見出し画像

#2.カミサマ

僕の大切なガオちゃんに。

2020年春、カミサマはパパとママに大切なギフトを届けてくれました。そう、ガオちゃんです。田舎町の古民家で海と山と人々の愛に囲まれてスクスク育つあなたはパパとママにとって、そして家族や仲間にとって、とっても愛らしい、奇跡のような存在でした。
 
2020年末、今度は別のカミサマがやってきてパパの肩を「ポン、ポン」とたたきました。最初はそのカミサマの正体がわからず、パパはちょっとぐったりしたり、病院で検査をする日々が続きました。1か月ほど経ってどうやらそのカミサマは「病気のカミサマ」だということがわかりました。しかも「ハッケツビョウ」というなかなか手ごわいカミサマです。パパとママはすっかり参ってしまいました。かわいい可愛い娘と今から楽しい人生を、という矢先の出来事だったからです。普段明るくて何事にもポジティブだったパパは今までに抱えたことのない感情を抱きました。それは、恐怖、不安、申し訳なさ、不甲斐なさ、拒否、嫉妬、怒り、唖然、そんなネガティブな感情が一堂に会しては増幅していくような暗黒の巣窟のような空間でした。それでもパパには幸い選択肢がありました。この「ハッケツビョウ」は決して治らない病気じゃないからです。
 
ところで、死を司るカミサマ、通称「シニガミ」にはいくつかの種類があります。ひとつは天災や戦争。これはすごく質が悪いです。ザーッと大勢でやってきて、子どもも大人も関係なく一瞬で多くの命を奪っていきます。逝く人も残る人も心の用意もあったもんじゃありません。事故や事件もそう。とても悲しいです。その点、パパのところに来たシニガミはまだ話のわかるタイプです。少しゆとりをくれます。「シニガミ」はそれが数日や数カ月の間にお仕事をしてしまう「せかせかシニガミ」のときもあれば、なんだかんだで10年も20年も居座る「のんびりシニガミ」のこともあります。パパのとこに来たやつはこの「のんびりシニガミ」タイプみたいです、少なくとも今のところは。更に、のんびりシニガミのうちには、そのうちに飽きてどっかに行ってしまう「ふらふらシニガミ」もいます。(※パパのシニガミにはのんびりしたうちにふらふらしてもらうつもりです。一緒に作戦を考えましょう。)
 
さて、パパのところに来たシニガミは2021年ごろ一度帰っていきました。帰ってもらうのには結構苦労しました。丸1年くらいかかりました。ガオちゃんの笑顔と医療の力、家族や友達の献身的なサポート、パパの生まれ持った生命力がなければ「せかせかシニガミ」に変身されていたかもしれません。(実際パパの大切な友達のところには「せかせかシニガミ」がきて2~3ヶ月のうちに命をむしばんでいってしまいました…)
 
シニガミを追い返したパパとママとガオちゃんはいつまでも仲良く暮らしましたとさ、めでたしめでたし。…となるのが普通の物語。でもこのシニガミはまたやってきました。それも2022年11月ガオちゃんの七五三をお祝いした直後と2023年の夏の終わりにパパたちの大好きな学生寮のお友達と復帰祝いをした直後の2度。まるで「祝い」のタイミングを狙いすましたかのようにやってきます。よっぽどお祝い事が好きなんでしょうね。ちょっと親近感すら沸きます。
 
2度目の来訪(2022年11月)もなんとか帰ってもらいました。今度は「臍帯血移植」という赤ちゃんの血を使う治療法です。これも移植前に強い放射線を浴びたり、薬をたくさん飲んだりして結構大変でした。どうにか帰ってもらえたかと思った矢先の再来訪(2023年8月末)でした。ちょっと来訪ペースが速いですね…。お医者さんからは「正直かなり厳しい」と言われました。「厳しい」というのは、まず治療がきちんとできるかわからないし、治療がうまくいったとしても合併症などこれからもリスクの伴う生活になるということ。要は「これからシニガミさんと連れ添って生きるしかない」とパパは解釈しました。
 
生まれて初めて余命宣告も受けました。「このまま何もしなければ来年は迎えられない。」つまり、「余命3ヶ月」くらいです。覚悟はあったので、隣でショックを受ける弟を他所に、割と淡々とその言葉を飲み込んだことを覚えています。それでも、「余命3ヶ月」は困ります。ママのお腹の中にはようやく赤ちゃんが来てくれました。まだエコーでギリギリ見えるくらいですが、しっかり命が根付いています。僕らの2人目の子ども、そしてガオちゃんがついに姉になるのです。すてきなおねえちゃんになると思います。どうか、この瞬間はどうしても見届けたい。
 
でも、正直に言うと「命が根付いた」ところまででもう十分幸せなのかもしれない。僕のところに来たのが「せかせかシニガミ」だったら、ガオちゃんの3歳5か月までの成長すらも見届けられずに終わっていたし、次の命を授かることは叶わなかった。そう考えるともう十分幸せなAdditional Timeを与えてもらったのかもしれない。成長を見届けたいのは僕のエゴで、子どもたちは勝手に育つ。パパがいないことで多少の困難もあるだろうし、ママにはたくさん負担かけちゃうけど、パパの自慢の家族だから、どうにかなると思うよ。

もちろんパパはみんなと長生きしたいと思ってるし、そのために今回もつらい治療に臨みます。「治す覚悟」から「生きる覚悟」にマインドセットを変えました。精神的、肉体的にしんどいことがいくつもあるだろうけど、ママ、ガオちゃん、そしてBちゃん、最強のチームが支えてくれるのでこの山はきっとまた越えられるでしょう。
 
実はパパはシニガミについていくつか情報を持っています。
ある漫画によると「リンゴ」が好きで、
ある小説によると「CDショップ」が好きで、
ある昔話によると「呪文で消える」そうです。
呪文は「アジャラカモクレンテゲレッツノパー」です。

ね?対策はいろいろできそうでしょう?まぁ「あっちいけ!」と追い返すよりは気づいたらフラーっと帰ってくれるように作戦をネリネリしてみます。

230914パパ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?