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100歳

 40代で児童養護施設をクビになった頃、漢字学者の白川静先生の存在を知りました。漢字や古代中国、万葉の世の人間のあり様や文化に関する深い洞察や知見を得て、目から鱗がポロポロ落ちるような思いをしました。

 そうしてもう一つ大きな影響を受けたのが、白川先生の生き方です。

 立命館で教職を得るまでの道のりも学ぶところが多いですし、高橋和巳先生とのエピソード(『わが解体』)も心を打たれますが、何といっても白川先生が66歳で教職を離れられてから、猛烈な勢いで執筆活動を開始されたことです。漢字三部作と呼ばれる大著『字訓』『字統』『字通』をはじめ、極めてオリジナルな数々の書を著わされて、【白川学】と呼ばれるほどの名峰を築かれました。そして96歳でこの世を去るまで、ずっと精力的に研究、執筆活動を続けられたのです。

 多くの人が職を辞して引退隠居するときに、白川先生は満を持してスタートを切るように執筆活動を開始されたのです。ずっと自身の中に秘かに温めていた種子を発芽させて、大輪の花を咲かせるまでに育て上げられました。

 そうか、幾つになってもチャレンジしていいんだ、いろいろ温めておいて、それぞれのタイミングが来たら発芽させて、花を咲かせたらいいんだ、と思いました。よし、私も(恐れ多くも)白川先生のように、96歳いや100歳を目標に人生をスケジュールしよう、と考えるようになりました。

 それはもう20年くらい前のことなのですが、その後次々に100歳までの人生設計を薦める本や言説が世に出て、我が意を得た気持ちになりました。リンダ・グラットンさんの『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』、落合陽一さんの『0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる 学ぶ人と育てる人のための教科書』、藤原和博さんの『60歳からの教科書 お金・家族・死のルール』等々です。
 
 日本人の平均寿命(余命)が50歳を超えたのは1947年(昭和22年)だそうです。おなじみのサザエさんの磯野浪平さんの設定は54歳なんだそうです。サザエさんは昭和の象徴と言ってよいかもしれません。

 人生100年の時代になったのに、日本はまだまだ明治+昭和のライフサイクルの呪縛から抜けられていない気がします。ノスタルジーとして昭和を懐かしむのはよいですが、いつまでもリアルとして昭和を生きるわけにはいかないんじゃないでしょうか。

【リンダ・グラットン:デジタル時代における日本流100年時代ワークスタイル】
 https://www.youtube.com/watch?v=piDP2hXomnc
【「0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる 学ぶ人と育てる人のための教科書」】
 https://www.youtube.com/watch?v=rLW2YJkiphc
【藤原和博が語る「人生100年時代は『富士山型』でなく『八ヶ岳型』でいこう!」】
 https://www.youtube.com/watch?v=JqveFnKvQxk
【松岡正剛 千夜千冊:白川静『漢字の世界』】
 https://1000ya.isis.ne.jp/0987.html

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