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知能検査WISCって何?

子どもの能力を把握する一つの指標として知能検査による知能指数があります。学校間連絡会などでWISCのIQや下位検査の指標などが伝えられることもあります。これらはどういったものでしょうか。


知能検査とは

実は知能の定義は難しいです。大雑把に言うと、物事を考え処理して何か目的を達成するための能力、といった感じです。そして、そんな曖昧な概念である知能を客観的な数値で表したものが知能指数(IQ)です。つまり、知能指数を算出するための道具が知能検査です。

知能検査は、IQ100が集団の平均となるように調整されています。そして、IQ100を基準として、85〜115の間に集団の約68.2%が位置し、70〜130の間に集団の約95.4%が位置するように設定されています。これは正規分布を仮定しています。このうち、知的に厳しいだろうと予想されるのはIQ70以下が目安になります。

知能検査WISCで測れる力

知能といっても、様々な側面があり、多面的な能力と考えられています。知能検査によって根拠とする理論が異なり、測り方が違います。しかし、どの検査も知能を多面的に捉えようとする考え方は共通しています。

WISC(ウィスク)は正式名称を『児童向けウェクスラー式知能検査(Wechsler Intelligence Scale for Children)』と言います。WISCも、多面的に能力を測ることができます。4訂版のWISC-IVでは大まかに、言語の理解力や語彙力、情報を一時的に保持したり保持しながら考えたりする記憶力(ワーキングメモリ)、情報の処理速度、パターンから規則を見出すなどの推論能力、の4つの指標を測ることができます。

それぞれ、検査全体のIQ(FSIQ)に対し、以下のような名称です。

  • 言語理解(VCI)

  • ワーキングメモリー(WMI)

  • 処理速度(PSI)

  • 知覚推理(PRI)

なお、WISCの最新版はWISC-Vですが、まだそれ以前の版を使用している機関も多いのでWISC-IVについて紹介しました(最新版のWISC-Vについてはこちら)。

知能検査の活用方法

では知能検査の結果はどう活用されているのでしょうか。

学業成績が予測できる

誰がどんな根拠で作ったかよく分からないお遊びの恋愛心理テストなどとは違い、知能検査は妥当性信頼性の非常に高い検査です(信頼性と妥当性についてはこちら)。そのため、学習における困難さを予測する根拠として強力です。

IQ70付近やそれ以下の子どもは、高学年になればなるほど学習が厳しいと予想がつきます。具体的には、小学4年生から多くなる抽象的思考や概念の理解が厳しかったり、身につくまでに時間がかかったりすることが予想されます。

能力のばらつきが把握できる

多面的に能力を評価できるのもメリットです。複数の指標があるおかげで、苦手と得意を明らかにすることができます。また、各指標の能力差が著しいために、IQ的には平均以上なのに困難を抱えていることが判明することもあります。能力の凸凹が著しい状態は、ディスクレパンシー(discrepancy)と呼ばれます。

能力の凸凹は、たとえるとアクセルが効きすぎてブレーキの効きにくい車です。このような車は、非常に運転しにくいでしょう。つまり、特出した能力があったとしても、極端なアンバランスさのために困難さを抱えることがあるのです。知能の偏りが大きすぎる場合、様々な語彙はもっているのに処理能力が遅くて集中力に困難を抱えている、パターンを見出すパズルなどの処理能力に長けているが言葉の意味があまり分かっていない、などの特性が明らかになることがあります。

特別な配慮の根拠になる

他のスクリーニング検査と合わせて実施された結果を元に、発達障害などの診断書が下りる際の判断材料の一つにもなります。

読み書きに困難さを抱えている子どもは、情報の処理速度やワーキングメモリが低く出るなど、発達障害をもつ子どもで特徴的な検査結果パターンがこれまでに見出されています。

まとめ

学校間での引き継ぎの際に知能検査WISCの数値について情報提供があることがあります。子どもの姿を捉える際の一つの根拠になるのが知能検査です。知能検査とその下位検査の数値を見ることで、困難さや能力の特徴を把握することができます。子どもの姿を捉える際の一助になる重要な指標です。

引用文献


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