方向性を定めるとあらゆる難問も解決できる…、かもしれないという話

何事も方向性ってやっぱり大事だと思うんですよ。特に最近、つくづくそう思うわけです。個人にしても組織にしても、何か緊急事態が発生した時でも方向性がしっかりしていれば慌てないし、ミスを最小限に抑えられるのでないかと思うわけです。

10/30に武蔵野、11/3にJヴィレッジ、そして11/6に仙台と売れっ子のライターでもこんな無茶な日程組まないだろう、という日程で動いていました。そこで見たチーム、リーグの上位チームと下位チームとの違いがなんだろうかと思うと、チームとしての方向性があるかどうかではないかと改めて感じたのです。

まずは10/30の武蔵野vsマルヤス岡崎。共にリーグ下位に低迷しているのも、おそらくチームとしての方向性が定まってないんでしょうね、随所にわたってチグハグな動きが多々見られるわけです。そんな中、カウンターだけに特化してプレーしたマルヤス岡崎が、試合通じてほぼワンチャンともいえるような鮮やかなカウンターから先制点を奪い、そのまま逃げ切り勝利。かつて、ガチ守りからのカウンターしかやらなかった中東勢に対し「あんなのはサッカーでもなんでもない!」と激怒したイランのように、武蔵野からすれば「あのサッカーで負けるのは腹が立つ」という印象だとは思うのです。
でもね、たとえサッカーがそんなのでも、勝つための方向性がしっかり固まっているマルヤスとそれが曖昧な武蔵野との差が「点が取れるか」「勝ち点を取れるか」の差になったんじゃないのかな?と思うと、やはり方向性は大事だよなと思うわけです。ま、プロ契約でさらにホンダで連覇した監督を呼んでそのサッカーか!という愚問は置いといて…(汗).
そういう点では、終了間際に交代で入った茂庭さん。なんとな〜く後ろでボールキープしながら、大袈裟に倒れて相手のファールを貰うプレーも言ってしまえば「この試合に勝つという方向性」から導き出したプレーなんでしょうから、やはり方向性って大事ですよ〜、マジ笑っちゃいましたけどね(笑)

話の流れ的に茂庭の写真を、と思ったのですが残念ながらなかったので、仕方ないので東海学生リーグ時代からよ〜く見ていた、マルヤス岡崎20番原科くんの写真を…(笑)

そんな「勝たないといけない」マルヤス岡崎戦に負けた武蔵野。そんな状態で、翌週水曜日にJ3参入条件を賭けたいわきFCとのアウェイの試合に臨むことになるわけです。
武蔵野はいわき相手に「やれた」シーンもありましたが、やはり実力的に上のいわきのペースで試合が進んだことは間違いないです。前半に2失点、後半1点返すもさらに追加点を取られて1-3で負け。いわきFCがJ3参入条件をクリア、試合後に号外が配られてました。

いわきFCのJ3参入内定を報じる福島民友の号外。大きさの目安として、缶飲料を置いてみました(笑)←そんなネタはいらない!

いわきFCの今年の躍進は、何がなんでもJ3参入条件をクリアするというチームの方向性と、それを可能にするための明確なメソッドの確立が大きいでしょう。どうすれば勝てるか?そのためにはどういう選手を獲得し、そしてどういうサッカーをすればいいか?そのためにはどのようなトレーニングが必要か?それらをしっかりと突き詰めた上で今シーズンに臨んだのだろうということは、試合を見ていて随所に感じました。
まずは選手のチョイス。DFは背の高い選手を揃え、それ以外はとにかく足の速い選手を揃えることて、どのように守り、どのように攻めるかという方向性を分かりやすくする。それにより、ピッチの中の選手が何をすればいいか迷わずにプレーすることが可能になり、最終的には勝ち試合が増えたということだと思うのです。また、練習では身につかない背の高さと足の速さというストロングポイントを持った選手を集めることで、よりサッカーの方向性を明確にしたのではないか、と推測します。
次に、プレーの質について。今までのいわきのイメージは筋肉ムキムキのフィジカル重視というものだと思いますが、先日見て思ったことはフィジカルよりも体幹の強さが見て取れました。体幹が強いと1対1の競り合いに強くなるのはもちろんのこと、少々の小競り合いがあったとしてもバランスを崩すことが少なくなるので、次のプレーに移りやすくなるというメリットがあります。だから、空中戦の競り合いになったとしてもその後のルーズボールに相手より早く対応でき、それによりセカンドボールを拾いやすくなり2次攻撃3次攻撃に繋げやすくなる。

いわきFC19番岩渕と東京武蔵野8番小林との競り合い。ルーズボールを先に拾ったのは岩渕。このシーンに限らず、体幹の強さが特に競り合いで目立った。

あとはスピード。軒並み足の速い選手が揃っているので、ロングボール→裏抜けというシーンが多々見られました。2点目はまさにその典型的な形でした。まあ、実に鮮やかなもんでした。そういう動きを徹底的にやるとなれば、後ろ(DF)も無理してパスコースを探すのではなく、味方が走りそうな(あるいは走りやすそうな)裏のスペースにロングボールを蹴ればいい。ゴールに近いエリアでのボールロストのリスクも軽減できるし、攻め込まれていたとすれば相手の守備陣形が整う前に一気にゴール前まで攻め込めるかもしれない。実にシンプルでかつ、理に適った戦術です。
当然、このようなサッカーを理想とするチームは数多くあると思いますが、そのために何をすべきか?というところからそのメソッドをしっかり構築してるチームはそう多くないと思います。それを体現してしまったのが、いわきFCではないかと思うのです。

いわきFC2点目のゴールシーン。DF田中が頭で落としてMF宮本のフィードに反応したFW古川のゴール。その間、10秒あったかどうか…。最後も武蔵野GK西岡が距離を詰めたところを軽く交わした。教科書通りのカウンターでした。

そんなチームに運動量豊富でセンス抜群、テクニックもある嵯峨理久みたいな子が入ったら、そりゃ無双にもなりますよね。3年時に某チームの練習によく参加していたという情報を察知していたので、いわきに決まったと聞いてびっくりしたが、でもその選択は間違ってなかったよなと思うと「それでよかったんだよな〜」と思ったり…。そういう点でも、要所要所に的確な人材を確保するチーム編成の上手さも今年の成績に繋がっていると思うと、他のJ3ライセンスを交付された100年構想クラブと大きく違う点と言えるのではないか。
そうなると、いわき以外の100年構想クラグの不甲斐なさがより際立ってしまうわけです。いわきFC昇格以前からJFLに在籍しながら、いわきFCの後塵を拝することをどう捉えるのか。それもこれも、チームの方向性は現場とフロントとは一致していたとしても、必ずしもそれが「同じ方向を向いている」とは限らないのではないか。同じ方向性を向きながら、それに対するメソッドが一致しているとは限らないし、むしろそれが曖昧なためにチームの成績が上がらないというのが現実かもしれない。このままいくと、おそらくいわきFC以外のJ3参入はないでしょう(僅かながら奇跡が起こることを信じてますが…)。2年間いたいわきFCのメソッドをしっかり吸収して、来年こそはJ3に参入できるように各チーム、切磋琢磨していただきたい。そう思うわけです。

仙台大からいわきFCに入った嵯峨。元々運動量とテクニカルでクレバーな選手だったが、それに加えてフィジカルや体幹の強さが加わり恐ろしいプレーヤーになってしまったな、と…。DFが完全に置いてきぼりにされてることからも、そのスーパーさがよく分かるシーン

いわきから仙台経由で帰宅して3日後、再び仙台に向かいソニー仙台vsヴェルスパ大分を見る。「Jリーグ?何それ?美味しいの?」と言わんばかりにJリーグとは一切無縁のソニー仙台と、昨年優勝したばっかりにちょっとJリーグへの色気が出てきたヴェルスパ大分。「方向性」という観点ではソニーの方がより明確なように思えるのだが、サッカーとしてはヴェルスパの方がより明確な方向性をもって戦っていたように思えました。
何せこの試合、ヴェルスパのチャンスってそんなに多くなく、その数少ないチャンスでしっかりPKを貰って先制点をゲット。あとはひたすらブロックを作ってがっちり守りを固めてタイムアップまでの時間を費やす。こういう表現をすると誤解がありそうだが、裏を返すとそれだけソニーがボールをキープする時間が多かったのも事実。ただ、不利な条件下においてもしっかりと方向性が定まっていれば、その不利を跳ね返すだけのパワーも生まれてくる、その積み重ねがここ2、3年のヴェルスパの強さではないかと思うのです。

PKを貰ったヴェルスパ大分11番利根とPKを決めた中村。ややピッチが滑りやすかったのか、DFにとってはやや酷な判定だったようにも思えるが…

ソニー仙台も、ボールをしっかりキープし、フリーランをサボらずパス、ドリブルを織り交ぜながら展開しつつゴールを奪うという方向性はしっかりしていました。だが、そのサッカーというのは個人の能力の高さと柔軟性が求めれるのと同時に、それだけ方向性がしっかりと定まっているがゆえに、相手からするとやることが明確なだけに対処しやすいわけで、案の定ヴェルスパの固いブロックに阻まれてしまったというのがこの試合の結果に現れたように感じました。明確な方向性に内在する、個々の能力に応じた局面の打開という、極めて難しいメソッドを実現しようとしているソニー仙台の脆さが出たのかもしれないです。
Jリーグ参入という目標がないが故に「勝つことが全て。勝利こそ正義」といった強い方向性を見出せないソニー仙台としては、どうしても方向性を持ってチームの推進力を高めるということがなかなか難しい。そんな過酷な状況にも関わらず、この成績を上げていることはどのチームよりも称賛されてしかるべしだと思うし、それはさらに上にいるHonda FCにも言えることと思います。その実現については、個々の選手に限らずフロント含めたスタッフ全員の能力の高さが必要で、それをいかんなく発揮することで可能にしているのでしょう。というか、それを発揮することでしか成し得ないことだと思うのです。
特にその個人能力の高さを発揮していたのは8番の佐藤。桃山学院大時代から見ているが、その頃は足が速いというイメージしかなく、この日のように1トップで起用されると非常に違和感がありました。しかし、身長が高くないにも関わらずそのフィジカル、特に体幹の強さと体の柔軟性をフルに活かしたポストプレーと縦への推進力でチームに大きく貢献していました。

堅守を誇るヴェルスパDFを嘲笑うように交わしていくソニー仙台佐藤。前線で体を張ったポストプレーの能力も大いに発揮したプレースタイルは、学生時代には全く見られなかったので驚きでした。

彼がいた時代の桃山学院大と言えば、以前にもお話しした毎熊という化け物FW(褒め言葉です)がいたので、そういう能力があったとしても使う必要がなかったんでしょう。そういう、潜在能力を見出すのもソニー仙台というチームの一つの方向性でもあるでしょう。何せ親会社は、多様性を重視して様々な人材を獲得、育成してきた実績のあるソニーさんですから…。まあ、その「多様性」が時より、その組織の方向性に混乱をきたすことがありますが…。今のソニー仙台も、もしかするとその「カオス」な時期に入っているのかもしれないですね。

と、ここまで「方向性」という観点から長々とお話ししてきました。方向性という言葉をよく「ベクトル」という言葉に置き換えることがあります。ベクトルというのは行列表記が可能で、その「行列」を用いれば多元連立方程式の解を容易に求めることが可能となり、複数の変数を要した方程式を解く時に広く多用されています。つまり「ベクトル」を定めることで複数の問題を解決するための「解」を簡単に見出すことが出来るということです。まあ、もっともそれでも「不能解」や「不明解」が発生するのも事実です(むしろ「不能解」や「不明解」のケースがほとんどではあるんですけどね…)。
今結果がなかなか出ていないチームについては、今の方向性が果たして正しいのか?もし正しいのであれば、それを実現するためのメソッドが確立されているのか?確立されているのであれば、それを体現するための環境が整備されているのか?…。それらをちゃんと見直して、来年以降の活動に役立てていただきたいとそう思うのであります。

追記 近年、武蔵野で活躍した選手が次々と他のJFLチームに移籍していくのかも、チームの方向性がはっきり定まっていないことが大きな原因だと思うのです。今年になり、チームの体制が大きく変化し、その環境も方向性も変わったかと思います。無事JFLに残留し、方向性がしっかり固まって来れば自ずと選手も残っていくでしょうし、また新たな優秀な人材が加わってくることでしょう。そうなることを願いつつ、もうしばらく見守っていくことになるのかな…、などと思った次第です。

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