6 渥美清 ☆ 男はつらいよ

早良区西新には、私の記憶に残る小学校時代に、映画館が4館ありました。(以前はもっとあった)その中の1館(確か西新文化)に高校時代の夏休み、「寅さん特集」を見に行きました。当時、田舎の福岡では、同時上映やシリーズ3本上映などという、お得な興行が普通に行われていたのです。

 部活は午後4時からだったので、一番暑い昼の時間を映画館で涼んで過ごしたかったのだと思いますが、「寅さん」を1本見ただけで完全にハマってしまい、主題歌のレコードまで買いました。

 歌詞では

 「ドブに落ちても 
  根のあるやつは
  いつかは蓮(はちす)の花と咲く」

 というところが好きでした。いまは、ドブもないし、蓮の花を見る機会もないかもしれません。

 それから「寅さん」が上映されるたびにでかけました。ビデオもない時代です。新聞の映画欄をチェックして、オールナイトの「寅さん特集」なんかにも行きました。

 毎回「バカだな、寅さん」と涙が出るほど腹を抱えて笑って、ちょっとしんみりなって、当時の自分としては、確実に楽しめる娯楽(映画)だったように思います。

 20代後半に仕事が忙しくなって行けなくなるまで、盆正月には見に行きました。

 私の中の”日本″の原風景は、「寅さん」によって形作られたように思います。行ったこともない葛飾柴又を故郷のように感じ、夜汽車や船に揺られていく旅が、安宿が、祭りのテキヤの口上が、各地でふれる人情が、ケンカが、なぜか懐かしく感じたり、胸にジーンと沁みたりしました。

 「寅さん」が製作され、日常的に存在していた時代は、寅さんのような社会からはみだした人や(フーテンという)生き方がかろうじて許容されていたように思います。私は、それはある意味豊かさだったと思うのです。

 考えると、いまの社会では、私が時代遅れの寅さんなのかもしれません。あちこちの児童福祉の現場で、テキヤをやっているような気がします。おおむね押し売りか、詐欺。しかも、笑いがない。(笑)

 「結構毛だらけ猫灰だらけ、・・・・・」

 やっぱり品性が私にぴったりです。いまは

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