理学療法士になるために必要な臨床実習に指導者として関わった話
私は昨年度末まで、理学療法士として整形外科クリニックで働いていました。
理学療法士なるためには養成校で3年以上、必要な知識と技術を学ぶ必要があり、主なカリキュラムは以下の通りです。
・一般教養科目
・専門基礎科目
・専門科目
・臨床実習(見学実習・評価実習・長期実習など)
全てのカリキュラムを終え、養成校を卒業または卒業見込みとなれば国家試験を受験することができます。
その中でも、ほとんどの学生にとって臨床実習が最も高いハードルとなります。
私も例に漏れず、臨床実習では様々な苦労がありました。
厳しい実習ではありましたが、臨床現場に出る上では必要な経験であり、その経験が大きな財産となりました。
理学療法士は臨床経験3年以上となると、臨床実習指導者となることができます。
臨床経験12年の私も臨床実習指導者として、臨床実習生(以下、実習生)を指導する立場になることは当然ありました。
2020年には要件の改定があり、臨床実習指導者となるためには、臨床経験5年以上、臨床実習指導者講習会等を修了することが求められます。
臨床を離れる前の2年間で決して多いとは言えませんが、実習生を3名担当する機会があり、この出来事が良くも悪くも私に大きな影響を与えました。
「全く...最近の学生は...。」
なんてよく聞くセリフ。
そんなことを言うつもりはないですが、そう思いたくもなるような出来事ばかりでした。
もちろん、私が学生の頃、優秀だったかと言うとそんなことは全くなく、臨床実習指導者にたくさんの指導をいただきながら、何とか最後まで実習をさせてもらいました。
臨床実習で学んだことは、臨床に出てからの基礎の一つにもなっています。
今回、担当した3名の実習生全員ではありませんが、
・挨拶がまともにできない。
・コミュニケーションがまともに取れない。
・初日に立ったまま居眠りをする。
・自分のしたことを棚に上げ反論をする。
など、それぞれに様々な問題がありました。
3人全員に共通していたことは、臨床実習をする以前の問題でした。
これまで何人かの実習生を担当する機会はありましたが、ここまで立て続けに...。
私が実習生をそうさせているのか、と悩むこともありました。
そのような実習生であったとしても、少しでも学んでまた学校に戻ってもらえたらそれで良かったのですが、途中で臨床実習を中止せざるを得なくなった実習生がおり、その実習生が通う学校の学科長を務めておられる先生が私の職場に訪問されました。
その時、その先生の第一声は...。
学科長「先生も頑張ってくださいよ。」
私「!?」
私は言葉を失いました。
これまで理学療法士として私なりに取り組んできたこと、その全てを否定されたような気持ちに。
当然、どんな実習生であれ、指導しきれなかった臨床実習指導者が悪いという考えの方もおられるでしょう。
過去には実習生が自殺に追い込まれた事例もあり、臨床実習指導者の資質等を問題視する声は多数あります。
しかし、私は臨床実習指導者の問題だけでなく、養成校における教育の問題もあると考えています。
養成校にとっては、一人でも多くの学生を国家試験に合格させなければならないという死活問題とも言える課題があります。
また、医療系専門職養成のためには知識の詰め込みが求められ、社会人としての常識や一般教養等の教育が不足していることは否めません。
今回の件で私が問題だと考えたのは、学科長という社会的に地位の高い立場にある人間にあるまじき言葉でした。
こういった場合、まず始めに謝罪ありきで対応するべきじゃないかと感じていました。
今振り返ると、この考えは私の一方的な価値観による思い込みであったところもあります。
ただ、当時の私はかけられた言葉を冷静に分析し受け取る余裕などなく、そこからの私の生活はこれまでとはかなり違ったものになっていきました。
無気力となることもあれば、深く深く考え込むこともあり、自分と向き合ったり、現実から目を背けたり、いわゆるうつ状態。
理学療法士になる前、うつ病で就業困難となった暗黒の時代、それを思い出すことになりました。
家族とも向き合うことができず、ただひたすら一人で考え込む毎日でした。
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