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音楽制作業 OFFICE HIGUCHI 10周年までの道のり#39 〜全てを繋げる時が来た。GOOD MUSIC VS BAD MUSIC アイデアの種篇〜

お世話になっております。代表の樋口太陽です。前回#38の続きです。

なんでこんなにも、広告の中で音楽は大事にされないんだろう・・・

音楽制作者である僕は、きっと誰よりも音楽の効能を体感しています。CMで音楽がよくなければ、企画も、映像も、積み上げてきた全てが台無しになることを、日常的に経験しているからです。なのに、それが理解してもらえず、隅に追いやられている。

これは、音楽だけではありません。映像も、デザインも、イラストも、言葉も。広告において、人が直に接触するもの。ひとつひとつが支え合い、絶妙のバランスで人の心を動かすもの。

全てが大事な要素です。僕は今まで、たくさん人と一緒にものづくりをする上で、本当によいものは、人の心を動かすのにとても効果的だ、というのを、たくさん経験してきました。

でも、それを声高に叫んでも、クリエイターの愚痴のようになってしまう。いったいどうしたらよいのだろう。

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ふつうは、こうだよね、という話があります。

よい映像には、よい音楽がついている。

だいたい、こうなっています。よい映像に、わるい音楽がついていることは、あまりありません。映像監督は、映像を作るうえでサウンドがものすごく重要だということを知っているから、CMにしても、映画にしても、優れた映像には、こだわったサウンドがついていることがほとんどです。スタジオジブリの宮崎駿さん監督作品をイメージしていただけると、わかりやすいと思います。

この、よい映像とよい音楽のベストカップル。これを引き剥がす遊びを、僕たちは以前からやっておりました。

PCで素晴らしい映像を流して、その映像についている音量をゼロにする。他のアプリを立ち上げて、ミスマッチな音楽を流す。映像に、本来とは違う音楽をあてるのです。

結果・・・同じ映像を観ているのに、音楽が変わるだけで、とたんに素晴らしい映像が台無しになります。とても見てられません。

ヤバいヤバいヤバい!と、音楽を元の方に戻すと、映像が途端にまともに感じれるようになる。

うわー、音楽のパワーって、強いー!
音楽、超大事すぎるぅー!

と、改めて実感できる遊びです。僕たちは普段からこれを体感しているからこそ、映像につける音楽の仕上げは、映像を見ながら徹底的にブラッシュアップします。音がよくなければ、映像が台無しになってしまうことを、知っているからです。

デモ音源でOKが出ている状態で、映像を見ながらの音楽の最終仕上げ。打込み音源で表現していた音を、改めて人が演奏している生楽器の音に差し替え、ミックスを整えていきます。

すると、同じ映像なのに、様子が変わってきます。音をブラッシュアップするだけで、映像が輝きだす。ナレーションで語られる言葉は同じ、映像も同じなのに、音楽をひと踏ん張りすると、グッと心に届くようになるのです。音楽担当の僕たちの責任を感じる瞬間です。音の最終仕上げを頑張らなかったせいで、映像スタッフの努力と才能を損なうようなことは、してはなりません。

それを思い出し、ふと、気づきました。

そうか。「音楽は大事である」っていうのは、自分がいつも、音楽の違いを比べて、それぞれ、どうなる事になるかを体験しているから思えることなのか。みんながみんな、その感覚を味わった事はないだろう。じゃあ、この遊びを、ぜひみんなにやって欲しいなぁ。

体感さえできれば、きっと誰でも音楽のパワーを感じてもらえるはず。

しかし、この遊びをやるには、まどろっこしい手順が必要です。複数のアプリを立ち上げて、ボリュームを操作するとか。再生機器が二台いるとか。ちょうどよい具合の、わるい音楽を探してスタンバイさせなければならないとか。

もっと誰でも簡単に体験することが、できないだろうか。

ふとアイデアが浮かびます。Web上で、映像を見ながら、ふたつの音をフェーダーで切り替えることができたらいいんじゃないか?DJのミキサーみたいに。

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2020年6月。

ものは試しに・・・と思い、Webコーディングでいつもお世話になっている、野口さんにテストしていただきました。こんなことが技術的にできるのか、やってみないとなんとも・・・ということでしたが、トライしていただいた結果、「いけるかも」という連絡をいただきます。

①真ん中で、映像データが観れます。
②左側にスライダーをずらすと、よい音楽のデータが流れます。
③右側にスライダーをずらすと、わるい音楽のデータが流れます。

映像、よい音楽、わるい音楽、それぞれ3つのデータを同時のタイミングで走らせて、映像を観ながら、スライダーを自分の好きなタイミングで左右に動かし、DJのミキサーのようにWeb上で二種類の音を行き来する。

左に動かすと、映像と音楽が織りなす、素晴らしい世界。
右に動かすと、映像は素晴らしいのに、音楽のせいで全てが台無しな世界。

音楽で、世界を変える。

Webの技術的には、いちおういける。この仕組みを使えば、音楽の大事さを経験したことのない人に、音を切り替える遊びを体感してもらえる。すると、音楽という形ないものの効果、その大事さを味わう経験を、してもらえるかもしれない。

タイトルは・・・世界中の人が、だいたいわかるぐらいの簡単な英語のタイトルがいいな。英語がメイン言語でない国の人でも。こどもでも、お年寄りでもわかる、シンプルなタイトル。

GOOD MUSIC VS BAD MUSIC


よい音楽と、わるい音楽の対決の実験場。

音楽制作会社だし、もちろんオリジナルで楽曲をつくろう。

よい音楽の方は、今までの自分たちが培ってきた能力を全て注ぎこんで、めちゃくちゃお金と時間をかけて、最高なものをつくる。

わるい音楽の方は、今までわるいと感じてきた要素を山盛りにして、自分たちが普段ぜったいにつくることのないような、最低なものをつくる。

具体的なアイデアが、まとまってきました。でも、このアイデアは、日々の忙しさに紛れて、そのままになってしまいました。

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2021年1月。
気がつけばもうすぐ会社も10周年、早いものです。

10周年に、なんか記念クリエイティブでもやるか。うーん。

ふたつ、案がありました。

①「今回、予算なくて。」のメカニズム解説動画。
② GOOD MUSIC VS BAD MUSIC

①の方はクリエイティブ業界の「今回、予算なくて。」が、どのようなメカニズムによって引き起こされるのかを、美しいモーショングラフィックで解説していく、皮肉っぽいものをイメージしました。

②のほうは、上に書いた通りです。

どーしよっかなーどーしよっかなーと言っていたら、妻のちひろから

「とりあえず、GOOD MUSIC VS BAD MUSICを形にしなん!」

キツい関西弁で言われます。まぁ・・・実現するの大変そうだけど、こっちの方にするか。

でも、これをやるとして、映像をどうするか。めちゃくちゃ良い映像でないと、これは成り立たない。良い映像といえば・・・林響太朗さん。

MVを手がけた主なアーティストは星野源、菅田将暉、BUMP OF CHICKEN、Mr.Children、米津玄師、RADWIMPS、あいみょん、森七菜など。その他、数えきれないほどの素晴らしいCM案件を手がけています。飛ぶ鳥を落とす勢いの方です。新作が出るたび、いつも、めちゃくちゃいいな〜と思いながら拝見しておりました。

そんな林響太朗さんが監督で、ぼくたちの自主制作のコンテンツ、手がけていただけたりするものですか・・・?と、ダメ元で、映像のプロデューサーの中谷公祐さんにお声がけしました。ちなみに中谷さんは、なんとオーケストラの指揮者としての顔も持ちます。

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#25でも触れましたが、二人とは、2017年に初めてお会いして、仕事をご一緒させていただく仲になっておりました。

しかし・・・林響太朗さんの素晴らしい映像を、BAD MUSICで台無しにしようとしている、おそろしい企画。いくら以前より関係があるとはいえ、断られても仕方ないようなものです。

でも、この二人なら、音楽の力の大事さを、日頃から感じているはず。意図をしっかり伝えれば、きっと興味を持っていただけるだろう。

お二人を口説き落とすために、企画の資料をつくります。この時点では、音楽はまったく作っていません。肝心の音楽がどんなものになるかもわからないのに、企画だけが先行している状態です。資料の一部をお見せします。

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音楽がよくなれば、映像もよく見える。相乗効果が産まれます。だから、うまくいけば音楽業界のためだけでなく、映像業界のためにもなるはずだ、と思いました。その結果は・・・


快諾いただきました。



えっ、響太朗さんの映像を、台無しにしても、いいんですか・・・。マジですか。こうなったらいよいよ、ちゃんと形にしていくしかない。

このシンプルなコンテンツだったら、たぶん、こどもでも、お年寄りでもわかる。クリエイターじゃなくてもわかる。外国人でもわかる。音楽のパワーを、きっとおもしろく伝えれる。いけるかも・・・。

今までの10年間で積み上げたもの。音楽をつくる技術、人の助け、出会いと別れ、数えきれない失敗、怒り、達成、悲しみ、学び、知恵・・・その全てが、ここに繋がる。

人生をかけたプロジェクト、"GOOD MUSIC VS BAD MUSIC"が、静かに幕を開けました。



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