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音楽制作業 OFFICE HIGUCHI 10周年までの道のり#41 〜湖畔に集う、クレイジーな奴等・・・GOOD MUSIC VS BAD MUSIC 撮影篇〜

お世話になっております。代表の樋口太陽です。

“音楽はとても大切である” このことを広く感じてもらうために、よい音楽と、わるい音楽を誰でも簡単に比較することができる実験の場を作るプロジェクト"GOOD MUSIC VS BAD MUSIC"という企画が始まりました。

今回は、映像撮影篇です。

#39でも触れましたが、映像については、DRAWING AND MANUALの林響太朗さん、中谷公祐さんに相談済みでした。
 
今回の企画では、映像について、具体的にどんなものを映さなければならないというものではないので、求めるものは「林さんのセンスで美しい映像を形にしていただきたい」というぐらい。事前の具体的なリクエストはありませんでした。

もしも今までに撮影した風景のストックなどがあれば、それを使うということでもかまわないし、なるべく負荷のかからない方法でかまいません。超一流のみなさんに映像を手掛けていただけるだけでもありがたいので、結果どんなものになったとしても、受け入れるつもりでした。

GOOD MUSICの音楽制作が進み、いよいよ映像のことを進めようという時期、思ってもみなかった提案をいただきました。コンテンポラリーダンサーを主役に添えて、湖で踊っているのを撮影する、というものです。

おおお! なんかすごそう!

想像つかない部分もありますが、もう委ねます!というスタンスなので、こちらではあまり何も考えずに、撮影のスケジュールをいただきます。


1日目
朝5時、渋谷で集合 マイクロバスにのって4時間かけて群馬県の湖へ。
日没まで丸一日かけて撮影。夜に東京へ戻る。

2日目
自然の風景ではなく抽象的な空間を表現するため、東京のスタジオで撮影。


これ、そうとう大がかりな撮影ですやん・・・。

CM案件では、都内近郊で1日だけで終わらせることも多いもの。僕たちの自主制作の案件で、ここまで力を入れていただく撮影になるとは、まったく想定しておりませんでした。スケジュールを見ただけで、映像にかけるクレイジーな情熱が伝わります。GOOD MUSICの制作でもタガを外しましたが、映像制作においても、しっかりとタガを外していただいております。

さて、いよいよ撮影の日です。朝5時に渋谷へ。20人ほどの人数が集まります。このとんでもない時間に、きっちり皆が時間どおりに集まっていただけるだけで、感謝感激。そして「なんかすみません・・・」と、申し訳ない気持ちです。

バスに揺られ、目的地に着きました。天気よーし!6月の梅雨時期にもかかわらず、晴天です。よかった・・・。

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ダンサーのChikako Takemotoさんです。なんと、衣装もオリジナルで制作していただきました。

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まずは、最初のロケーションにて。前半戦開始です。青空と緑の木々の中で、真っ赤な衣装が映えます。

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なんなら、これだけで撮影終了してもよいんじゃないかというぐらい、素敵な画が撮られていきます。でも、撮影はまだこれからが本番。次は、いよいよ湖で踊るシーンの撮影です。

皆で湖の周りを歩き、よい場所を探します。最高のロケーションを発見!

しかし、その場所は荷物を置いてあるところから、かなり遠いことが判明しました。重い機材が山ほどあるので、明らかに大変そうです。しかし撮影チームから出てきた言葉は・・・

「やっぱり、あそこがいいよね〜。まぁがんばって運ぶか!」

えっ、大変じゃないですか・・・そこまで無理してくれなくても・・・でも、よい映像を撮るためなら苦労は厭わない、クレイジーな撮影チームに迷いはありません。もちろんついていきます!

湖畔を移動すると、スタッフ同士がかなり離れてしまうので、インカムで、位置が離れた皆と連携をとる、プロデューサーの中谷さんです。

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もちろん携帯電話で電話を掛け合うこともできますが、こういった時にはそれさえもスピーディーではないので、最速でコミュニケーションをとれるインカムの存在の重要度を感じます。こういうところがプロフェッショナルなのです。

重い重い機材を皆で持って、ヒーヒー言いながら湖のほとりをひたすら歩きます。数十分歩いて、理想の場所にたどり着きました。費用対効果だけにしか興味がないビジネスパーソンならば、ぜったいに辿り着くことのできないロケーションです。

林響太朗さんは防水のウェアを着て、カメラを装着しました。カッコいい。

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水の中にたたずむ漢たち。いい顔してますね!

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問題が発生しました。湖の底に沈めて、その上で踊るはずだった、木でできたステージが、うまく底に沈まずに、浮いてくるのです・・・。※下の写真の左下に写っているものです。

どうしよう!

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皆、うろたえることなく、笑顔を浮かべつつ、そこらじゅうから大きな石を拾ってきます。次々にステージの端っこに置いていただき、ステージは石の重みで無事に湖の底に沈みました。

よかった〜。

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想定外の状況でもなんとかする。こういうところがプロフェッショナルなのです。

そして、Chikakoさんがステージへ。ドレスが濡れないよう、騎馬戦のような格好で運ばれていきます。・・・

本当に、ありがとうございます。

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無事に設置されたステージの上にたたずむ真っ赤なドレスのChikakoさん。今まで見た事のないような不思議な光景です。

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撮影は進みます。時には水の中に浸かりながら踊る、迫真のダンス。6月とはいえ標高が高いので、水に濡れると、かなり冷えてしまいます。

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ヒーターで暖をとっていただきつつ、撮影は進みます。大きくて重いヒーターを担いで持ってきていただいている、スタッフの皆さんの先回りの気遣いにも感服です。こういうところが、プロフェッショナルなのです。

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時々、濡れたドレスを絞って、水気を切っていただきます。こういうのも、映像をつくる要素のひとつです。

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ちなみに普段のCMの仕事では、音楽チームは基本的には撮影には同行しません。撮影現場にお邪魔したとしても、タレントの声録音の時にだけ行くことがほとんど。ここまで全ての工程を、まじまじと見ることは今までにありませんでした。

しかも今回は自分が発起人だということもあり、皆さんの行動が身に染み、感謝の気持ちが沸いてきます。ただひたすら、よいものをつくるために徹底された皆さんの行動ひとつひとつが、感動的なものでした。

次第に、僕は気づいてきました。今回、目に見えない音楽の力を証明するというプロジェクトではあるけれど、目に見えないものは音楽だけではない。映像の完成品こそ目に見えるものではあるけれど、こういった、ひたすら愚直によいものを目指している皆の創意工夫や、プロセスは、見えない。

これも、見えなくて、数値化されず、理解されないもののひとつだ。

映像と音楽は、下手をすると限られた全体予算の中で、映像予算と音楽予算を主張し合い、奪い合うような悲しい構図になってしまうことだってあります。でも、音楽と映像は、一心同体。それぞれが支え合って高め合い、視覚と聴覚が一丸となって、人の心を動かすものです。

よいクリエイティブを追求する、プロセスの全てが素晴らしい。

この企画で、音楽の大切さを代弁するというだけでなく、企画、映像、デザイン、ダンスなど、無形物をつくる全てのクリエイティブ関係者が、もっと尊重されるきっかけになるようなものを目指さなくてはならない。そんなことに思いを馳せた、湖畔での撮影でした。

ずっと天候に恵まれ、夕景も素晴らしかったです。日没まで撮影は続きました。日が落ちてきて、気温も下がってきます。かなり冷えたかと思いますが・・・Chikakoさんは、自主的にまだいける、まだいける、と、すごく多くダンスのテイクを重ねていただきました。

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ついに湖の撮影は終了です。その後、また重い重い荷物を皆でヒーコラ言いながらマイクロバスに運び込み、さらに4時間かけて東京に戻り・・・解散しました。

おつかれさまでした!

でもでもでもでも・・・まだ終わりません。群馬県の湖畔に集ったクレイジーな奴等は、次の日、東京のスタジオに再び集結します。

スタジオでは、まったく違う光景。真っ黒な背景に、真っ赤なドレスです。撮影の時の風景です。

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昨日の大自然とはまた全然違った、すんごい画が、撮れております。

このようなダンスが、繰り広げられました。

ついに、ついに、撮影終了・・・

こんどこそ、おつかれさまでした!!!

※まだ編集という大事な工程が残っているのですが、いったんおつかれさまでした!!!
 
クレイジーなまでの美の追求により、当初の想定を遥かに超える、素晴らしい映像が形づくられていきました。自分が企画した案件において、映像をつくるひとつひとつのプロセスと、皆さんのプロフェッショナルの仕事を体感できたことは、自分の中で映像制作を今までよりさらにリスペクトできるきっかけになりました。

よい音楽と、よい映像。

素晴らしいミュージックビデオをつくる仕事としては、この二つでじゅうぶんです。しかし、これは特殊な案件。積み上げてきたこれらの全てを台無しにするための、BAD MUSICをつくらなければならないのです。なんというバチ当たりな企画でしょう。

BAD MUSICには、この時、全く手をつけておりません。どうなることやら。

 
 
次は、キービジュアル制作と、コピーライティングのあくなきブラッシュアップの話です。

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