サッカーに理解のあるベッドタウンでも、最終的にはスタジアム問題に直面するんですよね、というお話

今年はJFLの関西開催が一気に半分に減ってしまいました。去年までいた4チームのうち2チームがJリーグに行ってしまったので、それはそれで嬉しい反面、見に行ける試合が減って大変です。といっても以前から武蔵野の試合以外はあまり行ってなかったので、実際のところそんなに困らないかもしれませんが…(コラっ!)
今年もJFLに籍を置く関西のチームは、滋賀のレイラック滋賀と大阪の枚方をホームとするFC TIAMO枚方の2チーム。前回、レイラック滋賀のお話をガッツリとしましたので、今回はもう一つの関西のJFLチームでもあるFC TIAMO枚方のお話をしようと思います。ちょうど先日、枚方ホームの武蔵野戦を見に行きましてのでいいタイミングかと思います。

久しぶりの枚方は、やはりあまり相性が良くないようで…

前にここに来た時は、今はJ2にいるいわきFCとの試合でした。前半途中までリードしていたものの、落雷の影響で試合は中断。1時間ほど経過して中止が決まったが、直後に大雨。ずぶ濡れで近くのバス停に着いた頃には雨は小康状態になり、枚方市駅に着く頃には晴れてました。まあ、実にタイミングの悪いこと…(笑)
その前は関西リーグでした。リーグ終盤の9月、当時首位と好調だったTIAMOと関大FC2008との試合でしたが、リーグ終盤まで調子の上がらなかった関大FC2008にまさかの敗戦。結局、おこしやす京都に抜かれて地域CLを逃しました。枚方にはよくない影響を与えてしまっている印象なので、逆に今回はTIAMOに勝てるんじゃね?と思ったら全くその逆でした(笑)
TIAMOは関西リーグ時代から小柄な選手が多く、しかもみんなテクニックがあるので、相手DFにボールを奪われることなく自分達の時間帯を多く作ることで、チャンスを量産して試合を優位に進めることが多かった印象でした。この日もやはりそんな試合展開で、武蔵野のDFはボールを奪えず守備はズタボロにされます。CKから17番島津に綺麗に頭で合わしてゴールを決めると、その数分後にはクリアボールを拾った島津が冷静にコースを見極めてズドン!見事なゴールが決まり、ホームのTIAMO枚方が前半2点リードで折り返します。
後半もTIAMOの流れが続きます。角度のないところから13番斧澤のゴールで3点目を取ると、4点目もCKから22番生駒のヘッド。武蔵野も直後に谷本のゴールで1点返し、さらに疲れから動きの悪くなったTIAMO相手に攻勢に出るも大量リードで余裕のDFから得点は奪えず、ホームのTIAMO枚方が4-1の大勝でした。

この日2ゴールのTIAMO枚方17番島津。
島津で前所属鹿児島ユナイテッドはズルい(笑)
しかも下の名前が頼盛と書いて「らいせい」って…
TIAMOは斧澤のゴールで3点目を挙げる。
よく見ると思ったほど厳しいコースじゃなかったね
でも、素晴らしいゴールでした。
完全に息の根を止められた4点目。
この日のTIAMOはやりたい放題でした。
武蔵野も16番谷本のゴールで1点返す。
もう少し早ければ…と悔やまれます。

武蔵野の出来の悪さ、特に試合ごとにコンビを変えているCBの相性が良くなかったのか、守備が酷かったです。さらに、中盤はボールに寄せに行っても簡単に外されたりパスを通されたりと、守備全体が何をやってもダメな前半でした。後半もその悪い流れを切ることもできず、ほぼ何もできずにそのまま終わったという感じでした。
一方のTIAMOはややオーバーペース気味で後半は息切れした印象でしたが、大量得点もあり余裕のある試合展開でした。また、二川監督に変わってからはお互いの距離感を強く意識させているのでしょう、味方との距離感、相手との距離感、さらに動き出しのタイミングやパススピードなど、細かな点まで意識したプレーをしていたように思います。個々の技術の基本がしっかり出来ていて、さらにそれらの意識付けを丁寧にしていくことでこれだけ質の高いサッカーが出来るということでしょう。まあ、Jの上の方だとそれにさらにプラスアルファが必要なんですが、このレベルなら十分上位を狙える質の高いサッカーだと思います。他のチームからスカウティングをされてからが真価の問われるところでしょうが、現段階では去年と違いかなりやれそうな気配は感じました。

枚方でJクラブってあり?それともなし?

さて、前回軽く触れましたがそんなFC TIAMO枚方も将来のJリーグ入りを標榜しています。今はまだ周辺環境が整っていないので本格的な動きはまだしばらく先でしょうが、もしTIAMOが Jに行くとなると大阪に4つ目のJクラブとなります。とはいえ、他の大阪のクラブのある土地と違って全国的にも、いや関西の人にとっても実は枚方という土地のイメージはあまり湧かないのが現実です。強いて言えば、枚方出身の岡田准一がイメージキャラクターを務めている「ひらパー」こと、ひらかたパークがあるところくらいでしょうか。そんな、あまり何もないようなイメージの土地でJクラブが成り立つのか?という疑問が湧きそうですが、

結論から言うと十分成り立つのではないか
というのが私の出した答えです。

今回は、そのあたりのことを書いてみようと思います。

まずはTIAMOがホームタウンとしている枚方という街についてお話しします。
枚方市は大阪府の北東部、東の境を越えるとそこは京都府という場所に位置しています。人口は約40万人(2022年10月現在、394320人)で大阪府内では政令指定都市を除くと東大阪市、豊中市に次ぐ人口規模を誇ります。全国792ある市の中でも上位50位以内に入ります(47位)。面積は65.12㎢で大阪府内では8番目に大きな市となります。


市内を北東から南西に走る京阪電鉄本線と、隣の交野市につながる京阪交野線と京阪バスが市内の主な交通機関です。古くから交通の要所として栄え、京都から大坂へ続く東海道が今の京阪電鉄と同じような場所を通っていました。市内には東海道の宿場である枚方宿があったことから、古くからこの地が栄えていたことが分かります。そういう交通の要所ということもあり、京都や大阪のベッドタウンとして高度経済成長期から人口が増えていき、今の人口規模にまで発展しました。
また、交通の要所ということで市内のあちこちに工場や物流センターなども多く点在していたり、樟葉駅に隣接するくずはモールは昔からある都市型の大型ショッピングモールとして関西圏内では有名です。ひらパーの愛称で有名なひらかたパークは関西圏内では特に有名で、近年無くなりつつある大型遊園地としてまだまだ健在です。
と、ざっと枚方市についての基本データを羅列してみました。なんとなくイメージが付いた方もおられるかと思いますが、関東近郊の方のために「関東だとどこに当たるか?」と敢えて言うなら、それは

「町田市」です

あ〜、やっぱりと言う声があちこちから聞こえそうですが、実は大都市圏のベッドタウンとしての街の機能もそうですが基本データもかなり似ています。先ほど引用した同じデータで見比べてみるとよくわかります。町田市の人口は枚方市よりやや多い、43万人くらい(433032人)で面積はこちらもやや大きい71.55㎢。すぐ隣は神奈川県で都内に行くよりも横浜に行く方が交通の便がよく、東京と横浜のベッドタウンで「神奈川県町田市」などとよく揶揄されますよね(笑)。そういや枚方のことを「京都府枚方市」とはあまり言わないですね…(笑)。市内を走るのは小田急でこちらも京阪となんとなく似たイメージの大手私鉄。また、市内ではないものの同じ小田急沿線にはやはり老舗の遊園地であるよみうりランドがあります。東名のインター(これもよく考えたら「横浜町田インター」ですね笑)があり、工場や物流センターがたくさんあります。かなり一致してますね。

さらに、町田と枚方。どちらも実は少年サッカーの古豪クラブがあることも共通しています。町田市には町田JFCをはじめとしたたくさんのジュニア、ジュニアユースのクラブチームがあります。町田が「少年サッカーの街」ということは町田ゼルビアのHPにもちゃんと書かれてます。

一方の枚方はと言うと、1969年創設の枚方FCが関西のクラブユースの草分け的存在として、今でも立派に活動しています。大阪府内の高校サッカーの強豪校の一つでもある東海大仰星も、実は枚方市にあります。共に、サッカーの街と言ってもなんら過言ではないのです。

そしてTIAMO枚方も、2004年にガンバ大阪の同期入団である新井場徹、播戸竜二、稲本潤一の3人を共同オーナーとした「FCイバンイーナ」を前身としたチーム。2006年にFC TIAMOに名称を変更。その2年後にはジュニアチームを、2008年にはジュニアユースチームを設立するなど関西リーグに昇格する前から(関西リーグは2014年から)少年サッカーへの造詣は深いチームです。それもこれも、少年サッカーに対する情熱のある枚方をホームとするチームに相応しいのではないでしょうか。

町田には野津田があった。枚方には…

と、ここまでは枚方と町田はほぼ同じような環境と言えるかと思います。しかし、町田と枚方とでは唯一とも言える大きな違いがあります。しかもその違いが枚方にとってかなりのデメリットとも言えるのです。その違いは何かと言うと…

スタジアムがない

ということです。正確にいうと、今使っているスタジアムに拡張するだけのスペースがない、ということです。
関西リーグ時代から使用している、この日の会場でもあったたまゆらスタジアムこと、枚方市立総合スポーツセンター陸上競技場。名前の通り、枚方市が作ったスポーツセンター内にあります。スポーツセンターということからもわかる通り、同じ敷地内に体育館もあります(こちらは「KTM河本工業総合体育館」というネーミングライツです)。その体育館が位置するのが陸上競技場のトラックの1コーナーから2コーナーの後ろあたりの、陸上競技場のすぐそばに立っています。さらに、バックストレート側にはスタンドはなく、フェンスのすぐ後ろに大きな池(中宮大池)が、体育館の反対側のすぐ後ろにも工場が立っています。メインスタンド側はと言えば、そのすぐ後ろに交通量の多い道路が走っており、スタンドを拡張するスペースがほぼ見当たらないのです。
「陸上のトラックを撤去してスタンドを設置すればいいんじゃない?」という声もあるかと思いますが、この枚方市立陸上競技場は枚方の陸連にとっては聖地のようなものらしく、トラックを撤去して球技専用とするなどというそんな暴挙に出るわけにもいかないのが現状のようです。TIAMOとしては、将来的にはここではなく別の場所に新しいスタジアムを設けないといけないのかほぼ確実なようです。
サポもそのことは十分理解しているようで特に慌てるそぶりもないのですが、近い将来必ずしも発生するスタジアム問題は今からチームとして取り組んでいかないといけない大きな課題です。

一方の町田はどうだったかというと、町田GIONスタジアムこと町田市立陸上競技場(そう、奇しくも町田も枚方も使っているスタジアムはどっちも「市立」の施設なんですよ)は町田市の郊外、野津田公園という山一つ分丸々公園にしたようなところにあります。バックストレート側から3コーナー4コーナーに掛けては山が迫っていて、拡張するだけのスペースはありませんが、それ以外は比較的開けたスペースがあったので町田はメインスタンドを超巨大化することで、Jリーグ規格に適応したスタジアムに無事に魔改造、改修することができました。施設が町田市の持ち物ということで改修に関しては比較的前向きだったようですが、それでも改修予算の捻出問題でかなり町田市議会が紛糾したということも耳にしています。なかなか困難なミッションだったようですが、町田市の「サッカーの街」という誇りがそれを後押ししたのだと思います。

枚方市に現状で何か打開策はあるのか?

それでは、枚方で今使っている枚方市立陸上競技場以外でどこか新しいスタジアムの作れそうなところはあるのでしょうか。枚方市の地図を開いてあれこれ調べてみましたが、枚方市って意外と余ってる土地がありそうでないんですよね。他の運動施設を見てもどこも手狭な印象を受けますし、総合スポーツセンターの近くにある山田池公園という大きな公園があるのですが、そこはバーベキューや花見客で大混雑していました。市民の憩いの場となっているので、そこにスタジアムを作るというのはあまり建設的ではないですね。
よくある新スタジアムの建設予定地として、大きな工場や学校、公共の施設の跡地というのがありますが、そのあたりの情報は枚方市と無縁の者にとっては全く想像がつかないので今の段階ではコメントを差し控えておきます。もしかしたら何かの施設を移転、統合させた跡地を利用する計画があるのかもしれませんが、もしそうであれば枚方に新しいスタジアムというのもそう遠い話ではなさそうです。
ただ…、どうしてもすぐに新スタジアムが必要というのであれば、枚方市内ではないものの使えそうな施設はあるにはあるのです。広域ホームタウンとして枚方市と共に活動している隣の交野市には、いきいきランド交野という施設があり、ここは陸上競技場や体育館、プールなどの運動施設が集約した公園です。しかも、ここを管理運営しているのはスポーツ用品でお馴染みのミズノです。

さらに交野市同様広域ホームタウンでもあり、やはり枚方市と隣同士の寝屋川市にも、寝屋川公園という運動施設と公園が一緒になった公園があるのですが、こちらは大阪府の施設ということで改修などは大阪府の管轄となるので、かえって融通が効かなくなるのであまり得策とも言えないでしょう。

しかも、どちらも陸上競技場とは言ってもトラックとフィールドがあるだけで、スタンドはおろかその他の必要な設備はほぼないので、もし改修するとなると間違いなく町田以上の魔改造を必要とします。さらにそこまでやったとしても、そう遠くない将来にTIAMOは枚方に新しくできる(かもしれない)新スタジアムに移ってしまう運命となるのは確実です。そうなることが確実視されるにも関わらず、そんな魔改造をやろうというお人好しな自治体は間違いなくないはずです。やはり「枚方のチームは、枚方市内で枚方市の持ち物をホームスタジアムにする」のが一番得策なんです。まあ、幾つもの困難を乗り越えてきたクラブなので、この史上最大の困難なミッションも乗り越えてくれることと信じています。

枚方という街の特性やサッカーへの理解度もありそうな、そんな街でもやはり頭を擡げるのはスタジアム問題。前回の東近江のような絶妙なタイミングなんてほぼ現れません。幸いなことに枚方は市の所有物なので、枚方市内でTIAMOへの理解度が深まれば事は前に進むと思います。沼津のように県の所有物の改修をお願いするのとは訳が違います(沼津は本当に苦労してましたからね…)。枚方FCの歴史からすればまだまだ幼いクラブチームとも言えるTIAMO枚方。今年の成績如何ではスタジアム問題も一気に動き出す可能性もあるでしょうから、まずは現場が結果を出すことが一番ではないかと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?