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質素な食事??

先日小さな鯛を二匹頂いてそれを料理しました。ほぼすべて頂いて最後はアラ炊きの汁で鯛めしを炊き、最後に残した身も入れていただきました。翌日はそれを白ワインとミルクを入れて粉チーズでリゾット風に。結局全部で5食分の食事になりました。リゾットに添えた大根は最初の日に鯛出汁で炊いた大根です。

十分ぜいたくを感じましたけど、これはこれでとても限られた食材で作った食事で、今の日本では意外とやらない形なのかな、ってふと思いました。よく質素な食事、という表現をしますけど、質素ってどういう意味なんだろう? 一応調べてみたら→素朴な飾り気のない贅沢や派手さがない・・なんて表現がありますが。今回の鯛尽くし、どうでしょう?? 十分ぜいたく感ありますよね。ありますけどこのような素材を徹底的に使い尽くす、というような形の調理を今の日本の食卓はまずしません。大体骨付き丸ごとの魚なんて買わないです(笑) せいぜい切り身だろうからアラは出ないのでだしをとる、なんてことは出来ませんね。

そうやって自分の経験的にドイツでの食生活を思い出してみると・・あちらでは平均的な食事としてお肉を焼いて、お芋とニンジン、とか豆とか、あるいは有名なザワークラウトとか、そういう付け合わせがあって一皿、が基本なんですけどね、毎日それほど大きな違いはなくて。豚だったり鳥だったり牛だったり、焼いたり煮込みだったり、かなりバリエーションはあるけど基本的にはメインの動物性のものと野菜とジャガイモ、という基本はおおむね同じ。だから日本から客が来ると最初はいいんですが三日目には大体において「なんか毎日おんなじだね」って言われます。ええ?昨日は豚で今日は牛だし!昨日はローストだけど今日は煮込みじゃん、は通じません(笑)

かたや日本では確かに毎日全然違うモノ食べてますね。見事に違う。ぜいたくな食事、とは言えないですがでもいろいろなものを食べている。ただあえて言うならどれ一つとってもとても貧しい食事です。出来合いのお惣菜、混ぜるだけでできる中華、レンジで温めるだけのパスタにお湯で温めるカレー・・・確かにバラエティには富んでいますが、これはすべてレストランの食事の代替品、悪く言えば代用のインスタント、カップ麺と大した違いはない、ですがそれをとても几帳面に一生懸命考えて献立を立てている方がたくさんいますよね。スーパーの冷凍食品売り場を見るとね、もうお弁当用とかでお惣菜の冷凍が本当にいろいろ。もともとは業務用だったのが今や家庭にも大進出していて(笑)まあお見事なバリエーションで。お家でもほか弁と同じ品質の食事ができますWWWW

質素な食事ではない、でもどう考えてもぜいたくな食事でもない・・・僕はあえて言うなら粗末な食事、と感じます。先日の鯛尽くしはシンプルでしたがとても贅沢を感じる事が出来ました。ある意味では一汁二菜でも十分なのかな、とすら思いました。まあ僕は上記のドイツの食事を毎日平気でいられるタイプの人間なのでこれを言うとお前は日本人の繊細な神経がわからないんだ、とか言われます(笑) 

でもこんな献立始まったのまだつい最近ですよ、せいぜい30年てところじゃないかな。僕に言わせれば今の日本はまともな食文化をぶっ壊し続けている、としか思えませんから。もともと日本食は基本的には質素でシンプルで環境にも優しい食事のはずです。そのポイントの一つは当たり前ですが地産地消、と旬、の食事。もう一つは味噌醤油に代表される発酵技術、乳酸菌や納豆菌、ほかにもいろいろありますが保存と栄養、更に食文化に至るまでの様々が詰まっている地方色の豊かなものだからです。暑い地方寒い地方、日本は南北に長い列島なので意外と地方差は大きい。海の恵みもあるところないところ、平地がある、山しかない、本当に全国津々浦々で変化にとんだ食文化を持っていたはず、ですが・・・・今はもうね、関係なくなりましたね。

最近危惧するのはだからその「繊細な口」とやら、は化学調味料とか香料とかそういう味を補強するものが入っていないとおいしく感じる事が出来ないようになっている、ということです。食糧自給を上げようとしても今の食生活を維持しようとするならそれは絶対に不可能です。自給が出来ないと不測の事態が発生した際には本当に米と汁、おかずが一品と漬物、という食事を日常的に食べる生活が続く、ということですから。下手すればそれすら出来ないでしょうけどね。いまの人、そんな食生活耐えられますか?? 

いま世の中にあふれているものすごく豊富なバリエーションの食べ物の多くは偽物です。あの値段で本物は普通なら手に入りません。バターの代わりにマーガリン、ひき肉に見えますがあれも骨と内臓と皮を徹底的にミンチにして味も香りも洗い流してから香料と調味料で肉にする(笑)でも原料が牛ならそれも牛肉(笑)豚も鶏も魚も・・・姿のままではない加工品は一度疑うほうが賢明ですね。カレーなんて(笑)主原料豚脂、豚の脂身が主原料だったりしますよ。スパイスと脂身ね・・・そんなもの食いたいですか?

でも今の技術は本当に見事です。コンビニのお惣菜食べて不味い事はまずないです。冷凍食品も同じく。この技術は世界一でしょうね。でもふと思いませんか? あれだけグルメ(大体グルメってフランス語でしょう(笑))の多いヨーロッパやお金持ちもたくさんいる華僑やそういうグルメの皆さんがそのたぶん世界一のこの技術を評価してくれないんでしょう?フランスなんていっても安い店だとホント「不味い」店ありますよ。日本なら三日でつぶれんじゃないかって(笑) 

そう、彼らは香料や着色料、添加物、化学薬品、そういうモノを使わないものが好きなんですね。お金持ちは選べるんです。無農薬で健康的に育った野菜や動物、天然の魚、昔と同じ作り方の調味料やワイン、そういうモノを選べるんです。 食べた時の味覚、というゴールだけなら味の素と香料を使ってもちゃんとかつおと昆布で出汁を取っても同じゴールかもしれませんがでもそれは違うモノですから。あちらのお金持ちはそれがわかっているんですねぇ。日本でも本当のお金持ちは多分同じですよ。コンビニやスーパーでは買わないでしょうね。体に悪いですもん(笑)

さて話を戻して、その鯛尽くし、やろうと思えばさほど大変でもありません。自分で調味料を使って素材から調理すればいいだけ。何種類もおかずを並べる必要はないです。常備菜、という日本語があります。一度作ってしばらくは食べるもの、冷蔵庫で一週間くらいなら痛まないもの。があれば一品増えるし昨日の肉じゃがは今日は副菜、って順繰りにしていけば意外とぜいたくな食卓になるんです。必要なのは頭の切り替えですね。みんながこういう食事をするようになると消費傾向が変わるしスーパーとかも全国同じものを置く、事がいいとは限らない、となります。そうすると全国規模のチェーンというのがあまり価値無くなるんですよ。流通が威張る今の日本は基本的におかしいんです。農家が威張らなきゃいけないんですよ。だって僕らの食べる食べ物作ってくれているんですよ・・・漁業もそうだし林業だって本来そうです。そういう産業が地元でちゃんと完結しているのが正しい国の在り方なんです。シンガポールみたいに国土が小さければそれは経済に頼るしかないのは理解できます。でも日本は実際には国土が広い、想像よりもはるかに広いんですよ。知ってますか?世界で大体60番目くらい。人口はなんと11位くらいです。200国くらいの中での60番目の国土と11番目の人口です。本来ならもっと全国津々浦々に人がいて(かつてはそうでした)地方地方がもっときちんと機能していれば自給率も上がるし当然経済もちゃんと動くんです。そういうすべての事がこの食事一つから見てももうできないようにこの30年ほど、いや戦後ずっと壊されてきた、という事なんでしょうね。

残念ながら今から急に昭和30年代の暮らしに戻ることは不可能です。でも少しだけ見直せることはあるように思いますよ。少しだけでもね。

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