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家庭訪問する人が必要

「おせっかいワーカーになろう①」

 福岡市の子育て見守り訪問事業が始まって7月で満5年になります。見守り訪問は、平日の夜間や土日祝日に、赤ちゃんの泣き声など子どもの心身に心配があるという情報がこども総合相談センターに寄せられた時に、家庭訪問して子どもの安全を確認する仕事です。現在25名のスタッフが毎夜2人一組になって、年間約200回の訪問を実施しています。

 当初、基本的な研修を受け、訪問実習も行きましたが、特に全く初めての家庭を夜間に訪問することは、今まで経験したことがないことで、いったいどうやってノックして声をかけるのか、など不安や戸惑いが大きかったです。まず当番の夜はいつ電話がかかってくるか緊張して、待っているだけで疲れ、電話が鳴ると、とたんに心臓がドキドキしました。

 訪問は夕方もあれば、深夜1時2時ということもあります。福岡市内、街中のオートロックのマンションから郊外の一戸建て、商店街裏の古いアパートとどこでも行きます。ひとり親家庭、外国籍、夜間子どもだけの家など、実際行ってみなければどんな家なのか、誰が出てくるか全く分からないというスリリングなものでした。しかし何度も訪問するうちに、あそこは公団のアパートだとか、高級マンションの地区だとか、水商売の人が多いとか、分かってきます。

 訪問しても該当する家庭が見つからないことや不在もあります。お会いできても子どもに会えるとは限りません。「うちは虐待なんかしてない」と怒鳴る人、「私が疑われているんですか」と泣き出す人、灯りが点いているのに出てこない家も普通にあります。

 しかし、徐々に慣れてきます。ネガティブな反応を受けとめつつ、「何かお困りのことはないですか」と寄りそう姿勢で丁寧にお話を聴いていると、最近越してきて土地に慣れない事情や子育ての悩みを話してくれることもあります。その基本は、孤立しがちで大変な子育てを頑張っている家庭を私たちは応援してますよ、という姿勢です。そうすると、時には「心配して来て下さって、ありがとうございます」と感謝されることまであるのです。
それで、見守り訪問のような唐突な訪問ではなく、地域に住んでいるもっと身近な人が日常的に家庭を訪ねて、子育ての話をしたり、相談にのったりできるといいなと考えるようになりました。地域には、おせっかいなワーカーが必要なのです。

         【労協新聞2017年「おせっかいワーカーになろう①」】

応援よろしくお願い致します。