驚きの小金井市長選挙-市外者の為のちょっとした解説-
12/8は小金井市長選挙の投票日でした。どうも市外の人にはわかりにくい選挙であったようで混乱があるように思います。あるところでは京都市長選挙と引き合いに出されたり、あるところでは、国政与党の支持率低下と関連付けられたり。あまり書く気はなかったけれど、少しだけ詳しい身として少しだけ書きます。
西岡 真一郎(現職・旧民主党出身) 18,579
かわの 律子(自公維推薦) 10,759
森戸 よう子(共産党出身) 10,399
立花 孝志 (N)678
1.現職・西岡候補が大勝した理由
この結果にはびっくりですが、西岡さんが勝った理由は、今思うといくつかあるのかな、と。一つ目は、西岡さんは唯一の地元育ちの候補で地縁が強く、商工会や医師会の政治団体に象徴されるような保守系からも支持されていたことが挙げられます。同時に行われた市議補選の結果を見るに5000票近い保守票をひきつけたものと思われます。
もともと、保守系の前市長の稲葉氏と親しかったとも言われています。稲葉市政の末期、長年市庁舎用地として用意していた場所ではなく駅前再開発地域に変更しリースの庁舎も買い取るという計画変更を突如発表、反対する運動が巻き起こり1万筆の署名とともに撤回させるということがありました(反対運動とともに動いた議員の一人が後述の森戸氏)。このことを受け、旧民主党は稲葉市政を批判する立場に転換、稲葉氏と西岡氏の親しい関係は幕を閉じたわけです。西岡氏を保守系として見る向きもあり、また、西岡氏も国政の旧民主党系とは距離を置いてきました。政党色を消した選挙で国政の評価が反映されたとは言えないと思います。
二つ目に、市民派含む非自公系の一部が消極的な西岡氏支持に回ったり特定の候補を応援しない立場に立ったことが挙げられます。西岡氏は市議会では少数与党であり、議員24人中5人しか市長派がいない状態でした。つまり、自公・共産党・その他左右中道の無所属から批判を受ける状態であった訳です。2回の問責決議、猛省を促す決議のような物申す決議もしばし、予算案が否決され暫定予算で始まった年もあり、最近の決算も2年連続で不認定という状態でした。詳しい説明は避けますが、色々なことで批判をうけていました。
小金井では12の会派があり多くの無所属(一人会派)議員がいます。その中に保育・教育・介護といった生活の問題を取り上げてきたいわゆる市民派と呼ばれる議員も3~5人ぐらい含まれます。保育の民営化推進等で西岡市政を批判する立場であり、後述の第3の候補を擁立する動きに共産党とともに加わっていました。しかしながら、今回の選挙で第3の候補を立て応援することで、票が割れ保守市政が戻ることを危惧する議員や支持者が、この動きから離れ消極的な西岡氏支持や特定候補不支持に回りました(共産党との距離感も影響しているかなと思います)。もちろんただで応援に回った訳ではなく、婦人相談員の非正規化などの懸案については、態度の変更等を迫ったようです。
代表的な人物としては緑の党グリーンズジャパンの運営委員であり前回の都議候補でもあった漢人氏や、前回の市長選挙の候補であり市議選挙ではトップ当選を果たしたマニュフェスト運動系市議の白井氏が挙げられると思います。
漢人氏
白井氏
表に立った応援というのは特になかったとはいえ、影響力のある反市長派からの中立・消極支持のメッセージの影響を受けた有権者も少なくなかったと思われます。
三つ目は、保守系の候補者の魅力がなかったんじゃないですかね。公明党支持者はまじめに河野さんに入れたと思うのでかなりの自民党票が西岡さんに流れたということになり、そんな候補者しか立てられなかった自民党の幹部は公明党に謝っただろうと思います。
そもそも、現職の二期目は強いんだけどね。
2.森戸さん善戦の理由
森戸さんは今回、大善戦しています。1万票を超えると思った有権者は陣営関係者以外ではいなかったのではないかな。共産党の基礎票は5000票あまり、今回、2倍の票を取ったことになります。そのことは、共産党員でありながら共産党の候補ではなかったと表現してもいい背景があります。
もともと、市政における中道&左の野党は独自の候補を立てようとしていました。市議24人のうち中道・左派の野党は9人ほどおり、個別論点への態度はまちまちですが政策をすり合わせ協力し合えば、自公9人、市長派(立憲民主党ほか)5人と遜色のない勢力になります。ある意味、野党共闘以上の数合わせかもしれません。
ホープもいます。先ほど挙げた白井氏は議員になる前から地域での活動に積極的に関わり人脈があるだけでなく、勉強熱心でありwebや紙で積極的な情報発信をし多くの支持者がいます。民間企業の経験を行政に反映させたいとするマニュフェスト運動系の議員にしては珍しく左派の議員達と、比較的歩調を合わせてきました。前回の市長選では惜敗しましが、白井さんなら勝てるという「白井待望論」は市民派の中で充満していました。
しかし、強いと言われる現職の二期目、市議の仕事に情熱を注ぐ白井氏にとって、その職を捨ててまで立候補して勝てる見込みはなかったでしょう。立候補の要請に対し不出馬を表明します。上述の離脱した市民派の判断ポイントは白井氏の不出馬にもあったと推測します。
第3候補を立てる運動には、市議だけでなく都道の建設反対運動やリサイクル事業所の継続を求める運動などに関わる市民が関わっています。他の地域ではともかく、小金井の社会運動シーンおいては非共産党系の力が強く、共産党と距離を取りたい人も多かったものと思います。その為、共産党色のない候補者擁立を目指した運動でしたが目ぼしい候補者が見当たらず、お鉢が共産党に回ってきました。ネット上には共産党が旧民主党系の首長に対して対抗馬を出したという見方をされる方もいらっしゃいますが、共産党としては当初、独自候補を出すつもりはなかったと思います。そもそも、共産党が森戸氏を候補者として出すつもりであるならば今年改選であった議長・副議長の選出で森戸氏を候補にしないでしょう。
ということで、森戸氏立候補表明後も第3候補擁立の動きから離脱しなかった非共産党系の市民運動関係者に支えられることで、基礎票の2倍の得票を実現します。共産党以外の市議では、片山氏と渡辺氏が残りました。
また、森戸氏が共産党のベテラン市議であり、保守系も含めて一目を置かれる存在であることも高得票に繋がります。保守市政時代、共産党にしては珍しく2年間議長を務めたこともその表れだと思います。公開討論会で消防団の活性化に触れたことに驚きましたが、政治経験の多さから導かれる政策面での幅広さ柔軟さ、共産党の候補らしからぬと印象を受けました。
3.N国立花氏の惨敗
近隣自治体にN国の議員もいるはずなのですが、投票日直前までポスターもなく、本人も市内で選挙活動もせず、これでこれ以上の得票を得ろというのはムリだと思います。
有権者がよく見ているなと思ったのは、市議補選の最下位候補のうえむら氏も下回ったところですね。うえむら氏も事前のうわさを聞かない謎の候補の面もあるのですが、都道建設問題と市庁舎問題という市政の論点に触れたまじめな候補者でした。
まじめな候補者がそろっている時に、不真面目な候補者を選ぶ有権者は少ないです。