高原直泰というスーパーマンをもってしても、選手と監督とのダブルタスクは極めて困難なタスクなんだろうね、というお話

行動制限のほぼ無くなった今年のGW。そんな連休中に久しぶりに沖縄に行くという暴挙に出てしまいました。まさに遠征芸人の鏡ですよね(笑)あっ、もちろん日帰りです!←何の確認?(笑)
今年沖縄SVがJFLに昇格したおかげで久しぶりにJFLの沖縄開催がある、ということでとりあえず沖縄SVのホームゲームに行ってきました、しかも武蔵野の試合ではなく別の試合で…。というのも、武蔵野の試合は日曜開催のうえに沖縄県総合運動公園陸上競技場こと、タピック県総ひやごんスタジアム(逆です(笑))で15:00キックオフという、関東近郊か福岡の人じゃないとその日のうちに帰れないという罰ゲームのような日程ですし(正確にいうと関西も帰れるのですが、かなり厳しい)、正直「JFLの県総開催はハズレ」というのが周りの遠征芸人たちの間では常識なので(笑)、そんなハズレな試合に貴重な財源を費やすわけにはいかない。ということで一番那覇市内に近い、南風原町の黄金森公園陸上競技場でのソニー仙台戦をチョイスしたわけです、でもGW中という飛行機代が一番高い時期ですが…

4/30@黄金森公園陸上競技場 沖縄SV 0-1 ソニー仙台

日曜日とはいえ、GW中ということで機内は家族連れ、しかも小さいお子さんを連れた乗客が多かったですね。試合後、那覇市内きっての繁華街である国際通りや第一牧志公設市場とかも行きましたが、国内外問わずリゾート感満載の人たちが多く歩いており、すでに以前のような観光地沖縄に戻りつつあるのかな?ということを実感しました。
2019年の秋以来の沖縄。今回、滞在時間を出来るだけ長く取るためにソラシドで往復したのですが、今年の春からANAがオンラインチェックインを始めたらしく、スマホでチェックインとQRコードの発行という、またデジタル難民な人たちにとっては厄介な状況になったみたいですね。あ〜、だからこの前、ANAのシステムダウンの時にみんな羽田で下向いて必死にスマホ見てたんですね…。まあでも、やってみるとそれほど難しくはない(むしろ簡単)ので問題なかったですけどね…(笑)そうやって日本も徐々にデジタル化、キャッシュレス化、ペーパーレス化が進んでいくのでしょうね…

そう、2019年の秋以来の沖縄と言いましたが、実は前回来た時って首里城の火災のあったその3日後だってのです。なので、ゆいレールで首里駅手前に差し掛かると、いつもは山の上に見える首里城の正殿の消失跡を目にしてかなりショッキングだったことを今でも思い出します。そりゃ、現地の人の悲しみは想像以上だってこともよく分かります。

火災発生3日後のゆいレールの車内から見た首里城。
赤で囲ったあたりが消失した首里城正殿跡。
ゆいレールからでもはっきりとわかりました…


今回の会場は那覇市内からそんなに遠くない、隣り町の南風原町。町役場のそばにある黄金森公園という運動施設やなんやらが集まった公園にある陸上競技場。沖縄に初めてJFLで行った北谷公園陸上競技場のように、実にのどかな雰囲気満載の会場でした。やっぱり沖縄開催はこれくらいのんびりしてないと面白くないです(笑)

この日の試合会場のある南風原町黄金森公園。
スタンドに向かう通路には沖縄SVの幟が並ぶ。
中はこんな感じ。
いかにも地方の陸上競技場といった感じですね。
後ろのテントにはなぜかグランパスのロゴが…
どうもここ数年、ここでキャンプをしている模様。

心配された雨は降らなかったものの、どんよりとした曇り空とじとっとした高い湿度という、サッカーにはあまり適さない天候。東北から来たソニー仙台にとっては非常に不利な気候条件でしたが、それでも前半の動きは沖縄SVよりも良かったです。沖縄のサッカーってJFL昇格した直後のFC琉球が特にそうだったんですが、裏のスペースにボールを出して走らせるといった「無駄に体力を削る」戦術を取るのは命取りと言わんばかりに、とにかく足下にボールをもらう、渡すというサッカーが主流なのかな?と思うのです。当然、この日のSVもそんな足下へのパスサッカーでしたので、ボールを取ってもそこからなかやか攻撃のスピードが上がらない。そんな相手を尻目に、ソニーはボールをしっかりキープしつつ果敢に裏へ走るサッカーを展開。26分に藤原からのボールを裏で受けた上野が落ち着いてゴールを決めて先制する。

ボランチ平田から鈴木、上野、藤原と経由し…
藤原からのボールに反応した上野が裏に抜けると
キーパーの動きを見て、落ち着いてゴール!
今年の好調がよく分かる見事な攻撃でした。

しかし後半になると、気温が高くさらにジメジメ度が増したことによって、ソニー仙台の運動量が一気に落ちてきた。それを見てが、沖縄SVが徐々に攻勢に出る。しかし、ソニー仙台の堅く最後まで集中の切れないDFに阻まれる。終了直前のビッグチャンスもキーパー佐川を中心としたDFが冷静に対応し、そのまま試合終了。好調ソニー仙台が苦しみながらも1-0で勝利、劣悪な環境のアウェイで貴重な勝ち点3をゲットした。一方の沖縄SVは浮上のきっかけがなかなか掴めない、そしてますます苦しい試合が今後も続きそうな予感のする試合でした。

大城のクロスを中で高原が合わせて落とすも…
その落としたボールはDFにクリアされる。
終了間際、高原と交代で入った松下のクロスに
攻撃参加したDF岡根が頭で合わせると…、
その落としたボールをDFがクリアする。
クリアボールを山田と鯉沼が押し込もうとするが…
ソニー仙台の堅い守備に阻まれ、そこで試合終了…

まずは勝ったソニー仙台から。去年の低迷期と違い、選手に迷いがなくなったかな?といった印象。落ち着いて冷静にプレーすればちゃんと出来るということにみんなが気づき、チーム全体のプレーの質も上がりました。とはいえ、去年までレギュラーで出ていた選手も他のチームで活躍しているので、要するに去年の低迷は全て、メンタルの問題だったのかな?ということになるんじゃないでしょうか?このレベルだと、そういったメンタルの不調が大きく勝敗に影響するものですからね…。まあ、何はともあれ安心しましたね。

そして、ホームで負けた沖縄SV。浦安の時にもお話ししましたが、J経験者とそうではない選手との差がまだ大きいのかな?というのがざっくりとした印象です。選手兼監督の高原はさておき、元FC琉球で沖縄国際大学時代は3年連続リーグ得点王だった儀保や、中京大学から長野に行った大城、CBで高い壁になっていた元清水などで活躍した岡根など、パッと見の経歴だけならそこそこやれそうな感じですが、ベテランの岡根以外のJリーグ経験者はもう少し頑張ってもらわないと厳しいのかな?という感じでした。
かといって、一番上手い高原監督が全面に出て試合をコントロールしてしまっては、チームとしてはやはり問題だという意識もあるのでしょう。監督でもある高原はFWに張ってプレーするのではなく、1列下がって周りにパスを供給す?役割を主にこなしていました。なので、ソニーの厳しいマークにあってしまうと、攻め自体が組み立てられないという状態に陥っていました。いっそ浦安の林容平のように割り切って前線に張ってしまうというのも戦術的にはありなんですがね…

FWではなく左サイドでプレーした9番儀保。
慣れないポジションに苦労しているようでした。
右サイドでクロスやカットインなどを見せた大城。
前半のやや低調な動きがややもったいなかったです。
32番荒井のパスを胸で落とすも
コントロールにミスし、DFにクリアされる高原。
一列下がった位置でのプレーが多かったです。

元日本代表があえて選手兼監督のダブルタスクを実践する意味とは

そうなんです、高原は選手でもありますが同時に監督でもあります。本来監督は、試合中はベンチにいて広い視野を確保しつつ、試合の流れを読みながら局面にあった戦術や選手交代、さらにはポジショニングの細かい指示などを行うのが通常の任務です。試合以外では、各選手のコンディションや怪我、メンタルのケア、スタッフが足りなければ次の試合の対戦相手の分析やそれに合わせた戦術の構築とトレーニングなどを行わないといけない。場合によれば、メディア対応や対外的なコンタクトも必要になるでしょう。見た目以上にかなりのハードワーカーなのです。少なくともこのレベル(JFLクラス)だと、これくらいこなさないといけないでしょう。逆にもう一つランクが上がる(J3)と、スカウティングとかコンディションケアは専門のスタッフが付くでしょうから負担は減るでしょう。その代わりと言えば成績ですぐに責任を取らないといけないですし、それ以前の問題として彼はまだS級のコーチライセンスを取得していないので、そもそも論としてJ3に行ったら監督は出来ないのですがね…
当然、勝つだけを考えれば監督自ら前線に張ってガンガン点を取ってしまえばいい、ということになるかもしれません。でも、ピークをとっくに過ぎた元日本代表選手がそう簡単にバカスカとゴールを決められるレベルのリーグではなくなりつつあるのも事実です。おそらく、他の選手へのマークを軽減させるために試合に出てプレーしている、そしてそんな若手が成長しなければチームの行く末も怪しくなることを十分に理解しているし、JFL自体がそんな簡単なリーグではないことも十分理解しているからこそ、自らがピッチに立つという選択肢を取っているのだと思います。

高原監督がJFLでもFWでプレーしたとして、
果たしてこんなエグいゴールを量産できるのか…

前回お話ししたCento Cuore HARIMAの佐野監督は、そもそも戦術的なコーチングが上手くこなせてないので、自らがピッチに立つことで選手の手本となろうとしているのではないか?という見解でしたが、今回の高原監督の場合はちょっと事情が違うのかな?と思うのです。というのも、頭の回転の速さや戦術眼、サッカーに対する真摯すぎるくらいの姿勢、さらには素晴らしいくらい高い人間性をも兼ね備えている高原監督であれば、彼の伝えたい事は日頃の練習やミーティングなどで十分伝わるでしょうし、若手選手の育成にしても日常のトレーニングで十分ではないでしょうか。無理にピッチに立ってプレーすることなく、ベンチで指揮を取ればいいはずなんですが、彼はそれでは良しとしない。若手の育成には自らが率先してピッチの上で手本となる必要がある、自分もそうして見様見真似で成長していったのだから、それが一番いい育成方法打法、そう感じるからこそ彼はピッチに立ち続けるのではないでしょうか。彼のストイックであるからこその、彼が理想とした指揮官の姿がそこにあるのでしょう。

高原監督のダブルタスクにはそれなりのリスクが潜む

しかしそれはまた、マイナスの要因にもなりうるのではないかと危惧するのです。それは「高原がいないと何も出来なくなってしまう」ということです。彼が一列下がってパスを出したり、相手のマークを引きつけたりするのは戦術的に全然問題ないですし、そうすることで周りの若い選手たちがプレーし易くなるのはチームにとってプラスです。しかし、あまりにもそれに固執してしまうと今度は高原に対する負荷が大きくなるのと同時に、高原がいない時に誰がパスを出すのか?誰が相手のマークを引きつける動きをするのか?となってしまい、みんなが何をやればいいか分からなくなってしまう可能性があります。つまり、高原への依存度が高ければ高いほど「高原ロス」の状態に陥る危険性が高くなります。実際、後半途中で高原が交代してからは攻撃の形がややバラけてしまい、かえってソニー仙台の守備も混乱を来した側面もあったが、攻撃に怖さが消えてしまっていたように思えました。
さらに、高原の代わりを誰がやるのか?ということも、いずれは考えないといけない大問題です。彼くらいのレベルの選手の代わりはそうそういません。それは当然なんですが、今から高原がいない時のフォーメーションなり戦術なりを実戦で試していかないとこちらも今後、大惨事を招くことになりそうです。
高原が今、選手として担っている役割としては「パスの供給源」と「相手のマークを引きつける」こと、それと出来れば得点も取って欲しいというものでしょう。その役割を担える存在の選手を探していくと、パスの供給源として考えられるのは、今年仙台大学から来た冨久田でしょうか。マークを引きつける役目としては、この日スタメンで出る予定でしたが直前でエントリー変更で出場しなかった一木、もしくは代わりにスタメン出場した山田あたりになるのではないか。得点源としては先ほども出ましたが大学時代に3年連続得点王だった儀保になるでしょう。
儀保に関しては、今の起用法ではまず得点を挙げるというところまではいけないと思うのです。守備の負担のあるサイドアタッカーではなかなかシュートまで持って行けないです。彼にゴールを期待するのであれば、前線で張ってもらうしかないというのが個人的な意見です。

サイドだからスローインをするのも分かるけど、
君は本来ここにいてはいけないんです!
君はこのスローインを受ける位置にいないと…
そうそう、僕は君のこういう姿をもっと見たいんだよ…

一木については、正直学生時代もプレーは見てませんのでなんとも言えないのですが、身長だけを考えると十分高原の代わりは務まると思うのです。あとは経験値の問題だと思います。山田もまだまだ力不足の感は否めません。今後の成長に期待したいです。

ゴール前で味方からのクロスを待つ11番山田。
後半、積極的に仕掛けに行く山田。
動きの質やポジショニングを磨けば化ける可能性も?

ボランチにいた冨久田ですがこの日も仙台大学時代ほどではないものの、守備に追われる時間が長かったのでなかなか持ち味が発揮されなかったと思います。でも、新人ながらもプレースキックのキッカーを務めたりと、明らかにチームからの信頼は得ているはずなので、もう少し積極的にプレーしてもらえると、高原監督が後半途中から出ても大丈夫な状況になるのではないでしょうか。そうなればチーム力もグンとアップするでしょうし、自ずと順位も上がってくるかと思います。

セットプレーのキッカーも務める20番冨久田。
今後はボランチから積極的なプレーに磨きをかけたい。

選手の成長の為に必要な「辛抱」

JFLに昇格するまでは確かに高原の力が必要だったかもしれません。でも、彼もいつまでも現役でプレーし続けるわけにはいかないし、JFLはそれが出来てしまうレベルのリーグであってはダメなのです。でもそれが、それなりに出来てしまっているリーグもそうですが、それを受け入れてしまっている沖縄SVもやや問題ではないでしょうか。若い選手たちにはもっと奮起してもらい、高原がベンチで「もっとしっかりやれよ〜」と90分ベンチで声を出してぼやくくらいのチームになってもらわないといけないのです。高原にとってはとてももどかしいことかもしれませんが、選手が成長していくことがチームの成長となり、チームが成長することこそがチームが大きくなるための必須要件です。彼が活躍した磐田もそうやってチームが大きくなり、そして一時期の黄金期を迎えることになったことを思い出して、高原監督にはちょっとの辛抱をしていただけるといいのかな?などと思うのです。

途中交代してベンチから戦況を見つめる高原監督。
後ろ姿に不安と物悲しさを感じてしまうのは気のせい?

選手と監督の両立は果たしてありか、なしか?という問題。チームによってそれぞれ事情は異なりますが、もちろん一定期間の過渡期のチームであればアリでしょうが、成熟しつつあるチームだったり、あるいはレベルの高い全国リーグにまで来たら、やはり専任で務めるのがベストというのが正解なんでしょう。実に月並みな回答でなんの面白みもありませんが、これが現実のようです。と同時に「なぜ選手と監督が別々なのか?」という素朴な疑問に対する答えでもあるのかもしれませんね、但し高原直泰のようなスーパーマンはさておき…(笑)
てか、高原さんって選手と監督のダブルタスクに飽き足らず、沖縄SVのCEOでもあり、さらには大規模コーヒー農園のオーナーでもあるんですよね。ここまで来たらいっそ選手兼監督をやりながら、まだチームにいないS級のコーチライセンスを取得すべく、ライセンス講習に通うってのもありなんじゃない?何かね〜、彼なら涼しい顔して難なくこなしてしまうんじゃないかな?って…←いくら「スーパーマン」でもさすがに過労死してしまいます(笑)

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