「ゼロコロナ」と「ウィズコロナ」と「ポストコロナ」のリーグ運営について考えてみる

7月に再び発令された緊急事態宣言と蔓延防止等重点措置がどんどんと地域を拡大させて、今では出されてない県を数えた方が早いくらいの事態になっています。δ株の感染拡大で日常生活を送るのもかなり窮屈になっています。それはスポーツや文化面でも同じで、特に最近では野外フェス開催の是非が世間の話題になっていたりします。

サッカーにおいてはJリーグ含む全国規模の大会では、開催はするが観客数の制限を設けたり、試合は行うけど無観客であったり関係者以外の観戦を制限したりという措置を取っています。また、万が一選手やチーム関係者から感染者(陽性者)が確認された場合は、リーグ戦なら濃厚接触者の特定と場合によってはある一定期間の活動停止、トーナメントの場合は大会期間が短いのでその時点で当該チームは辞退、という措置を取りながらリーグ、大会をこなしていくというスタンスを取っているように感じます。

しかし、これが地域レベルでのリーグに目を向けると地域差やリーグによって、対応にかなりの違いがあります。Jリーグに近い対応を取っているのは関東と関西。どちらも去年から感染者が多かったこともあって「緊急事態宣言やまん防が出ててもそれが普通」と言った、決していいとは言えませんがそれらに対するある種の慣れがあるせいか、リーグ運営も「感染者が出たのはもう仕方ないので、濃厚接触者はちゃんと特定してね。で、必要ならば2週間くらい活動休止して、明けて試合できそうならまた試合しましょうね」という感じの対応。感染者が出たからリーグを止めて、なんてやってたらリーグ自体が全く出来ないので、まあやむを得ない対応といえばそうなのかな、とは思います。

でも、その他の大多数の地域ではそうではないのが実情です。その傾向が特に顕著なのは東海と九州です。どちらも名古屋、福岡という大都市圏を抱える愛知県と福岡県があり、去年からそれなりの感染者数が確認されており、関東や関西と状況はそんなに変わらない。さらに愛知の隣県、岐阜県もそれに近い状態を去年から経験していることから、東海地区の対応は関東関西と似ていてもおかしくないと思うのだが、実はどちらの地方も「それ以外」の県が「そうではない」という点が関東関西と大きく違うところである。
この2つの地域に関しては、愛知や福岡のように日頃から「身近にコロナがある」か、そうでないかによってどうしても「コロナ」に対する考え方、「ウィズコロナ」なのか、それともあくまでも「ゼロコロナ」に拘るのかという点において、その対応に温度差が生じた結果、緊急事態宣言が発令された途端、県またぎの移動禁止や公式戦の自粛といった対応を取らざるをえなかったのだろうと推測されます。
それでもKYUリーグは去年の経験(リーグを途中ですが打ち切った)から、リーグの全面ストップはできる限り行わず、可能な限り開催し続けることを選択しましたし、東海社会人もそもそも昨年はリーグ自体の開催を断念した経験から、出来る限りやろうとしたものの(通期から半期開催)東海協会からの公式戦自粛要請により中断を余儀なくされてしまっています。
もっと影響を受けているのは、それより世代の若い大学、高校以下のリーグ戦ではないでしょうか。
高校、大学の各リーグとも協会からの自粛要請とともに、各学校からの課外活動や学外活動の休止という制限も加わって、思うようにリーグの日程が消化できるない事態になっています。もっとも、大学による学外活動の禁止は関東や関西の一部の学校でもあるのですが、大きな違いは協会でのコロナに対する考え方の違いが日程の消化具合の差に繋がっているかと思います。東海と九州の学連関係者やユース世代の関係者の方たちの苦悩は計り知れないです。

大都市圏以外の地域ではより「ゼロコロナ」的な対応を取っているように思えますが、実はそうではない対応を取っている地区があります。北信越です。北信越サッカーリーグはコロナ禍に見舞われた昨年のシーズンにおいても、感染対策を十分に取った上で有観客試合を実施するとの対応を取っていましたし、今年も同様の対応を取りつつ、粛々とリーグ日程を消化していっています。大学リーグにおいても、全てではありませんが有観客での開催も行なっています。
北信越、特に北陸地方は昔から、老若男女問わず働き手として稼ぐ、元気なうちはとにかく仕事をする、という実務的で効率的な考え方が浸透しており、今回のコロナ禍におけるリーグ運営にもその考え方に則って実務的な運営をされているのかな?と個人的にはそう推測しております。

去年の時点では、ここまで長引くと考える人は少なかったのかもしれませんが、現にここまで長引き、さらに来年もどうなるか不透明な状態である以上、今から来年以降の「ポストコロナ」でのリーグ運営も検討しておかないといけないのではないか、とも思います。
特に感じるのは、今の日程が極めてタイトであること。「何もイレギュラーなことが起こらない」ことを前提に日程が組まれていることがほとんどです。しかし、豪雨や高温などの異常気象による中止や延期は以前からあり、特にここ数年はそれによってリーグ日程に多大な影響を及ぼしたりもしています。中国サッカーリーグが地域チャンピオンリーグの組み合わせまでに日程が消化できず、暫定的に出場チームを決めたこともありました。さらに、リーグ以外のさまざまな大会の日程が立て込み、予備の日程が確保しづらいうえに、コロナによる日程調整を行って予定通り終了させるということは、もはや神業ではないかとまで思わざるをえません。

単に過密日程を軽減するのであれば、全体の大会の数や規模を縮小されるのが一番なのだが、そう簡単な話ではない。特に育成年代にとって大会の数を減らすのは、経験を積み成長を促す機会の消失を意味するので現場は容易に受け入れることはできないでしょうし、協会としてもそこは避けたいのではないでしょうか。
今すぐにベストな解決案を見出すことは出来なくても、数年スパンでベターな解決案を出すように、現場と協会とが一緒になって考えていくことが大切ではないでしょうか。

ということで、コロナ禍におけるリーグ運営についていろいろ話していきました。まずは「ゼロコロナ」なのか「ウィズコロナ」なのか。「ゼロコロナ」では立ち行かなくなりつつある現状とともに「ウィズコロナ」を受け入れて出来る限りの対応をしていくのがベターではないかということ。そして、来るべき「ポストコロナ」に向けて今までの問題点、過密日程であったり、天候やその他の要因による予備日の確保の困難さ、さらにはもっと余裕のある日程を組むことは可能なのか?といったことを、このタイミングでみんなで考えていく必要に迫られているのではないか。そんなことを、改めて今回の緊急事態宣言下で思い返した、そんな2021年の夏でした。


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