資金難に苦しむ定通制サッカー大会を通じて、令和の部活動の在り方についてちょっとだけ真剣に考えてみた、というお話

去る7/29に清水で開催されていました、全国高校定時制通信制サッカー大会を見てきました。以前ご紹介したことがあるので、なんとなく記憶に残っている方もおられるのではないでしょうか。

今年、4年ぶりの有観客開催ということでしたが、現地に行って初めてこの大会の開催自体が危機的状況に陥っているということを知りました。それについてはSNS経由で情報を流したところ、かなりの反響がありました。多くのリツイート(今はリポストですね)もあり、情報の拡散にご協力いただきました。改めて皆様方にはお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
私自身、この大会に何の縁も所縁もありませんが、この大会が実に多様でおもしろいことから、このようにことあるたびに皆さんにお伝えしております。
SNSでの情報拡散をご存知ない方のために簡単にお話ししますと、コロナ禍に入って今まで出ていた補助金が今年は激減したそうです(詳しい金額まで伺いましたが触れないでおきます)。このままでは今年の大会は赤字になるそうで、さらに今後の大会ももしかしたらあと3回開催できればいいところになるかもしれない、とのことでした。今回は会場で支援金を募ってなんとか凌ごうとしていますが、なかなか厳しそうな雰囲気でした。

会場で支援金を募る募金箱の内容。
関係者の方の承諾を得て、情報を拡散させていただきました。

そんな、今後の開催が危ぶまれている全国高校定時制通信制高校サッカー大会。まずは改めて、どんな大会でどんな魅力や面白さがあるのかを知ってもらうことが大切なので、そのあたりをちょっと深掘りして見たいと思います。

定時制や通信制の高校は社会問題と密接な関係にあります

さて、ここまであまり明るくない話題をしてきましたが、先にも触れたように私はこの定時制通信制サッカー大会とは何の縁も所縁もありません。が、そんな私がなぜここまでこの大会のについてここまで強く推しているのかというと、この大会を見れば見るほど今の社会問題を投影しているようにも思えるのです。ということで、次にどのような問題が見え隠れしているのかという点についてお話ししていきたいと思います。もう少しだけ、堅苦しいお話しにお付き合いください。

まずは、定時制高校や通信制高校についてお話ししておきたいと思います。知っているようで意外と知っていないことも多いかと思いますので…。
定時制高校というと一昔前は、ヤンキーや不良が学力も低く内申点も悪く、そもそも全日制の高校に入れないので仕方なく通う、というイメージかもしれません。しかし最近は、そういう学生ばかりでもなくなっています。というのも、最近の傾向としてはシングルマザーの家庭や貧困層の家庭の子たちが、全日制の高校ですら学費が払えないなどの理由で定時制の高校に通うケースが増えてきています。貧困世帯の増加という社会問題がここに投影されているのです。
また昔は定時制といえば夜間、というイメージが強いと思いますが、今は昼間の定時制課程や学校によっては午前、午後、夜間の3部課程というところもあります。労働環境の多様化という側面もありますが、学生の中にはコンビニの夜勤だったり警備のバイトをしながら通う子たちもいるので、そうした多様な教育課程になっているのが最近の特徴と言えるでしょう。
また、一度は全日制の学校に入学したが何らかの理由で休学や退学せざるを得なかった学生たちが、再び高校に通おうとすると全日制よりも定時制を選択するというケースがほとんどです。同世代の地元の子たちのほとんどが通う全日制とは違い人間関係がそれほど深くなく、大学進学も視野に入れた学生にもちゃんと対応できて、さらに夜間の定時制と違い3年で教育課程を修了できるというメリットがある点が、近年昼間の定時制高校が増えてきた要因ではないかと思います。
さらには、ここ20年くらいで急増した日系人を含む外国にルーツを持つ子たちが通うことが多いのも特徴です。そうした外国ルーツの子たちは日本語の基礎能力が低い場合が多く、特にそうした外国からの労働者の多い地域の定時制高校では、通常のカリキュラムに加え日本語の基礎学習のカリキュラムが組まれています。貧困層学生、退学や不登校からのリスタート組、さらに外国ルーツの子たち。現代社会に潜むさまざまな社会問題の只中におかれた子たちにも細やかに対応している、そんな多様な高等教育機関が定時制高校の特徴と言えるでしょう。

とはいえ近年では、どんどん数が減る一方の定時制高校。それに対して最近増えているのは、通信制高校です。通信制高校とは、事前に与えられた教材や課程を自宅等で行い、週に1日か2日程度登校してスクーリングという形の授業を受けて高校の卒業資格をもらうというスタイルです。昔はほとんどが公立の高校でした。もちろん通信制高校単独の高校もありますが、その大多数は全日制や定時制のある高校に併設されていることが多かったです。また、古くからある私立の通信制高校としましては、定時制高校でもある科学技術学園があります。全国各地にキャンパスを持つ通信制課程が併設されていて、学校教育法に定められた「技能連携制度」によって、企業内学校や専修学校とダブルで通える学校として運営されています。
最近増えているのは広域制通信制高校と言われるものです。前述の科学技術学園もそうですが、広域制通信制高校を運営している学校の本部のある地域と、それとは別の違う地域にもキャンパスを設けたりあるいはその地域にある別の学校法人と提携することで、同じカリキュラムを遠く離れたいろんな地域でも受けることができるようにしたのが広域制通信制高校です。こちらはほぼ全て私立の高校で、有名なのは近年甲子園にも出場したことのあるクラーク記念国際高校(本部は北海道深川市)や、屋久島に本部のあるおおぞら高等学院などがあります。
また、広域制通信制高校の特徴として、全日制の高校が全国各地にキャンパスを開いて(提携して)運営しているということ。サッカーで有名な神村学園や鹿島学園なども全国各地にキャンパスを開いて、通信制高校の運営を行っています。特に神村学園は、各キャンパスごとにスポーツや芸術に特化した専門的なカリキュラムを組むことで生徒を集めたりしています。実際、この大会にも神村学園福岡キャンパスや仙台育英学園沖縄キャンパスなどが出場したことがあります。

仙台育英学園沖縄キャンパスが出場した時の写真。
見えづらいですが、左胸にはライオンの紋章があります。
こちらは神村学園福岡キャンパス。
本校とはデザインは違いますが、胸にはKAMIMURAの文字。
4年前の大会会場に掲示された組み合わせボード。
神村学園や仙台育英以外にもクラーク記念国際の校名も…


では、なぜここまで通信制の高校が近年増えていたのか。一つの要因として考えられるのは、小中学校における不登校学生の増加です。何らかの理由で不登校になり基礎学力が他の子より劣ったり、また内申点が悪いために全日制の高校に入ることができない中学生が増えています。その不登校の理由が例えばいじめとかの場合だと、仮に地元の全日制や定時制の高校に進学したとしても、そこには通いたくないと思う子がほとんどでしょう。なぜなら、いじめていた当事者が通っているかもしれないし、またいじめられていたことを知っている同級生などがいると、また不登校になってしまうかもしれない。そういう子たちが広域制の通信制高校に多く通うと考えられます。また、これも近年多く見られる発達障害や学習障害などの子たちのような、毎日学校に通って教室で勉強をすることがやや困難な子たちが、通常では通うはずの特別高等支援学校ではなく、大学進学も視野に入れて広域制通信制高校を選択するケースが増えているかと思います。定時制高校と同様、多種多様な学生を受け入れる高等教育機関としての役割を果たしているのが、この通信制高校と言えるでしょう。

定時制通信制サッカー大会はダイバーシティな大会?

そんな定時制や通信制の高校には、多種多様な環境で育った子たちが集まっています。そんなダイバーシティな高校のサッカー大会ですからガチでサッカーをやりたい子たちから、趣味程度だけどなんとなくサッカーをしたいといったライトな子たち、また必ずしも高校年代の同世代とは限らず年齢層もまちまち、さらには原則男子単独チームですが特例で女子選手の登録もOKということで、男女混成で参加しているチームも何チームもありました。実際、現地で確認できただけでも4チームに5人の女子選手を見かけましたし、そのうち4人はスタメンで出場していました。4年前に見た時もそうでしたが、そんなに男女間でプレーの質に差があるようにも感じませんでした。能力と競技性の高い女子選手と、それほど競技性の高くない男子選手との混成チームであれば、ある程度は対応可能ではないかという印象でした。高校年代3年間所属するチームがなく、サッカーから離れてしまうマイナス面を考えると、特例ではあるもののこれもありではないでしょうか。このように年齢や出生、さらには性別をも超越した、まさにダイバーシティな大会で見ていて純粋に楽しめる大会です。

学悠館(栃木)のスタメンとして出場した女子選手。
2点目のゴールを決めた、はずです。
福岡城西学園福岡の女子選手はセットプレーのキッカー。
精度の高いキックを見せてくれました。

この大会が何の障害もなくうまく開催されている裏には、そのような多種多様な価値観を広く受け入れようとする土壌があるからこそであって、それこそが今あるさまざまな社会問題の解決の糸口になり得るのかもしれないと思うのです。シングルマザーの家に生まれてきたとしても、それでもって勉強することを否定されることは決してありませんし、また親が外国からの出稼ぎ労働者でそのために日本語の読み書きがあまり得意でなくても、それがゆえに高校に入学するのを諦める必要はありません。軽度であったとしても、学習障害や発達障害のために学力が伴わなかったとしても、特別支援学校以外は通ってはいけないということもないのです。ダイバーシティの重要性を叫ばれながらも、そのダイバーシティな環境に対して、社会全体がどこまでそれを許容できているのかというとあまり許容できていないのが現実です。
また、ジェンダーフリーも声高に叫ばれるがそれを許容できるだけの社会にはやなりなり得ていないのも事実です。今の日本では、特に中学高校年代で女子サッカーを続けていけるだけのチームが少なく、ジェンダーフリーの観点からすれば、明らかに日本のサッカー界は立ち遅れていると言えるでしょう。そんな中、この全国高校定時制通信制サッカー大会は不登校や貧困家庭、外国ルーツの生徒や、さらにはサッカーをやりたくてもチームがないために出来なくて悩んでいるサッカー女子、そういったさまざまさなバックボーンを持つ生徒たちが、共にサッカーをすることで自分たちの存在意義を実感できる、共感し合える。プレイヤーからするとそんな大会なのかもしれません。

強豪の相模向陽館(神奈川)に10人で立ち向かった西脇北(兵庫)
先制、勝ち越しと常にリードしていましたが、
PK戦の末、惜しくも初戦敗退となりました。
2021年の準優勝以上の成績を目指した相模向陽館。
このまま勝ち進むも、ベスト4での敗退となりました。
試合の合間にちょっとだけ見た長尾谷(大阪)vs烏城(岡山)
長尾谷高校はG大阪と提携、ユースの選手も通う学校です。

資金難に直面する大会。いかに大会資金を確保するか…

そんな大会ですが、冒頭にも書いたように大会の資金難から今後の開催が危ぶまれています。もちろんコロナ禍以前もそんなに金銭的にゆとりのある状態ではなかったとは思います。それでもなんとかギリギリ赤字にはならないくらいで収まっていた。おそらくそれが実情ではなかったかと思います。これは何も定通制サッカーに限らず、他の大会でも似たようなことが起こっているのではないかと思うのです。
簡単な解決策なんてそうそう見当たるわけでもないのですが、一番いいのは大会スポンサーを見つけることです。でもスポンサーに付いてもらうためにはそれなりの知名度が必要ですし、仮にそれがなくても広く大会をアピールするだけの何らかのリソースが必要となります。現状、残念ながらこの大会にはそこまでの知名度はなく、さらに広くアピールするだけのリソースを持ちえているとも思えません。
スポンサーが難しいとなれば、じゃあどうやって資金を集めるのがいいか?となると、一番現実的なのはクラウドファンディングではないでしょうか。最近はありとあらゆるジャンルでクラウドファンディング、いわゆるクラファンが広く活用されています。僅かな金額設定のものから、美術品や建造物の修繕、補修、あるいは学術的なプロジェクトなどの設定金額が何千万、何億といった超高額のものまで様々です。しかもクラファンの運営サイトにお願いすれば、初心者でも簡単に実施することができます。詳しい知識がなかったとしても手軽に資金集めが可能です。そんなクラファンこそ、この困窮した現状を打破する最善策ではないでしょうか。
ただ、クラウドファンディングをするとなると返礼品をどうするかが問題になります。しかし、そんな大袈裟に考えなくてもいいでしょう。例えば大会のパンフレットなどでも全然OKだと思います。むしろ、変にこのために凝ったものを用意する必要はないでしょう。実はパンフレットのような、関係者からすると大して価値のなさそうな物ほど、意外と人気があったりするからです。または大会の記念Tシャツやタオルのような、実際に会場で販売しているものがあればそれを活用するのもいいでしょう。通常よりもちょっと多めくらいであればそんなに費用も掛からないですし、パンフレットのようなチームや関係者に頒布するものであればなおさら、前もって部数を増やして刷っておけば、クラファンの返礼品として十分対応できるでしょう。
もちろん一番いいのは、前述しているように大会スポンサーを見つけることですが、繰り返しになりますがスポンサーを見つけるには、まずは大会の知名度を上げることが必要ですし、そんなにすぐに知名度が上がるものではありません。クラウドファンディングを行うことで、サッカーに詳しい人ですらほとんど知られていないこの大会の認知度を上げる。そうすれば、何らかの支援の手が差し伸べられる可能性も生まれてくるでしょう。資金調達という意味でも、また認知度の向上という意味でも、大会資金の補助を目的としたクラウドファンディングの実施は有用ではないかと思います。

クラファン以外の資金調達のウルトラCはあるか?

クラウドファンディング以外の方法として、大会のスポンサー獲得に直接繋がるかは別として、大会の運営に活用できそうなウルトラC的な案があります。この大会は昔から清水市、今の静岡市清水区で開催し続けているのですが、実は募金を集めていた関係者の方が「全国大会なので、出来れば天然芝のグラウンドで開催したい。そのために、清水でなんとか探しているんです」とおっしゃっていました。
ならばいっそダメ元で清水エスパルス、株式会社エスパルスさんに協力をお願いしてみるのもありなのではないでしょうか。現在開催している会場は、今回訪れた清水蛇塚スポーツグラウンドと清水ナショナルトレーニングセンター(J-STEP)の各2面、計4会場と、決勝を行うIAIスタジアム日本平です。もし清水エスパルスに大会に協力してもらうことが可能ならば、三保にある清水のグラウンドを大会の会場として安く(あるいは無償)提供してもらうことが出来るかもしれないです。そうすれば、今使用している試合会場を借りるのに掛かる費用分だけ抑えられますし、清水エスパルスが大会に協力することで大会のスポンサーに名乗りを上げる企業も出てくる可能性もあります。あるいは、清水エスパルス自身が大会のスポンサーになる可能性もゼロではないでしょう。
元々清水はサッカーに対する理解が非常に高い土地です。街全体でこの大会を支えようという流れが生まれるだけのポテンシャルは十分あるでしょう。今はまだ、清水のサッカー界の中でもごくわずかな人たちだけでなんとかしようともがいている状態だと思います。それをもっと大きな動きに変えていければ、一気に好転するかと思いますし、それだけの街の力を持っているのが旧清水市である、清水の町だと思います。

問題解決の障害となりうる「部活動」という壁…

こう考えると案外問題解決も十分あり得そうな雰囲気ではありますが、実はそうでもないのです。この解決法に大きく立ち塞がるのがこの大会がそもそも「部活動」の全国大会ということです。
近年、JFA主催の全国大会であるプレミアリーグやプリンスリーグといった公式戦では、高体連所属のチームでも胸や背中などに商業スポンサーの入ったユニフォームを着用するケースが増えてきました。特にプレミアリーグになると移動距離も尋常ではなくなるので、それを部活動の経費だけで賄うのは非常に厳しいです。そういう背景もあって高体連の強豪校、特に私立高校の場合は胸や背中、パンツの裾などにスポンサーを入れることで、その費用的な負担を軽減しようとしています。去年くらいからでしたか、公立校の市立船橋のユニフォームにもスポンサーが入ったと話題になったりもしました。今や、スポンサー入りのユニフォームに私立も公立もなくなったと言ってもいいかもしれません。
しかし、プレミアリーグではスポンサー入りのユニフォームを着用していた学校も、総体や選手権ではスポンサーのない通常のユニフォームで公式戦を戦っています。なぜかというと、高体連が商業スポンサーの入ったユニフォームの着用を禁止しているからです。教育課程の一環として捉えられる部活動から商業的なものを排除するということでしょう。教育上、相応しくないとの判断からでしょう。
そのような考え方の高体連が主催する高校総体の定時制通信制高校版のサッカー大会なので、当然ながら大会にスポンサーを付けるということはまず認められないでしょう。もっというと、スポンサーではないものの寄付と商業的な要素の中間に位置するようなクラウドファンディングも、もしかしたら高体連的にはアウトなのかもしれません。

そんな高体連の主催する全国高等学校定時制通信制総合体育大会ですが、実は公益財団法人JKAという団体から毎年補助金を貰っています。この「公益財団法人JKA」とはどんな法人かというと、公営競技の競輪とオートレースの団体なのです。つまり、公営競技の収益の一部が大会運営に活用されているのです。この補助金は、全国高等学校定時制通信制総合体育大会に付与されているもので、サッカー競技にもその一部が使われていると思われます。
もし、商業スポンサーが教育の一環である部活動に相応しくないというのであれば、それよりももっと射幸性の高く教育上相応しくないと思われる公営競技の収益から補助金を頂くというのは、それこそアウトではないでしょうか。でもこの補助金がないとサッカー競技はおろか、他の競技の開催にも支障をきたすと考えると、おそらくそんなことも言ってられないのでしょう。
これは何も定時制通信制大会に限らず高校総体でも金銭ではないにしろ、某飲料メーカーが大会全体のドリンクサプライヤーとなって大会のドリンクを提供したり、また競技別でもボールやその他の機材のサプライヤーとして各スポーツ用品メーカーが協賛として提供したり、あるいはタオルやTシャツといったグッズの販売をしたりしています。もはやこのような商業ベースでの関わりを一切排除して、このような大きな大会は開催できないのです。
さらに付け加えれば、定時制高校に通う学生がこうして高校に通え、さらに部活動にも励むことができるのはひとえに勤め先であるそれぞれの会社や工場のご好意と協力があってこそのこと。そのような企業の協力がないとこの大会自体が成り立たないのです。そういう意味でも、特にこの大会と商業ベースとの関わりは切っても切れないものと言えるのではないでしょうか。

教育現場にお金の話はタブー、はすでに過去の話?

さらに教育現場においても、今ではお金の話はタブーでもなんでもなくなっているのです。というのも、高等学校の教育課程において2022年度から金融教育プログラムが義務化されました。保険やローン、家計のやりくり、資産運用などのお金に纏わる様々なことを高校の授業で行うようになったのです。厳密に言うと「金融教育」というわけではありませんが、部活動を行うにあたってどれくらいのお金が必要で、それをどうやって調達するのか?というのは実務的な金融教育に他ならず、もっと言うとこのようなレベルの話は昔から商業高校では当たり前のように高校1年の時から学ぶことです。個人的には今更感はありますが、このレベルでさえ学校の教育現場、特に部活動ではタブー視されているのが現実です。もちろん、学生が直接的に資金の調達を行うのはなかなか難しいかもしれませんが、それも大学生ならごく当たり前に行なっていること。わずか2、3歳の差だけでそれをタブーとする明確な理由を見出すことが全くできないのです。
つまり、これまでのように「学校の教育現場でお金の話をするのはタブー」というのはもはや幻想でしかなく、それは学校教育の一環と捉えられている部活動においても同じと考えられるでしょう。
かといって、ありとあらゆる商業スポンサーをOKにするのも、これまた難しいでしょう。しかし少なくとも大会スポンサーとして単体、あるいは複数のスポンサー契約を容認する流れにならないと、このような資金難に直面した大会の運営が今後困難になりかねません。そして、そうなってからではもほや遅いのです。一刻も早くまずは大会スポンサー、あるいはクラウドファンディングのような短期的な資金確保の手段を講じることが出来るような柔軟な対応が可能にならないといけないでしょう。
何も定時制通信制サッカー大会だけが資金難に苦しんでいるわけではありません。その他の大会も同様に資金の調達に苦慮していることでしょう。インハイや選手権と言った誰もが聞いたことある、知っている大会はそれほどでもないかと思いますが、それ以外の高校年代の大会は総じて苦しんでいると思います。特に関東大会といった地域別の大会などは大変ではないでしょうか。全体的に協会などから支給される補助金も、このコロナでかなり減額されているかと思われます。少なくなった補助金の割り当ての優先順位は、どうしてもメインイベントのインハイや選手権に偏るでしょうから、それ以外の大会に回ってくる額は以前よりも明らかに少なくなっていると考えるのが筋だと思います。
そしていずれは、そんなメインイベントにもその流れは波及してくるでしょう。今年からインハイは北海道での固定開催となりました。北海道開催となると、ほとんどの出場校の開催地までの移動は飛行機となり、今まで以上の負担を強いられることになります。基本的にはその全てを出場校が負担することにはなってますが、それでも急遽必要になった部分(特に現地の宿泊費や滞在費)などの不足分は大会側の負担になるでしょう。少なくとも、関係者や競技役員、レフリーなどの交通費や滞在費は大会運営側が負担することになります。つまり、北海道開催に変わることで今まで以上に主催者負担は確実に増えるということになるでしょう。おそらく今より多くの大会運営費が必要となることは間違いないでしょう。
それでもメインのインハイと選手権に補助金の多くを注ぎ込むのであれば、それ以外の大会には資金調達の流動性を持たせないといけないでしょう。高体連主催大会への大会スポンサーの一部解禁か、もしくは全面解禁に踏み切るか。いずれにしても、そのような動きを見せないと本当に大会自体の存続が危ぶまれます。

部活動やアマチュアだからといって、お金の話ををしないのはもはや時代遅れ

普段、何気なく開催されているありとあらゆる大会。その大会全てに関わる関係者の方々の多大なる努力と尽力には、常々頭が下がる思いです。そのような方々がいらっしゃるからこそ、選手も観客もサッカーを楽しむことができるのです。そして、それにはそれ相当のお金も必要です。「アマチュアがお金の話をするのはいかななものなの?」「部活動にお金の話を持ち出すのはナンセンス」などという時代は、もうとっくに終わりました。今は「アマチュアでもいかにお金を集めてくることができるか」「部活動でもお金はかかるんだから、なんとかしてスポンサーや協力企業を探そう」という時代です。
感染拡大が懸念される去年や一昨年も、いろいろと工夫をしてなんとか開催は出来たこの大会。お金がないからという理由で開催が出来なくなるという最悪の事態だけは避けないといけません。高体連の偉い方々もそんな時代遅れなことを言わずに、資金調達のためにスポンサーを認めるようにしてもらいたいです。そうじゃないと、ここに集まってきたサッカーをやりたい子たちが浮かばれなくなってしまいます。彼らが楽しそうにサッカーが出来る環境を残すために、そしてそんな悲しいことになる前に、ありとあらゆる手立てを講じられるように柔軟な対応が出来るように取り計らっていただきたいものです。

PK戦となった相模向陽館vs西脇北。
西脇北4人目のキッカーはキーパー。
しかし、ボールはバーに当たり痛恨のミスキック。
直後のキックも決められて、5人目のキッカーに託します…
西脇北5人目のキッカーも枠を外して、
5人目が蹴ることなく相模向陽館の勝利が確定。
キーパーに駆け寄る西脇北の選手。
10人で臨んだ全国大会が終わりました…
城西学園福岡、長尾谷を破ってベスト8入りした阪神昆陽。
非常にレベルの高いプレーしていたのが印象的でした。

レベルやカテゴリーはどうあれ、サッカーをやる高校生たちにその機会が失われるようなことは絶対に避けたいと、あらゆるサッカー関係者が思っていることでしょう。そのためには、大人たちが何が出来るかの知恵を振り絞って、なりふり構わずに取り組むことが大切でしょう。そして、そういう大人たちの姿を見た学生は何があっても諦めないということがいかに大切かを学ぶ良いきっかけにもなるでしょう。過去の慣習や変なプライドを捨てて、困難に立ち向かう大人たちの姿を今こそ見たいと、そう思うわけです。

みんながサッカーを楽しみ…
みんなが喜びを分かちあい…
みんな分け隔てなく公平にプレーできる場を設ける…
そんな明るいサッカー界に、みんなでしていきましょう…


追記
本文中で「高校総体が来年から北海道開催で固定」と書きましたが女子だけ北海道開催固定で、男子は福島開催(Jヴィレッジ)固定でした。とはいえ、一度減った補助金がそう簡単に増えるわけはないので、資金のやりくりに苦慮する将来には変わりないかと思います。

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