野のアパートであれば耐えきれないですが、TVのレギュラー化になってすぐに阿佐ヶ谷の一戸建てに引っ越したおかげで、レコーディングスタジオほどではないですが、騒音も気にせず良い環境で録音を行うことができました。

下の写真は、阿佐ヶ谷のキッチンにて、佐久間一行さんとの一枚です。

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 TV番組用なので、今現在、公に聴けるものはあまり残っていないのですが、当時制作したもので、配信で聴けるものがありました。せっかくなので聴いていただければうれしいです。




バカソウルにおいて自分たちの役割は、すごく幅広いものでした。

・音楽プロデュース
・作曲・編曲
・楽器演奏
・仮歌歌唱
・本番録音のディレクション・エンジニア
・ミックス


これらを、兄と僕で、それぞれ一人完結で行い、レコーディングスタジオとしての場所も提供し、納品していました。

ネタやお題は、一件一件、異なります。2年間もやっていれば、だんだん音楽ジャンルも網羅してくるので、変わったジャンルなどにチャレンジしたりします。ロックやポップスだけでなく、ハードコア、レゲエ、フラメンコ、テクノなどなど。

当時、僕らは音楽プロデューサーではありません。音楽作家です。通常は、全ジャンルに対応するのは厳しいです。しかし、このバカソウルにおいて、音楽プロデューサーは不在だったので、自動的に全ジャンルへの対応と、音楽クオリティを担保する役割が発生しました。他のスタッフの意識はどちらかというとお笑いの方に向かっているので、音楽に意識を向けるスタッフは、僕たち以外にいなかったのです。
 
その中で僕は、音楽の専門家ではない芸人さんやディレクターと、直接打ち合わせをして話を進めていくのに段々と慣れていくことになります。

音楽作家の目線でいうと、コードやメロディーをどうするか、楽器をどうするか、などの音楽的な話題に目を向けがちですが、芸人さんやディレクターにとって、

音楽の力で、ネタをより面白く感じさせるかがゴール
であって、
いい曲であることがゴールではない
という点が、通常の楽曲制作と違うところです。

バカソウルの収録までに、打ち合わせ、デモ制作、歌録音などを行い、楽曲の形をつくっていきます。そしてOKを全て頂いた後、収録の前日、丸一日を使って必ず行う行動があります。それは・・・

誰にも頼まれていない「ブラッシュアップの儀式」です。

その範囲はミックスだけではありません。ギターなどの再演奏、リズムパターンの見直し、歌のピッチ・タイミングなど、すべてを客観的に見つめ、このままではだめだろうという箇所を一つ一つ調整していきます。デモの段階では入っていないギターリフやドラムフィルを加える事もあります。終わるのはだいたい朝。メールで最終的な音源を送り、納品が終わったあとに寝て、夜のライブ収録を観に行くというのが、お決まりのパターンでした。

きっと、一般的なビジネスパーソンは理解し難い行為です。芸人さん、ディレクター、スポンサー、誰一人として特に求めていないのに、わざわざ時間をかけてOKが出ている音源をブラッシュアップするのです。ビジネスとしては非効率極まりない行為です。これを行うべき理由を説明します。

バカソウルの音楽には、いくつかの機能が求めれます。

・会場の大音量のスピーカーで鳴った時に会場を盛り上げるものであること
・各家庭のテレビで小音量で聴いてもショボくないこと
・お笑い好きだけでなく、音楽好きにも認められること

これらをまとめて解決するのが、最後のブラッシュアップによって音楽的クオリティを底上げするという方法です。逆を言うと、ブラッシュアップをしない場合には、全て台無しになる傾向にあります。頭ではネタが把握できても、サウンドがよくなければ、心が動きません。お笑いのネタだから音楽は多少チープでも大丈夫というのは誤解です。計算されたチープさであれば話は別ですが、雑なチープさは、笑えないのです。

何度も楽曲制作者の目線と視聴者の目線を反復していくと、だいたいわかってくる感覚があります。

音楽レベルがこのへんに達していれば、会場でもテレビで観ても大丈夫。
音楽レベルがこのへんだと、ちょっと面白くはならない。

ライブ収録で、一度目の答え合わせが行われます。あぁ、アレンジをもうちょっとこうやってた方が盛り上がったかもなぁ。

後日、テレビを観て、二度目の答え合わせです。このネタとこの音楽ジャンルとの組み合わせは、よかったなぁ。でも、ミックスがもうちょっといけたかなぁ・・・。

公共の電波を使った、実践と答え合わせの1000本ノックという、なんとも貴重な体験でした。

当時はあまり深く考えず、自己実現のために目の前のブラッシュアップを頑張っていたのですが、今振り返ると、こういった観点もあります。この番組のテーマは「音楽 × 笑い」なので、音楽のクオリティが低い場合に音楽の感度が高い視聴者に興味を持ってもらえない、機会損失の可能性があります。

音楽の感度が高い視聴者は、べつに少数派というわけではない、と僕は考えます。かなりの割合で潜んでいるその視聴者を無視するのは、得策ではありません。収録前日に僕ら兄弟が勝手に頑張って底上げをすることは、きっと全体にとってパフォーマンスがよいのです。

二年間、このバカソウルの収録で「音楽 × お笑い」に立ち向かって鍛えた筋肉は、のちのち音楽プロデューサーとして広告案件に向き合う時にも有効でした。

手掛けるからには徹底的にやるしかない、という宿命とも呼べる「誰にも頼まれていないブラッシュアップ」との向き合い方について、時を経ての2020年、会社サイトのVISIONページにまとめました。

http://higuchi.asia/about/vision.html?backpage=about

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これは、またの機会にご紹介させてください。

そして、バカソウルで出会った芸人さんたちと、時を経てまったく違う案件で、ご一緒する事もありました。


ロバートさんとは、カプリコのCMの楽曲で再会しました。


チョコレートプラネットさんとは、NHKの教育番組の楽曲の件で再会しました。


オリエンタルラジオさんとは、RADIO FISHの楽曲の件で再会しました。


ダイノジの大地さんには、福岡県の地元、川崎町の移住促進ソングを歌っていただきました。

佐久間一行さんとは、継続して楽曲制作に関わらせていただき、最近では日谷ヒロノリという謎のキャラで、有名になりました。こちらは、のちのち登場する弊社プロデューサーの山本"ぶち"真勇が、手掛けております。

どぶろっくさんとは、なんとロックバンドを組んでしまうという、非常に密な関わり方をする事になります。これはまた長くなるので、追って書きます。




たくさんの試練とともに、たくさんの出会いがありました。

バカソウルで関わってくださった芸人のみなさま、すべてのスタッフのみなさま、本当に、おつかれさまでした。若い僕たちに貴重な機会を、長く熱い祭りを、ありがとうございました。


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