見出し画像

【連詩】君の声(ビート)が聞こえる

(川)川嶋ゆーじ (笠)笠原メイ


(川)カーブに差し掛かるたび
地下鉄の8ビートが途切れる
僕は偶然を装い
左斜め前の車窓を見ていたんだ

反射して映る6つ隣の席にいるあの娘
スマホで音楽を聴いているのだろうか
僕は再び実らぬ想いを
8ビートに乗せていた

(笠)それは好きじゃなくて、隙だった
優しさが優しさになる前の形
僕は偶然を装い
西口の改札で天使とタッチした

駅を出れば選挙カーがうるさかった
Air Podsを耳に突っ込んで
十字架も無視して
あの娘の紅い瞼を思い浮かべる

(川)フリーズするロックナンバーが舞う
あの娘の笑顔を重ねていたのに
堕天使は偶然を装い
僕の耳からそれを引き抜いた

暗闇に目を背けていては
本質など分かりようもないと囁く
路上に点在するAirPodsは雑踏に消えていった
僕は堕天使と契約するか悩んでいた

(笠)唇から剥がされたブルースが
兵士の頭を優しく抱きしめる
必然的に守られた約束に
ピースと、誰かが笑っている

粉々になった旋律が零れて
あの娘のほっぺたを押している
絶望していても光や愛を信じてやまない
初めて出会った8ビートのように



*今回は川嶋ゆーじさんとの連詩です。テーマは「ピース」です。ふたりの作風、お互いに寄せてないのに一つの作品として仕上がっていく過程がとても楽しかったです!

いつも記事を読んで頂いてありがとうございます。フォローや、ハートマークで満足ですが、ご支援して頂いたら、詩集の制作費の足しにさせてもらいます!