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朝のはなし。(3)

今日の主人公は、30代女性、アヤ。

(もうすぐか…。)

「さあ、それでは今日の占い、見ていきましょう。」

(上司から怒られて最悪な一日だったから、今日はさすがに悪くはないでしょう。)

アヤは、自分の好きな男性アイドルがよく登場する、6チャンネルの朝の情報番組を見るのを日課にしていたので、この番組の占いコーナーの結果は、アヤにとっては一日を左右するものだった。

2位から6位までには、いて座は無かった。

いつもならあまり良くない結果なのかと、心配してしまうが、昨日のこともあってか、アヤは根拠なき自身に満ち溢れていた。

「10位のいて座の人は、忘れ物に気をつけて!!」

(うわ…最悪…。)

彼氏と別れるのではないか、会社でとんでもないミスをしてクビになってしまうのではないか、そんな不安に襲われた。

(このままじゃ、会社行けないよ。こうなったら…。)

最近調子の悪いテレビのリモコンを手に取り、5チャンネルを連打した。

データ放送をつけて、「今日の運勢」を見る。

アヤは、各チャンネルの「今日の運勢」を知る方法を、大体把握していた。

いて座は、9位だった。

(いや、これじゃ変わらないよ~。)

7チャンネルのデータ放送でも「今日の運勢」をチェックしたが、結果は11位だった。

アヤは、気づいていた。

「今日の運勢」は、占い師はどこも違うはずなのだが、なぜか似たような順位・アドバイスになるようなことが多いのだ。

6時58分、緊張しながら、8チャンネルに切り替える。

この時間になると、情報番組で、「今日の運勢」のコーナーが始まる。

2位~6位までに、いて座は無かった。

(せめて、7,8位なら…。)

とも思ったが、7位~11位までにも、いて座は無かった。

最下位を覚悟し、見てられないと思ったアヤは、チャンネルを変えようとした。

その時…。

「今日の1位は…おめでとうございます。いて座のあなたです。努力していたことが報われる日。」

「えっほんと⁉ やった~‼」

アヤは、飛び上がって喜んだ。

アヤは、「「今日の運勢」を決めるのは神や運命や占い師でも、選ぶ権利は自分にある」という、謎の考えを持っていたので、この日のいて座の運勢は8チャンネルの1位ということになった。

20分後のバスに乗るため、急いで支度をし、家を出た。

バス停に並んだ直後、昨晩家に持ち帰った資料を家に忘れてきたことに気づいた。

(まああれは、最悪無くても大丈夫か。だって今日の私の運勢は1位だもん!!)

アヤは元気よく、会社に出社して行った。


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